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作品名:ルジウェイU 作者:ナルキ辰夫

第22回   ★☆要塞都市☆★
 1台の軽装甲車両が砂丘の間に停車していた、そこは部隊の後方からそう離れてはいない場所だった。

 車両から続く足跡が砂丘の頂上に向かって伸びている、頂上には二人の兵士が伏せて双眼鏡で前方にある何かを確認している。

 「間違いない、少佐の予想どおりだ」

 「お前は車に戻って無線で少佐に知らせろ、俺はもう少し近づいて確認する」

 「分かった」

 一人の兵士は砂丘を滑り落ちるように下っていった、もう一人は伏せたままターゲットに向かって前進し始める。

 彼が向かった先には砂丘から伸びている潜望鏡らしき物体があった。

 物体の先端は少し太く円錐形に伸びており3個の丸いレンズが縦に配置されている。

 その中の1個のレンズが伏せて近づいてくる兵士を捉えた。

 「シューーーーーーーーーー」

 モータの回る音がしたと思った瞬間、潜望鏡が空中に上がりその下では砂埃が舞い始めた。

 「くっそ!気付かれた」

 兵士は急いで銃の安全装置を外すと、砂埃の中から舞い上がってくる、物体に向かって銃撃し始めた。

 「ダダダダダダダダダダダダ」

 「ダダダダダダダダダダダダ」

 銃弾をはじき返す音が数回響き渡った。

 砂埃の中から現れたのは小型の無人ヘリだ、ヘリは銃撃している兵士の頭上を通り過ぎると、潜望鏡を下ろし低空のまま猛スピードで飛び去っていった。ほんの数十秒のできごとであった。

 兵士は銃を持ったままその場に立ち尽くしていた。

 「ぶきみな連中だ、あんなのがまだどこかに隠れて俺達を監視しているのか?」


 カービンは自分専用のテントの中で斥候の報告を受けていた。


 「ごくろう、引き続き周囲の警戒を行ってくれ」


 カービンは無線機を机の上に戻すと、ボードに貼り付けられているルジウェイの地図に目を向けて無言のまま思索に耽っていた。

 将軍はルジウェイに軍隊は無く、外敵に備えてはおもちゃ程度の無人兵器があるぐらいだと言ってたが、はたしてほんとうにそうなのか?

 執拗に我々を監視しているやつらは我々の戦力を常に把握していると考えていいだろう、腐敗している割には、やることが理にかなっている。

 いくら圧倒的な軍事力の差があると言っても、こちらの手の内が全て把握されては、戦いに勝てるとは思えない、やはり空軍の支援は必要か?。

 カービンは椅子に座り紅茶を啜りながら、ルジウェイを中心に描かれている作戦地図を眺めていた。

 ルジウェイをできるだけ無傷で手に入れるにはどうすればいいか、何度か頭の中でシュミレーションを繰り返す。

 しかしなぜか途中で行き詰ってしまう。

 しばらくすると、カービンの表情がだんだん険しくなってきた。

 な、なんて都市だ。

 これはまるで要塞ではないか!!

 ルジウェイは科学技術の発展に貢献するために作られた都市、極端に言えば科学者どものディズニーランドぐらいにしか思っていなかった、とんでもない。

 この都市は広大な3重の堀に囲まれた難攻不落の城塞都市、いや城塞国家だ。

 叔父さんがそこまで気付いているかわ疑わしいが、あの怪しいブラック・ダイヤなど無くたって、このルジウェイの運用が完全軌道に乗ったら、周りの諸国が束になっても敵わない巨大な軍事国家が誕生するに等しいことになる。

 カービンは引き出しの中からアンテナ部分が異様に太い携帯電話を取り出した。

 「カービンだ、すまんが急いで調べてほしいことがある」

 『おい、カービンいきなりかよ、今は演習の最中だろ?』

 「そうだが・・・・、友人として頼みたい」

 『お、おう、訳ありか?』

 「ああ」

 『なんだ?言ってみろ』

 「ルジウェイに関する情報が欲しい、特に無人兵器に関する情報と現在誰がそれを動かしているのか、そして、実質的にルジウェイを動かしている人物が誰なのかを、できるだけ詳しくそして出来るだけ早く欲しい」

 『・・・・』

 『ワゲフ将軍は本気らしいな?』

 「し、知っているのか?」

 『俺はこれでも情報部の隠れたエースだぞ、そのぐらいは知ってるさ』

 『ルジウェイを占領するなんて赤子の手を捻るより簡単だが、問題はその後どうするかだ』

 「・・・・」

 「実は占領もそう簡単ではなさそうだ、場合によっては将軍を止めなければと、思っている」

 『へぇ、そうなのか?』

 「ああ、ただ今は情報不足で何ともいえない」

 『わ、わかった、お前がそう言うんだったら間違いないだろう、直に調べてみる、少し待ってくれ』

 「悪いな」

 『なぁに、お前が大統領になった時に、引き立ててくれるのを期待してるさ』

 「はっははは、分かった万が一そうなたら考えとくよ」

 『了解!』

 カービンは携帯を切ると、大きく肩を落とした。

 将軍がやろうとしていることは、傍から見れば無謀ともとれるかも知れないが、ルジウェイに隠された陰謀が明らかになれば人々は将軍の行動を認めざる得ないだろう、がその前に潰されたらモルタニア自体の立場が危うくなってしまう。

 カービンは腕を組んだまま、ボードに貼り付けられているルジウェイの地図を睨みつけるように見ていた。


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