地下100メートを降りたところで。エスカレータは80メートル四方の空間にたどり着いた。そこはコンクリートが剥き出しで何の装飾もなく何も置かれていない格納庫の様だった。
「地下鉄はどこにあるんだ?」
オニールは周りをキョロキョロ見渡しながらコクトに尋ねる。
「多分あそこだ」
コクトが指差した方向には、巨大な鉄の扉が2箇所あった。ほぼ同時にそのドアの方から鈍い機械音が聞こえてきた。
「ガッチャン、ガッチャン、・・・・・・」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、・・・・・・」
外の入口扉の何倍もある巨大な扉がゆっくりと横に滑るように開き始めた、その厚さ優に1メートル近くはあった。
「なるほど、確かにこれは核シェルターだ」
「オニール背中を借りるぞ」
コクトはそう言うと、アミアンを持ち上げオニールの背中に押し付けた。
「きゃっ」
「おっととと」
オニールはアミアンを落とさない様に慌ててバランスを取った。
「交代だ」
「うっ、以外に重い」
オニールはつい口走ってしまった。すると「コッン!」とアミアンが怒ってオニールの頭を軽く殴る。
「そんなことないです」
「冗談だよ、冗談」
「行くぞ」
コクトが先頭を切って歩き始めた。
巨大な扉がまだ開ききらない内に3人が扉を抜けると、そこには駅のホームが広がっていた。最初ホームは真っ暗であったがコクトらが入ると天井のライトが次々と点灯し始めて数秒でホーム全体が照らし出された。ホームの長さは200メートル近くあり、トンネル状に伸びていた。
「ふぇー、ここも閑散としているな、ところで電車は?」
「そのうち来るよ、搭乗口のところまで行くぞ」
「おう」
駅のホームを歩いていると、もごもご忙しく動き回っている物体があった、アミアンがそれに気づくと、「あそこにで動いているのは何?、人じゃないみたい」と指差す。
オニールは目を数回ぱちくりさせてからじーっとその物体を見つめる。
「ロ、ロボットか」
コクトは、ほっと溜息を漏らし、安心したように微笑んだ。
「駅のメンテナンス用ロボットだ、良かったちゃんと仕事している」
そこにはドラム缶程の大きさのメンテナンス用ロボットが、モップを出して床をゴシゴシ磨いたりバキューム用のパイプを伸ばし、埃を吸い取ったりと忙しそうに動き回っていた。
「今朝早くに地下鉄の運行管理システムをマーメイに接続して、本格運用を開始したばっかりなんだ、彼もその一員さ」
「コクトさん、人は私達以外誰もいないですよ」
アミアンがオニールの背中に負ぶさったままコクトの方に振り返り尋ねる。
「ははは、実はまだ一般には開放していないんだ、僕達がお客第一号って訳」
コクトは頭を掻きながら妙な笑い方をする。
「分かってるよコクト俺らは、動作確認用のモルモットだろ、・・・」
オニールは呆れた様につぶやく。
「んんー」
コクトは一度咳込んだ。
「まぁー、そんなところだ」
アミアンはコクトと視線を合わすと、無理やり作った笑顔で微笑んだ。
3人が地面に白線で「IN」と印がされているところまでくると、オニールが線路とホーム完全に仕切っているアクリルの透明な壁を「コン、コン」と叩く。
「いいねー、線路とホームが完全に仕切られている」
「俺はどうも、仕切られていないホームは怖くて、苦手なんだ」
「私も」
アミアンもオニールの背中の上でうなずいた。
「安全第一ってところだ、それ以外にも電車が走る線路内は高速性を高めるために気圧が低めに設定されているんだ」
ホーム側の搭乗口は旅客機の搭乗口と同じ形をしていた。電車に乗り降りする時には2重の搭乗口を人はくぐることになる、まずは電車の搭乗口とホームの搭乗口が結合した後、入り口が開き人々が電車に乗り降りできる仕組みになっているからだ。
「未来の乗物みたい」
アミアンは関心するようにつぶやく。
「来たぞ」
コクトが右方向からライトを照らしながら近付いてくる電車の方を見ていた。線路が密封されているせいもあって、電車の音はまったく聞こえない。電車は滑るように迫ってくる。
