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作品名:ルジウェイ 作者:ナルキ辰夫

第8回   ★☆合流☆★
 コクトは、危機管理室より通信監視室へ小走りで向かっていた。途中窓の外を見ると数台の警察の車両が玄関の前に停車しているのが見える。

 そこにはルジウェイ警察の警察官数人と、武装した兵士数人が警戒に当たっていた。
 さっきオニールも言っていたが都市管理局でもなにかあったのか、いやな感じだ早くここを出た方がよさそうだ。

 コクトが通信管理室の自分の席にたどり着くと、引き出しの中から愛車の鍵を取りだしポケットにしまいこむ。
 不思議なことに常に5〜6人は通信管理室に監視員が常駐しているのだが誰もいない。
 すると、ここよりは少し広い隣のフロアから話し声が聞こえてきた。
 コクトがそーっと隣のフロアを除くと、職員全員が集められていてそれを取り囲むようにルジウェイ警察の警察官と武装した兵士がいた。

 リーダらしき兵士が何か話しているがコクトには何を言っているのか聞き取れない。
 分かるのは取り囲まれている職員が互いに顔を見合わせ両手で分からないととれるジェスチャーをしているのが確認できる。

 しばらくすると、みんなの視線がマイケルに向けられた、すると武装した兵士数人がマイケルの方へ走り出し、マイケルを取り押さえた。

 マイケルは抵抗するが、数秒で拘束され兵士二人に両腕を掴まれたまま連行されていった。武装した兵士の行動は無駄がなく素早い、用件を済ますとからさっさと出て行く、ルジウェイ警察の警察官達はその後を追うように小走りに出て行った。

 武装した兵士と警察官がいなくなったのを確認したコクトは、まだ動揺している一人の職員を捕まえた。

 「マイケルに何があった?」

 「ああ、コクトか、」

 「どうもマイケルがハッキングして重要書類を盗みだしたらしんだ」

 「そんな、証拠はあるのか?」

 コクトは同僚のマイケルがそんなことをする人間とは思えなかった、その前にマイケルにハッキングできるような技術をもっていることすら疑わしいと思っている。

 「証拠か、・・・さっきの兵隊が言うには、重要書類がマイケルの端末に転送されている痕跡があったと言っていたぞ」

 「まさか、どうやって調べたんだ?」

 「さあ、俺が分かるわけ無いだろ」

 「そうだな、ありがとう」

 コクトは彼の肩を軽く叩き、兵士の後を追うようにフロアを出ていく、今度はマイケルか、早くオニールに会って詳しい情報を聞かなければと、非常階段を使って地下の駐車場まで走っていった。エレベータにはまだ数人の武装した兵士と警察官がいたからだ。

 コクトは地下駐車場まで降り自分の愛車に乗り込む。周りに気を配りながら、ゆっくりと駐車場を出て警察車両の隣を通り過ぎ、本線にはいるとアクセルを思いっきり押し、猛スピードで都市管理局を後にする。

 コクトはあることを思い出していた、数日前のマイケルの席のモニタ異常だ。もしかしてあの現象と関係あるのか?、マイケルの監視用のモニタで起こったことと。

 たしかマーメイから呼ばれてメッセージが何とか、っと言っていたけどそれ以降が思いだせないのだ。「まったく」と頭を横に振り運転に集中しようとにらみつけるように前をしっかり見据える。

 車は本線を抜けると治安局手前で右折した、しばらく行くと小さな公園がある、そこがオニールとの待ち合わせ場所だ。

 公園の駐車場には、警察車両と言うより装甲の分厚い装甲車が止まっていた、その横にはオニールが立っていてこちらに向かって手を振っているのが見える。その横にコクトは車を止めた。

 「コクト、こっちの方がいいだろう乗ってくれ」

 「はぁ、相変わらず派手なやつだな、こいつはコマンダー(司令官)が乗る作戦用の装甲車じゃないか」

 「分かるか、さすがコクトただのオタクではないな」

 「何言っているんだ、一緒にシュミレーションシステムをこいつに組み込んだだろ!」

 「そうだっけ、そうかもな」

 ニヤニヤして頭を掻くオニールを見て、やっぱりこいつは体育会系だと思った。

 「まぁ色々装備か揃っているから確かにいい判断だ、オニール」

 「だろ!」

 二人は装甲車に乗り込んだ、そしてコクトは車に装備しているマーメイの端末スイッチを入れた。

 「マーメイ、聞こえるか?」

 『はい、コクト感度良好です』

 洗練された女性の人口音声でマーメイは答える、オニールは少し怖がっているようだ。

 「オニールです、よろしく」と言うのがやっとであった。

 『ルジウェイ警察のティーファー・オニールですね、よろしく』

 「ひぃ!」

 「コクト、なんでこいつ俺のことを知っているんだ?」

 「何いっているんだ、お前にもマーメイの使用権があるんだぞ、警察だから俺よりももっと上の権限がな!」

 「ああそうだったな」と思い出したようにオニールはうなずいた。

 コクトは自分がセキュリティシステムをバイパスしてマーメイを使用できることは黙っていた、別に内緒にするのではなくあとで話そうと思っていた。

 「まったく」

 コクトとオニールは。互いの情報交換を行うことにした。

 オニールの話だと今日の明け方にルジウェイ空港に二百人前後の武装した兵士と、武装はしていないが軍服を着た連中が到着し、彼らを警察の車両でルジウェイの主要箇所に連れて行ったこと。そしてそれ以降警察は彼らの指揮下に入りテロリストの捜索に協力させられているらしい。

