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作品名:星屑の詩 作者:柳原奈生

第49回   第二章 第九話 【霜柱】4
 母は毎日仕事の帰りに病室に寄ってくれるし、父は残業が多いので平日は来ないけれど、土日など休みの日になると昼間にひょっこりと顔を出すので、それほど椿希は入院生活が寂しいとは思わなかった。それに、同い年くらいの患者とも顔なじみになり、時折天気のいい日には院内の庭園を一緒に散歩することもあったので、快適とは言えないけれどそれなりにうまく過ごしているつもりだった。
 妥子が病室に訪れるたびに塾で配ったプリントやノートなどを見せてくれるので、勉強の遅れについてもそれほど心配することもなかった。元来真面目な性格の椿希だから、たとえ入院していても何もせずに過ごせるわけもなく、暇潰しと称してはかりかりと問題を解いたり暗記したりしているので、もしかすると入院している方がかえって勉強が捗っているのではないかと思われるほどだった。
 「椿希、桔梗くんがお見舞いに行きたいって言ってるの」
 妥子が言いにくそうに、言葉を詰まらせながら言った。椿希は妥子から借りたノートを写していたので、妥子の顔を見ていなかったけれど、
 「いいよ。桔梗くんなら歓迎。久しぶりに妥子以外の顔も見たいしね」
と茶化すと、
 「あらまあ、私の顔には飽きたの」
と、わざと膨れたように言った。椿希は、ふふ、と笑うと、物を書く手を止めた。
 「まあ、桔梗くんにはすごく心配かけたと思うしね。塾内でも、多分妥子を除いては桔梗くんに一番頼っていたと思うから、入院しているけど元気だよっていうのを見せたら安心するだろうし」
 妥子は椿希が言った言葉に裏がなさそうなのを気に留めて、もしや椿希は葵生ではなく桔梗の方こそを気に掛けていたのだろうかと、思い始めていた。確かに椿希と桔梗は今までも親しく談笑していたし、どうやら登校時間を一緒にして途中まで同じ電車に乗っていたのだというから、葵生よりも親密な関係になっていても不思議ではない。それに桔梗の人柄を知っているけれど、どこにも問題はないのだから不満などあるはずもないのだが、葵生の思いを知るからだろうか、どうしても葵生の肩を持ってしまうのだった。
 「葵生くんが知っていたら、葵生くんもきっとお見舞いに行きたいって言うんじゃないかなあ」
 わざと意地悪して言ってみたら、椿希は、
 「確かに、もう塾のみんなには私の病気のことも話してしまっているし、葵生くんがもし塾にいて『お見舞いに行きたい』と言うんなら、桔梗くんと同じで来てくれると嬉しいよ。でも、果たして葵生くんはそう言うかな」
と、やけに否定的なことを言うのだった。
 「絶対に行きたいって言うよ。葵生くんは、椿希のこと特別に思っているみたいだから」
 勢い良くそう言ったからか、妥子は少し語気の強さに自分のことながら驚いてしまったが、それは椿希が、何故葵生のことをそう否定するのか分からなかったからだった。誰がどう見てもそう言うだろうし、椿希が気付いていないわけがないと思い込んでいた。
 一方の椿希はというと顔色を変えることなく、ただ微かに笑みを浮かべながら、ベッドの脇に置いていた熊の小さな人形を手に取り、指の平で撫でた。
 「葵生くんが私に向けてくれた思い、それはすごく『有り難い』ことだと思っているよ。不器用で唐突で、こっちはびっくりさせられてばかりだけど、彼なりに感情を表すのに必死だったのだろうなと、今なら分かる。あんな風に人から思われるっていうのはすごく幸せなことだろうなと思う。