『コアサークル向け、上り電車が到着します、搭乗口ドアの白線の内側までお下がりください』
駅の構内放送が鳴り響いた。
4両からなる電車は音も無く停車すると「プッシュー」と油圧音が数箇所で鳴り響く、そして「ガチャ」と電車の扉と駅のホームの扉が結合されると、搭乗口のドアが「シュー」と音を立て横に開いた。
「よし乗り込むぞ」
コクトはオニールとアミアンに声を掛け自分が最初に電車に乗り込む。
「おう」
アミアンを背負ったオニールがその後に続いた。
オニールは直に足元の違和感に気がつくと。
「コクト、気のせいかもしれないけど、電車が浮いている様に感じるんだが」
コクトは別に気に留めることも無く答える。
「ああ浮いてるよ」
「これってリニアモータカー、ですか?」
アミアンが小さな声で質問する。
「そうだ、それも第二世代の奴だ、こいつには車輪なんて付いてないんだ、凄いだろう」
「ふぇー」
アミアンは口をあけたまま首をコクリと降ろした。
「オニール一番前の席に行こう、どのように走るか見てみたいんだ」
「わかった、わかった、子供みたいだな」
3人が歩き始めると同時に、車内のアナウンスが聞こえてきた。
『まもなくドアが閉まります、ご注意ください』
そして数秒後にはドアの閉まる音が聞こえた、すると足元が先程よりふわっと浮き出したような感覚を3人は感じる。
「コクト発車しそうだぞ、座らなくていいのか?」
「車内アナウンスが無いから大丈夫だろう、もし転びそうなぐらいの揺れがあるなら車内放送をもっと工夫しなければいけないなー」
コクトは気に留めることなく前に進んで行った。
座席は左右に3席ずつ配置されているが座席の前後は広く空間が取られているため、奥の座席に行く時も内側の座席の人は足を組んでいない限り動く必要はない。かなり贅沢な作りになっていた。
車内に電子音楽が鳴り響くと、電車はすーっと滑るように走り出した、オニールは少し体が後ろに引っ張られる感覚を覚えたが、特に文句を言うレベルじゃないと思った。
電車の天井に1本のレールの様な溝が走っていた、その溝に沿ってアタッシュケース位の大きさの箱が天井に張り付くように移動してくる。
アミアンがそれに気づくと。
「コクトさん、何か来ましたよ」と天井を指差す。
移動してきた箱は3人の頭上でピタッと停止すると、半円球のガラスで保護された中にあるカメラのLEDが点滅し始めた。
『コクトさん、乗り心地はどうですか?』
「ああ、問題ない、快適だ、他のところは問題ないか?」
『2〜3箇所細かい問題はありましたが、全て解決しています』
「それは良かった、ご苦労さん」
『では、リニアカーの旅を楽しんでください』
「ありがとう」
コクトはカメラに向かって軽く敬礼を返すと、カメラはすーーーっと後ろの車両方向へ向かって移動していった。
「びっくりした、なんだあいつは?」
「マーメイプロジェクト運行管理システムのメンバーだよ」
「それよりオニール、アミアン、前を見てみろ」
3人はリニアカーの最前列の座席のところに立っていた、そこは床から上は全て透明なアクリルで覆われているため、視界を遮るものは無かった。とは言っても地下のチューブ状の線路内を高速で移動しているだけなので、景色を楽しむには無理がある。
しかし、線路内のライトがそのスピード感を十分に示してくれた、まるで映画で良く見る光速飛行をする宇宙船の様に光の帯が鋭く後ろに過ぎ去って行く光景は十分にスピード感を楽しませてくれた。
「ひぇーー、感動もんだ」
「ほんとうに凄いですぅ」
オニールはアミアンを背中から降ろすと、最前列の特等席に座らせた。
「お姫様、お気に召されたでしょうか?」
「うん」
アミアンはうれしそうに首を立てに降ろした。
コクトとオニールはアミアンを挟んで、特等席の両隣に座ると、足を組んで背中を座席の奥に沈めるようにくつろいだ。
「ふぁー」
コクトが両腕を思いっきり上に上げ、背筋を伸ばしながら大きなあくびを漏らす、宇宙空間を光速で飛んでいる感覚を楽しんでいたが、まぶたが重くなるのを押さえきれなくなってきた。