 フレアに関しては最初から拘束の対象になってたらしく直に逮捕命令がだされたが、あと一人の特定がなかなできずにいたらしいがやっと特定できたらしい。マイケルのことだ。

 「で、やつらは何者だ?」

 「それが、俺達下っ端には何も教えてくれないんだ、どうもルジウェイ最高評議委員会のトップからの命令らしんだが、はっきり言って俺にはわからん」

 「そうか、」

 コクトはマーメイのカメラの方を向いた。

 「マーメイ、武装集団に関して情報はないか?」

 『はい、少しお待ちください』

 オニールはコクトとマーメイのやり取りについて、いつも納得がいかなかった。絶対にマーメイはヘルプセンターの女性オペレータが機械の振りをしてしゃべっていると思っている。落ち着いたらコクトに頼んでマーメイに合わせてもらおうと考えている。

 「コクト、この様子ではルジウェイは武装集団に占拠されているも同然だ、自分らの行動もやがて全て監視されるだろうから早めに手を打たないと身動きがとれなくなってしまいそうだな」

 「たしかに」

 「おっ、きたか」

 コクトはマーメイのカメラのLEDランプが点滅しているのに気付く。マーメイからの調査結果がきたようだ。

 『コクト、武装集団について報告いたします』

 「おう、たのむ」

 『残念ながら武装集団の所属及び組織名等は確認できませんが、ルジウェイ最高評議委員会のレイモン委員の依頼でルジウェイにきているようです、ルジウェイでの地位はルジウェイ最高評議委員会の直轄の部隊となっており、ルジウェイ警察と同じ権限が与えられています』

 コクトとオニールは互いに顔を見合わせた。

 「コクト、レイモンといえばルジウェイ最高評議委員会の代表みたいなもんだろ」

 「たしかに、バーンが失踪している今現在では委員会の委員長も兼任しているはずだが、何でまた武装集団など呼び寄せたんだ?、」

 オニールはボソッと「ルジウェイを乗っ取る気だ、あいつ」とつぶやく。

 コクトはまさかと思ったが、ありえないことだとは思えなかった。人材こそまだ予定の10分の1以下しかいないが、高度に自動化された都市ルジウェイとあまり公開はされていないが都市を防衛するシステムは十分機能する。

 ただそんなことをしたらルジウェイに莫大な金額を投資した他の国が黙ってるわけが無い。しかしここまでやるからには理由があるはずだ。

 「オニール、拘束されているフレアとマイケルが何か鍵を握っていることは確かそうだ、早く探し出して助け出そう」

 オニールはコクトの言葉に対して珍しく真剣に考え込んだ、そして少し頭を振りコクトを見る。

 「二人だけでか?下手すれば俺達も捕まるぞ」

 「うっ」

 オニールに言われコクトは少し戸惑った、早くフレアを助けなくてはと、何も考えないで行動しようとしているが、それは今のルジウェイの体制そのもに歯向かうことになる。それに2人で歯向かうには無謀すぎるし、オニールの言うように逆に捕まってしまうかもしれない。

 「そ、それは、・・・」

 コクトは言葉が見つからなかった。

 しばらく沈黙が続く、それを破ったのはマーメイであった。

 『コクト、監視システムがフレアを捉えました』

 『場所は、高エネルギー研究所です』

 「高エネルギー研究所?、モニタに映せるか」

 『はい、監視カメラの映像を映します』

 装甲車両に備え付けられている通信用のモニタに映し出されたのは、巨大な加速器とそれに付随する電子機械群であった。

 そしてコクトも見覚えのある脳波読取装置とそのシートが数台設置されていた。

 カメラはフレアのいる方をズームアップすると、モニタには二人の軍服を着た兵士に無理やりシートに座らされてヘルメット型のセンサーを頭に着けられるフレアの姿があった。

 フレアは拘束用のベルトで完全に身動きできない状態にされた、まだ自由に動く頭部は激しく抵抗しているのがわかる。しかしそれもシートに固定され、口には白い布らしきものが押し込められ、完全に沈黙させられた。

 コクトは自分の中で熱いものが込み上げてくるのが分かる。

 「あいつら、ゆるせん」と小さく声に出す。

 オニールがコクトの肩に手を載せた「行こう」とぼそっと言うオニールの顔も怒りに満ち溢れていた、単純だが人一倍正義感の強いオニールの心に火がついたようだった。

 「あんな美女になってことをするんだ、俺がこの装甲車でビルに突っ込み助け出してやる」

 「決まったな」

 コクトとオニールは軽く拳で突付きあった。二人とも決心はついたようだ。
 オニールは運転席に座りエンジンを掛け、車両に取り付けられている火器を制御する機器類のスイッチを片っ端から入れ始めた。それと同時に各機械の始動ランプが次々と点燈し「ピン、ピン」と機器が正常に動作したことを知らせるビープ音が鳴り続けた。

 コクトは車両の中央部のコマンダー(司令官)用の座席に座り、所狭しと配置されている機器類の電源を入れ、モニタのチェックを行い一通り準備が整うとオニール向かって親指を立て準備OKのサインを出した。

 オニールは大声で「はっしーん」と叫び装甲車両を走らせた。


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