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作品名:Blueberry&Raspberry(ブルーベリー&ラズベリー) 作者:徳次郎

第1回   【プロローグ】
 人は何時頃に初めて人間《ひと》の死を目の当たりにするのだろうか。
 言葉を交わし、笑顔を交わした近しい人間《ひと》が突然いなくなるというのは、どんな感じなのだろう。
 幸彦は小学校の時に爺さんが死んだと言っていたし、美咲は中学の時に父親を亡くしている。
 実際に身近な人間の死を知らない僕は、そんな話しを聞いてもただ気の毒に思うだけで肝心の悲壮感には程遠い。
 僕の祖父母は神奈川の住所さえ知らない場所に未だ元気に暮らしているし、父も母も死ぬ気配なんて微塵も無いし、そんな心配もした事はない。
 自分の身近に誰かの死が訪れるなんて考えた事も無く、そんな事は成人して大分大人になった頃やってくるのだと思っていた。
 そして、その頃になれば人の死は大人として冷静に受け入れ、目頭を熱くする程度で涙も流さずに自然の摂理である死の順序を受け入れて、ごく冷静な趣で焼香などをするのだと思っていた。


 それを知ることが大切だとか、知らないことが無知だとか。
 そんな事はどうでもいいのだろうけれど。
 今思えば、あの時が始まりだったのだ。
 あの時おかしいと思うべきだったのだ。
 いや、おかしいと思わなかったわけではない。
 あの状況が、自分に訪れるはずなどないのだ。
 しかし、そんな事もあるさと自分の直感的危機感を受け流し、日々を送ってしまった。
 その真意を疑うべきだったのだ。
 僕は日々の暮らしに油断していた。
 暇を持て余して燃焼しきれず、ただ日々を不完全に消費するだけの時間が、いろんな判断力をかき消していたのだと思う。
 



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