コクリ、コクリと首が上下にゆれ、深い眠りに入ろうとした瞬間。
脳裏に数人の屈強な男達に袋叩きに遭っている自分が映し出される、と同時に砂漠の真ん中に一人、ぽつんと立っている自分の周りを、戦車、装甲車、戦闘ヘリ、そしてその後ろに続く大勢の武装した兵士が怒涛の如く迫ってくる映像が重なって映し出された。
「うわっ!」
コクトの思わず半腰で起き上がった、顔は真っ青で冷たい汗が額に無数の水玉を作っている。
「コクトどうした!?」
「コクトさん、大丈夫ですか?」
ほんの数秒の出来事だが、コクトには物凄く長く感じられた。
「だ、だいじょうぶだ、・・・・」
コクトはそう言うと、座席に深く身を沈め大きく溜息を漏らした。
何だまだ怖いのか、コクト、・・・、コクトは自分に確認するように、尋ねた。
ああ、・・・。
でも、もう後戻りはできないんだぞ。
・・・・
『まもなくセンターサークル東駅に到着します』
車内放送が鳴り響いた。
「はえっ、もうセンターサークルかよ、まだ10分も経ってないぞ」
オニールは目をキョロキョロさせて周りを確認していた。
「コアサークルまではもっと早いぞ」
リニアはセンターサークル東駅に到着すると、30秒程停車後再び静かに走り出した、むろん乗客はコクト、オニール、アミアンの3人以外は誰も居なかった。
5分ぐらい時間が経過すると再び車内放送が鳴り響く。
『まもなくコアサークル東駅に到着します』
「ぶっ!」おもわずオニールが吹き出した。
「まじ早い、車で移動するよりこいつの方が便利じゃないか」
「ほんとだ、・・・」
コクトも早いとは思っていたが実際に搭乗してみるとこの速さと利便性は、確かに凄いと思った。
リニアは徐々にスピードを落とし、ゆっくりとコアサークル東駅のホームに滑り込むと急に視界が広がった。そしてリニアは音も無く停車した。
「コ、コクトさん、ここのホームはなんでこんなに広いの?」
アミアンはリニアの窓から駅の構内を見上げていた、オニールは言葉を失った様に口をあけたまま構内を眺めている。
なんじゃこの広さは?、サッカー場が4つは出来そうだぜ。
ドーム状の巨大な空間のど真ん中に駅のホームはあった、コクトも内心は驚いていた、これほどのものとは。
「ルジウェイのコアサークルには東西南北に4つの駅があって、核シェルターの中心的な役割があるそうなんだ、しかしこれほどとは」
「冷戦はとっくの昔に終わってるのに何故こんな巨大なシェルターを作ったのからしら」
アミアンの問いにコクトは「わからないと」と首を横に振るだけだった。
しばらく3人が巨大な地下ドームに圧倒されていると、再び車内放送が鳴り響く。
『このリニアはこれよりコアサークル南駅経由で終点アウトサークル南駅へ向かいます、まもなく発車します』
電子音楽が数秒鳴り響くと、ドアの閉まる音が聞こえた、そして再びリニアは静かに滑るように走り出す。
「次の駅で降りるぞ」
コクトはオニールとアミアンに声を掛ける。
アミアンは直に「はい」と返事を返すが、オニールは腕を組んで目を閉じ、想像力を膨らませた、コアサークル南か、確かにマーメイプロジェクトビルには近いな。しかし歩くにはちとつらい、誰か迎えにくるのかな?、
オニールはアミアンより少し送れて「了解」と言葉を返す。
リニアは6分ぐらいでコアサークル南駅へ着いた、そして3人がリニアを降りると、先程と同じ広さの巨大なドーム状の空間が広がっていた。
オニールの背中にはアミアンが負ぶさっていた、コクトはアミアンに気づかれないようにオニールに向かって自分の肩を指差して声を出さずに口パクでしゃべった、すまん、まだ殴られた跡が痛いんだ、アミアンを頼む。
オニールも、いいって、いいって、と目で答える。
「コクトさん、オニールさん、見て」
「リニアの中からは気がつかなかったけど、結構緑がいっぱいあるよ、地下なのに何故かしら?」
「ほんとだ、芝生の広場や、背の低い広葉樹が結構あるな、あまり手入れされている様子はないけど、どういうこと?」
