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作品名:レンズ雲 作者:ばれんしあ

第1回   1

「お兄ちゃん これからなの?」
「はい これからです」
「大学って いいところねぇ」
3軒程先の小母さんが 庭の手入れをしていた。
時々交わす、いつもの挨拶だった。
その通りだった。右手の腕時計の針は、10時を指していた。
「何とか 2講目に間に合いそうだ」
一応、ル−ズリ−フノ−トとボ−ルペンは持った。
教科書は なし。
西岡にある大学までは、徒歩30分程だった。

 ぎりぎりに学校に到着、
大教室に入り 後ろ目の場所に座った。
間も無く「出席カ−ド」が配られた。
名前 永沢達也 番号 7794551 
ともかく 記入した。
「これでよし ノルマ達成」
講義はつまらなかった。
「マイコン」を朝まで いじっていたせいか、
程なく睡眠ということになった。

  周りの学生が席を立つ音で目がさめると、
講義は終わっていた。
「さてと メシ食って、帰るか...」 

学食の前に デカイ看板が出ていた。

「三里塚闘争...」 

「確か 成田の話だよな 好きだね オレには 関係ないな」 
学園闘争は すでに遠く過去のものだった。
 4番街を ジグザグに デモ行進したり、
市電から見えた 北大が「お祭り」のように
飾り立てられたりしていた。
なんとなく、そういった事には、あこがれていたが、
政治には 何の興味も関心もなかった。

学食に入り 食券売場を見ると、10人ほど 並んでいた。
「今年は 学生が ふえたな」
その前年から 3年に進級するには、制限が出来たらしい。
それまでは 別に制限はなく、自動的に4年にはなれた。
だいたい 5月には 学生の数が グッと へったものだった。

 ラ−メン 食べて タバコ すって いつもどうりだ。
 
カベに貼ってある、標語がすごい。
「酒類はもちこまないでください」
「くわえタバこはやめましょう」
「食器はかたずけましょう」
最初は おどろいたが なんてこともなくなっていた。

 学食の2階の売店(生協)に上がり、
文庫本のコ−ナ−に行った。

昨日 読んだ 「別冊 マ−ガレット」に 
「異邦人」を題材にした マンガがあった。
「原作はどんなだろう}と読んでみることにしていた。
文庫本は ダ−クシルバ−のカバ−で 案外と 薄い。
「ふ−ん どれどれ」
ペ−ジをめくり、引用されていた文を探した。
その文は すぐにみつかった。

「早く歩くと 汗をかきます。ゆっくりあるくと...」

という一文だった。

「逃げ道はないのです か...」
文庫本を買って 学食の外に出た。

 外に出た所で声がかかった。
「あら あなた」
同じサ−クルの「知美」さん だった。
「おお」
「今日は もう かえるの?」
「ああ 3講目は休講だし」
「いいな- こっちは 休講すくなくて」
「しるかい そんなこと」
「じゃね-」
「ほんじゃな」
「あなた」と呼ぶのは、彼女の口癖で   
知り合いを みなそうよんでいた。

 大学の南にでる、ぼろ階段をのぼり 砂利蜜にでた。
「お-い かえるのか?」
「ああ 3講目 ねえぞ」
「まjiiかよ」
「昨日 休講でてたぞ」 
「おれは バイトだ しゃ-ないな」
「どうすんだ?」
「めし くって また バイトいくさ」
「そっか」
「じゃな」
特に親しい訳でもない、同じクラスのやつだった。

つづく


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