 だけど、そんな人だからこそ怖いと思った。彼の思いは強すぎて、私には受け止めきれる自信がなかった。だんだん、彼の思いの強さが重荷になっていったの」
 椿希はそう言って深く溜め息を吐いた。
 「もしかして病気のことがなかったら、葵生くんを受け入れられたかな」
 妥子がそう言うと、椿希は静かに首を横に振った。かさついた唇から、掠れた声が漏れる。
 「それは私も考えたけど、多分、病気のことがなくても私は怯えていたと思う」
 椿希が一体葵生の何を知ってそこまで怯えているのか、妥子にはさっぱり分からなかった。当人にしか分かり得ない感情が行き交っていたのかもしれないので、妥子もおせっかいにあれこれと口を挟むのは良くないと思って、ただ椿希が心底葵生のことを恐れているようなのだけを注意して見ていた。
 「あの歌、ほら、椿希が高校の音楽会で、ソロで歌った曲あったでしょう。あの曲、聴きたいな」
 椿希は驚いて、
 「ここで歌うのは、ちょっと恥ずかしいよ。声が外に漏れるかもしれない」
と言った。そうは言っても、もう椿希の心の中には優しいピアノの旋律が奏でられていて、いつでも歌うことの出来るように流れが出来ている。
 「ちょっとだけでいいから」
 妥子が急くように言うと、椿希は少し姿勢を正して、大きく深呼吸をした。
 もう練習をしていないからか、それとも体調が万全ではないからか、声量を抑えているからか、艶のほとんどない掠れた声ではあったけれど、かえってそれが椿希の言葉が流れているようで胸に響いていく。あの神がかったような天まで届きそうな美声よりも、今のこの囁くような歌声の方が妥子にとっては心地良かった。葵生もきっとそうだろう、と妥子は思う。歌唱力を競うコンテストではないのだから、誰かのために歌っている今の方がずっといいはずだ。
 軽く目を閉じて歌う椿希の横顔は、少し薬の副作用でふっくらとしてはいたが、元々ほっそりとしていたので顎から耳元への稜線が今もなお美しくて見とれて目が奪われたままである。何を思いながら歌っているのだろうか、誰かを思い浮かべているのだろうか、とにかく病室の歌姫はたった一人の客のためだけに歌っていた。
 「どうか忘れないで、二人の愛」
 ここに葵生がいないのが惜しまれて、妥子はうっすらと目に涙が浮かんでいた。この歌を聞かせてあげたかったと、何度も思った。あの、高嶺の花のような椿希より、ここで歌っている野に咲く花のような椿希の方が自分の手元で囲っておけるから好みだろうに、と。

 妥子から椿希の見舞いについて、「桔梗が見舞いに来てくれるのは嬉しいと言っていた」と聞いて、桔梗は受験勉強の合間の休息時になればいつも、見舞いの品として何を持っていこうかとばかり考えていた。
 塾の自習室で朝から勉強をしていた桔梗は、空腹を覚えて時計を見ると、もう昼の一時半を回っているのに気付いた。ここぞというときの集中力は目を見張るものがあるのだが、まさか昼食の時間が少しずれるほどまでになるとは思いもよらず、充実感と共にどっと疲れが体中を襲った。この時間になるとどこで食べても空いているだろうと思って、今日は外で食べようと財布を持って教室を出た。
 時折びゅんと唸る風が身を縮こませる。暖房のよく効いた教室とは打って変わって寒気に触れると、はっと目が覚めるようであった。こうして時々は息抜きに外に出るのもいいかもしれない。
 今日はハンバーガーが食べたいと思っていたので、近くのファーストフードの店でセットメニューを注文し、トレーを持って店内を見渡した。案の定、人はまばらで人の話す声も耳を澄ませば聞き取れそうなほどだった。見渡した隅の方に笙馬の姿があったので、桔梗はそちらへ向かった。
 「ああ、桔梗。誘えば良かったね」
 笙馬がそう言って椅子の上に置いていた鞄を別の椅子に置き換えた。