コクトはドームの天井を指差した。オニールとアミアンが上を見上げると、特に変わったものはない、ドーム状の巨大な天井に数メートル間隔に照明が整然と設置されているだけだった。照明からは少し緩やかな光が放たれていた。
「わかった、あれは太陽の光ね」
「さすがアミアン、正解だ」
「地上の集光器で集めた太陽の光を光ファイバーでここまで送ってこの地下空間を照らしているんだ、もちろん通常の照明もあるが昼間はあまり使う必要はない、おまけとして有害な紫外線は通さないから、植物にとっても人間にとっても、やさしい光なんだ」
「コクトさん、ルジウェイのことは何でも知っているんですね」
コクトは照れを隠すように、鼻を人差し指で数回擦った。
「はは、実は僕も今朝、マーメイに教えてもらったばかりだ」
「だと、思った」
オニールはそう言うと「よいしょ」と、背中のアミアンの位置を少し調整する。
「コクトさん、ここはシェルターって言ってたけど、人はどこに寝泊りするんですか?もしかして、芝生の上にシートを敷いて寝るのかな?」
「確かに、見渡す限り、芝生と背の低い広葉樹、そしてやたら広い歩道が駅を中心に放射状に広がっているだけじゃん」
コクトは今度は足元を指差した。
「居住空間はこの広場の下だよ、今はまだ最低限のライフラインしか整備されていないらしいが、数万人単位の居住が可能なキャパはあるらしい」
「それにあれは歩道じゃないよ、良く見てみろ」
オニールが歩道と思った駅を中心に放射状に伸びた道は、分厚い透明なアクリルの板が敷き詰められているだけだった。
その透明なアクリルの下は空間になっていて、左右の壁には一定の間隔で窓が取り付けられていた。人々が居住するエリアがその下には配置されていたのだ。
アミアンはごくりと生唾を飲み込む。
「私の知らない施設がいっぱい、前からいる人達は知っているの?」
コクトは両手を広げて肩の位置まで上げると、自分にもわからないよ、とジェスチャーで答える。そして、近いうちに全て公表してやるさ、とコクトは心の中でささやいた。
コクトは思い出した様に、ポケットから通信端末を取り出すと耳に装着しマイクを口元に近づけた。
「マーメイ、今、コアサークル南駅にいる、迎えをよこしてくれ」
「なるべく早くな」
『はい、先程手配しましたのでもう直そちらに着くと思います』
「そうか、ありがとう」
「コクト、もしかしてあれか?」
オニールが指差す方向から小型のバスが近付いてきた。地下ドーム専用の乗り物らしく屋根は付いていない。
運転席には座席は無く子供ぐらいの背丈のロボットがハンドルを握っていた。
「げぇ」
「何だ?人間様もあれに乗るのか?」
3連結されたバスには、地下鉄のホームで見たメンテナンス用ロボットがぎっしりと器用に座席にしがみついていた。
バスがコクトらの前に停車すると、しがみついていたロボット達が蜘蛛の子を散らすように一斉に散らばると、直に駅周辺を忙しく掃除し始めた。
「人材、いやロボット不足なんだよ、あるものは有効利用しないとね」
コクトは真っ先にバスの一番先頭の座席に座ると、早く、早く、とオニールを手招きする。
「しょうがねなぁ」
オニールしぶしぶコクトの隣の席にアミアンを座らせると、2列目の席に腰を降ろした。そしてコクトの肩を叩く。
「いいぞ」
運転席に座っているロボットの首がくるりと180度回転すると、頭の真ん中にあるCCDカメラで3人の人間がちゃんと座席に座っているのを確認する。
「うっ」
三人はおもわず後ろに身を引いた。
『マーメイプロジェクトビルヘ、ムカイマス、ヨロシイデスカ?』
CCDカメラの横に付いているLEDを激しく点滅させながら、いまいち聞き取りにくい音声で確認してきた。
「オーケー!出発してくれ」
運転席のロボットがコクトの言葉に反応すると、再び首を180度回転し元の位置に戻すと「シュッパツシマス」とぎこちない音声で出発の号令を発した。
アミアンが隣のコクトの服を少し引っ張る
「どうした?」
