相田めぐみとはナツミと同様に、小学校から知っている仲だった。三年生から六年生まで一緒のクラスで、まだナツミとは知らない仲だった当時は、何時もめぐみと一緒だった。 しかし、中学に入って一度も同じクラスにならなかった事もあり、めぐみと乃亜はいつの間にか赤の他人になってしまった。 同じ高校へ入った事はもちろん知っていたが、やはり同じクラスにならなかった為に、特に親しい付き合いは無かった。 高三になって、久しぶりに彼女と同じクラスになったものの、時の流れはお互いに別々の親しい友人を作って、教室の外で関わり合う事はやはり無かった。 でも、ナツミがいなくなって、教室で最初に声を掛けて来たのはめぐみだった。 乃亜がナツミと一番親しかった事は、みんなが知っていた。 まだ、クラス替えがあってから間もない四月、みんな乃亜に気を使うあまり、声をかける者はいなかったのだ。 めぐみがいなかったら、今のクラスに馴染む事が出来なかったかもしれない。 二年まで同じクラスだった人はもちろんいるのだが、めぐみの方が話し易かったし、やっぱり気が合うような気持ちになった。 それでも、ナツミがいなくなったから今度はめぐみ。みたいな事が嫌だったから、乃亜は意図的にめぐみと一定の距離をとろうとした。それは、クラスのみんなとも同じだった。 他の誰かと親しくする事が、ナツミに対する裏切りのような気がして、後ろめたさを感じて、結局誰とも仲良くできなかった。 めぐみは彼女なりに乃亜に気を使いながら、少しずつ友達としての距離を詰めて来る感じがした。乃亜にはそれが時に心の負担になる事もあったが、今日は何だか素直に嬉しかった。 自分を心配してくれる彼女の気遣いが、心地よかった。
「電話? 彼氏?」 カラオケの後みんなで入ったファミレスで、席を立っていためぐみが戻ってくると他の娘が訊いた。 「ううん。乃亜」 「ああ、彼女、平気だって?」 由美がそう言って、目をパチパチと瞬きさせた。 「乃亜って、かなりの訳ありだよね」 江梨子がそう言って、ドリンクのストローを咥えると 「メグは、乃亜と仲いいよね」 「そうでもない。今はね……」 めぐみはそう言って、自分のグラスから伸びたストローを咥える。 由美はそんな彼女に 「中学一緒だったんでしょ?」 「一応ね。でも、クラス違うかったし」 めぐみは、小学校の時は親友同然だった事は、あえて言わなかった。 「彼女の周りって、不幸が続くよね」 江梨子が、ニヤ付いた顔でそう言うと 「そんな言い方止めなよ」 めぐみはその話題が膨らむ事を制して、何となく心配事を引きずった顔で、窓の外を見つめた。 めぐみは何時も一緒だった乃亜の事を思い出していた。中学に入ってクラスが別々になった時は、とても寂しかった。 それなりに仲の良い友達も出来たが、乃亜ほど気の合う仲間は現れなかった。 それでも、現状の楽しい仲間に囲まれながら、次第に乃亜の事は考えなくなっていた。 しかし、乃亜の母親が出て行った事は、知っていた。何故か、何処かで聞いたのだ。 その時も、本当は彼女に言葉をかけてあげたかった。 忘れていた乃亜との友情が、めぐみの中に沸き起こる気がした。でも、その時はもう、乃亜の傍には何時もナツミがいた。 高校へ入学してから、乃亜が同じ学校だったとめぐみは知った。その時改めて気が付いたが、乃亜は以前の彼女ではないような気がした。何処か陰りがあって、久しく話していないめぐみには、声をかけ難い雰囲気になっていた。 自分の知らない間に、かつての親友は遠い存在になったのだと思った。 全く会話の無いまま二年を過ごした。 縁がないのか、めぐみと乃亜のクラスは何時も二つ以上離れていた為、ほとんど接点が無かったのだ。 それでもめぐみは時々乃亜の後姿を見ていた。 あまりみんなに心を開かなくなった乃亜が、唯一の親友瀬戸奈津美と楽しそうにじゃれ合う後姿を……
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