 「いや、俺も没頭してしまっていたから気にしてないよ」
 同じ学校の同級生というせいだろうか、相性がいいのか分からないが、桔梗はやはり笙馬と話をするのが一番落ち着くように思っていた。彼の作り出す独特の穏やかさ、全てを許すような懐の深さが心地良かった。だからこそ、今まで色々なことを相談してきたのかもしれない。そう、本当に様々なことを話したものだった。家族のこと、将来のこと、勉強での悩み、葵生に対する好敵手としての思い、そして椿希への恋心など。
 「今度、椿希のお見舞いに行こうと思っているんだ。もしかして男でお見舞いに行くのは俺が初めてかな」
 桔梗が言った言葉に含みがあると感じた笙馬は、桔梗の表情を窺った。
 「去年の夏ぐらいからだったと思うけど、葵生が妙に高揚していたというのか、何があったのか知らないけど椿希に対する接し方が変わったような気がしていたんだ。それまでは、伝えたくても伝えられないもどかしさだとか、どう話しかければいいのか分からなくて困ったような様子だったのに、あからさまに椿希のことが好きで仕方がないっていうのを見せるようになったから、俺はもうすっかり椿希は葵生のものになったのかと思っていたよ。葵生が塾を辞めたときだって、椿希は動揺した様子もなかったから。
 でも、まだ二人の間に何もなかったんじゃないかっていう気もしているんだ。妥子に、『椿希のお見舞いに、妥子以外で誰か行ったのか』と訊いてみたら、『椿希の学校の友達や、幼馴染み、家族、それ以外の人はどこの病院に入院しているか知らないはずだから』と言っていたんだ。葵生が来ているなら、そう言うと思うんだ」
 妥子が桔梗を気遣って、敢えて「葵生が来ている」と言わないだけかもしれないのに、と笙馬は思ったが言葉を呑み込んだ。もっと詳しく聞いていた笙馬は、椿希が「葵生には入院のことを言わないで欲しい」と口止めしていたなんて、桔梗にはとても言えるはずがない。
 「だから、笙馬も絶対に言わないでよ。葵生くんにどこかでばったり出くわしても、椿希が入院しているなんてうっかり言わないで」
 そう、きつく言われているのだから。笙馬はその時、妥子にこう言った。
 「だけど、他の人からそのことを聞いたら、葵生はショックを受けるんじゃないかな」
 すると、妥子は腕を組みながら少し考えて言った。
 「大丈夫だと思う。葵生くんの交友関係の狭さに少し感謝しなくちゃね。きっと、葵生くんは仲の良かった人たち以外からは事情を聞くことはないと思うから。せいぜい『みんなどうしてる』が精一杯でしょう」
 それはそうだと思ったが、やはり笙馬には腑に落ちなかった。何故、そこまでして椿希が葵生に入院のことを伏せたがっているのかが分からなかった。それほどまでに、葵生に知られたくないということは、葵生に会いたくないのだろうか。それならば葵生に分があると思っていた恋愛関係は、「桔梗に会いたい」という言葉から察するに、桔梗に軍配が上がるということなのだろうか。
 少しぼんやりと考え込んでいた笙馬は、ジュースで喉を少し潤わせた。
 「そうだね、僕も葵生は来ていないと思う。多分、椿希ちゃんと葵生の間に何かあったのなら、塾を辞めた葵生の連絡先ぐらい知っていて、椿希ちゃんは自分から葵生に連絡していると思うんだ。だから、桔梗、良かったね」
 それを聞いて、桔梗の顔が曇りなき笑顔で溢れ、心から安堵したようであった。成績では負けても、椿希を巡ることでは勝つことが出来るのなら構わないと思っていた桔梗は、少し肩の荷が下りたような気がしていた。