「このロボット慣れないと、怖くないですか」
「んんー」とコクトは一度咳払いをする。
「そ、そうか」
アミアンは自分の顔を指差してコクトに言った。
「もし見直す場合があったら、デザインは私がします」
「その時はお願いするよ」
コクトは笑顔で答える。
バスは駅周辺を掃除しているメンテナンス用ロボットの間をタイヤのゴムの軋む音を立ててゆっくりと走り始めた、速度は人のジョギング程度の速さなのでそう速くは無かった。
「コクトさん、このバスはそのまま地上に出るの?」
「いいや、マーメイプロジェクトビルの真下まで行く、主要な建物は全て地下通路網で繋がっているんだ、いちいち地上に出なくてもいいんだ」
「高エネルギー研究所も?」
「もちろん」
「えっ、じゃ何故、わざわざジョブズ警部に駅まで送らせたの?」
「話がしたかったのさ」
コクトはアミアンに向かってウインクを返した。
「あ、そうか」
「しかし、驚くことばかりだ、長年ここに居るけど、まったく気が付かなかったよ、コクトまだ他に驚く様なことは無いのか?まだ隠してるだろ」
後ろの席からオニールが声を掛けてきた。
「ここは長年放置され、忘れ去られていたからしょうがないさ」
「でも、今回の第二次マーメイプロジェクトで都市の全ての管理機能がマーメイに統合されるんだ、もうすぐルジウェイの全てが全市民に明らかにされるさ」
「言っておくが、僕もマーメイプロジェクトの責任者となってやっと、ルジウェイの全容がやっと分かりかけたところなんだ、僕が隠してるわけじゃないぞ」
「わかってるよ」
そう言うと、オニールは両手を頭の上で組んで座席の背もたれにふんぞり返った。
コクトは少し沈黙した後、後ろを向いた。
「な、なんだよ」
「実はな、オニール」
「一つ、気になる場所があるんだ」
「コクトさん、私も聞いていいんですか、耳を押さえておきます?」
コクトはアミアンを見ると笑って答えた。
「そんな必要はないよ、大したことでもないくせに何でも秘密にしたがる連中がだいっきらいなんだ、ぶん殴りたいぐらいだ」
「で、どこだよ?」
オニールが身を乗り出して聞いてきた。
「ルジウェイの中心部、コアサークのど真ん中だよ」
「だけど、あそこは馬鹿高い4つの通信塔があるだけで、あとはただの原っぱだろ、それ以外に何も無いぞ」
「そうなんだが」
「この地下都市を見てみろ、ルジウェイは何か目的があってそれに沿って作られた都市なんだ、その中心部に何も無いなんて変だと思わないか?」
オニールは肩をすくめて、別に、と意思表示をする。
「気になるんだったら、マーメイがいるじゃん、・・・だめだったのか?」
「ああ」
「マーメイでも答えてくれないんだ」
コクトは大きく肩を落とした。
「バーン博士なら何か知っているかな・・・・」
「きっと、これから何か作るのよ」とアミアンが声を挟んできた。
コクトは正面に向き直り座席に座りなおす。腕を組んで横目でアミアンに視線を送った。
「何作ろうか?」
「うーーーん」
「宇宙エレベータ!」
コクトとアミアンの後ろに座っているオニールが、こけた音がした。
バスはトンネルの様な狭い連絡通路に吸い込まれるように入って行く、天井にはライトが一定の間隔で設置され路面を照らしていたが、それでも通路は薄暗い。
「私凄いところに就職したみたい、マーメイに逢いたかっただけなのに、・・・」
アミアンが寂しそうな声でささやく、コクトはやさしくそしてアミアンの肩に手を置いた。
「多分、みんな同じ様な思いだと思うよ、僕だってそうさ、・・・」
アミアンは深くうなずいた。
「大丈夫です、自分の想像を遥かに超えた地下世界を見せられて、少し弱音を吐いただけですから」
しばらくしてオニールが大きな声でしゃべり始めた。
「科学・芸術・文化の粋を集めた都市を作り、人類の発展に貢献する世界的な組織と都市を作る、か、・・・・」
「なんて欲張りなスローガンなんだ」
「だが、好きだぜこのスローガン」
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