 葵生のことが嫌いだったわけではない、むしろ良き好敵手として認めていたし、いい刺激をもらっていたと思う。だけど、葵生がいると皆の注目が葵生にばかり集まってしまって、どんなにこちらが頑張っても見劣りしてしまうのではないかと、時折本当に「いなくなってしまえばいいのに」とさえ思うことがあった。そう思うたびに、そんな醜い心の内を人に知られるのが怖くて、心の奥底に封じ込めていたのだった。
 今となっては、そんな物思いに悩まされることもなくなって、桔梗の心はいくらか晴れやかになったようだった。

 粉雪が舞い散る日、藤悟は椿希の見舞いに訪れた。大学に用があるついでだと言っていたが、それが口実だろうと椿希は気付いて、くすっと笑った。外の景色からして相当寒いはずだろうに、わざわざこうして来てくれたことが嬉しくて、椿希は身を起こしてベッドから立ち、藤悟の着てきたコートを掛けたり椅子を用意したりと世話をした。
 「まさか病人に世話をされるなんてな。いいよ、気を遣わなくても」
 そう言って藤悟は椿希の額に手をそっと当てると、少し熱いものが感じられて心の中で溜め息を吐いた。相変わらず無理をするのだから、と呆れながらも幼い頃から変わらぬ幼馴染みとの長い付き合いのことを思い返すと情も熱いものが込み上げてくる。
 椿希は熱があることが知られてほんのりと頬を染めたが、微笑みながらベッドに腰掛けた。そのときに、椿希の傍らにあった写真立てが目に入り、藤悟はそれに手を伸ばした。公園で幼い椿希が笑っている。そしてその隣に立つ少年の懐かしい顔。
 「これって、榊希(さかき)だよな。榊希が染井の制服着ているっていうことは、俺たちが中一か中二の頃かな。俺もなんというか、すごく若くて笑ってしまうな」
 染井の濃紺の制服を少し大きめに作ったためか体格に合っていないけれど、椿希に良く似た風貌の、きりっと引き締まった端正な顔立ちの少年は、見る者に年頃になればなかなか精悍な青年になりそうな予感をさせていた。
 「うん、私ひとりで病室にいるのは寂しいからって、母さんにお願いして持ってきてもらったの。こうして見ると、妹ながらになかなか兄さんも男前だったんだなぁって思うよ」
 笑いながら椿希が言った。写真の中で微笑む少年を見ながら、藤悟の心もあの頃に戻っていく。椿希と初めて出会ったとき、幼いながらに一目で心を奪われたことや、榊希の妹自慢を呆れながらも聞いて、どんどんと興味を持っていったことなどを思い出すと、藤悟は静かに目を閉じて心の中で何かを祈った。
 「藤悟くんには本当に感謝しているの。藤悟くんがいなかったら、私は今頃こんな風に笑っていなかった。甘えすぎじゃないかというくらい助けられたこと、ずっと感謝しているの」
 藤悟はそっと椿希の手に自分の手を重ねた。視線を落とし、唇を噛んだ。
 「ごめんな」
 椿希は藤悟の手に包まれた手から伝わるぬくもりや優しさを感じ、少し目を閉じた。
 「あいつは、椿希が受験のときに毎日祠に行っていたんだ。無事に女学院に合格しますようにって。俺は教会に通っているから付き添わなかったけど、あいつの思いは尊敬していたよ。そして羨ましかった。俺にも、あんな風に思える妹がいたらいいのにって心の中では抱いていた。あいつみたいに神社だとか祠だとか、そういうところには行けないけど、代わりに俺もこっそりと礼拝のときに祈っていたよ。『椿希ちゃんが合格しますように』って」
 視線の定まらぬ目は、過去に戻っていた。その時の情景が目に浮かび、次の言葉を放つのを躊躇わせる。だがここには二人しかいない。五年前に還ることで椿希に辛い思いをさせたくないと思ったが、椿希がもし辛そうなら自分が支えればいいと思って、藤悟は改めて重ねた手に力を込めた。
 「あの日、いつものように榊希は祠に行くからと言って二丁目の交番の近くで別れたんだ。少し歩いたところで、今まで聞いたことのない音がして嫌な予感がした。騒ぎにはなっていなかった。当然だな、ほんの数秒のことだったから。慌てて元来た道を戻ってみたら、もう」
 そう言うと、藤悟はもう写真を見ることが出来なかった。
 「ごめん。やっぱり俺は榊希について行くべきだったんじゃないかってずっと思っていた。そうしたら、こんなことにならなかったのかもしれないと」
 暴走した車は赤信号を無視して突っ切ってきた、というのが真相だった。交番の前だったということもあって検挙は素早く行われ、榊希は病院へもすぐに搬送されたが、その後のことは二人ともによく覚えていなかった。それは思い出すことを深層心理で拒んでいるのかもしれないし、本当に色々なことが起こりすぎて覚えていないのかもしれない。
 「でもね、兄さんは病院で『椿希』と言ってくれたのよ。ほんの一瞬だけど、意識を取り戻して。藤悟くんがすぐに連絡してくれなかったら、その言葉を聞くことも出来なかったかもしれない。だから、藤悟くんのことは感謝しているの」
 思えば椿希が取り乱したのはあの時が最初で最後だった。通夜のときも葬儀のときも気丈に振舞って、親戚への挨拶や弔問客への相手で忙しい両親をよく手伝っていた椿希が堰を切ったように泣き叫んだのは、何もかもが終わってからだった。葬儀場の片付けが終わり、親戚も業者も皆帰っていってからだった。両親が親戚たちを送りに駅まで行っている間、ずっと藤悟は椿希と一緒に泣いていた。涙で視界が滲んでよく見えなかったけれど、二人でしがみつき合うようにしながらずっと泣いていた。
 「本当に、藤悟くんがいなかったらって思うとぞっとするの。お兄ちゃん子だったから、私」
 冗談で椿希が言ったようには思えなくて、藤悟は思わずぎゅっと椿希の手を握り締めた。
 「大丈夫。私はもう大丈夫」
 痛々しい笑顔を向けている椿希は、幼かったあの日とは違う、大人の女性として花開くのを待つ蕾のようだった。兄のように慕ってくれていた椿希のことを、本当の妹のように思って支えてやりたいと思っていた、ずっと。
 重ねていた手がふわりと上がって、椿希の頬に添えられる。少し熱い椿希の頬は、ほんのりと赤く染まっている。椿希は藤悟の手が促すままに藤悟の体に身を委ねた。あの時のように、また藤悟に支えられていると思うと安らぎを感じて、またあの時のように取り乱しそうだった。心が不安定なのは薬の副作用のせいだけではないだろう。このまま藤悟に何もかも任せてしまえたら、どんなに楽だろうか。長い付き合いだけれど、藤悟なら信じられる、間違いはない、そうだと分かっているのに、椿希は何故かもう昔のような気持ちにはなれなかった。
 藤悟の腕の中で安らぎと共に相反する気持ちが、椿希の中でしっかり生きていて、こんなことをしてはいけないと、けたたましく警鐘を鳴らす。
 「私は、何を考えているの」
 自分で自分のことが分からなくなって怖くなり、もう何も考えたくないと、椿希は藤悟の胸に縋るように顔を埋めた。藤悟の腕が椿希の体に回され、背に温かな手が添えられると、「振りほどかなければ」ともう一人の自分が叫んでいる。恐ろしいほど気持ちが二つに裂かれるようで、椿希はぞっとしていた。いるはずのない、葵生に凝視されているような感覚が背筋に走った。

 藤悟が帰って病室に残された椿希は、いつものように遅くまで起きることはなく、すぐに眠りに就いた。その日は、勉強する気にはなれなかった。様々な思い出が次々と襲うように蘇って来るので、平静ではいられなかったのだった。
その夜は、やけに月の紅い夜だった。


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