20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:ルジウェイ 作者:ナルキ辰夫

第6回   ★☆逃走☆★
 朝から快晴であった、もともとルジウェイは降雨量が少ない砂漠の中につくられた都市であるため毎日が快晴と言っていいくらいだが、今日は風もなく太陽が肌にあたるとチクチクと痛い、救いなのはルジウェイは各サークル毎に幅200メートルの緑地帯で囲まれているのと、都市の所々に緑が配置されているため、木陰に入ると以外に涼しさを感じる。むろん湿気もないため、むしむしした暑さとは無縁である。

 フレアは、脳科学研究所3階にあるブレインスキャンチームのフロアにいた、朝から気になるのは研究所の入り口に警察の車両が止まっていて、研究所内がそわそわ落ち着かない雰囲気であったからだ。

 それでも自分には関係ないことだと思い、昨日のテスト結果を報告用書類にまとめるためにワープロでの文書作成に集中した。

 文書作成とはいってもテスト結果の記録や大まかな報告書は、既に昨日の時点でマーメイと解析用システムが作成してくれているので、それを人の視点でチェックし、極端に形式に縛られた記述があればやわらかく解きほぐし、人が読みやすいように手直しするだけである。

 しかし・・、実際には人が読みやすい文書にするのが一番難しいことだとフレアは思っている。

 時々キーボードを叩く手を止め、「ふーっ」とため息をつく、コクトが最後に見せたあの流線型の象形文字とも似たような映像のことを考えていた。

 実はフレアの中にもあのイメージが脳に焼き付けられているかのように存在するからである。

 それは父であるバーンが行方不明になる前日のことであった。

 真夜中フレアはバーンに高エネルギー研究所に呼び出された。真夜中のこともあって、最初はもちろん断ったがバーンの強引な呼び出しに、ただ事ではないと察し、しぶしぶではあったが行くことにした。

 フレアが研究所にきて驚いたのが、巨大な加速器とそれに付随する電子機械群であった。意外に思ったのが見慣れた脳波読取装置とそのシートが数台設置されていたからだ。

 バーンはフレアをシートに座らせるとヘルメット型のセンサーを頭に被せた、そしてフレアに話しかける。

 「フレア私は、あることを確認するために、しばらくルジウェイを離れなければならない、信じられないとは思うがこれは人類の未来に大きく影響を及ぼすことになるはずだ」

 フレアにはまったく何のことか理解できない、質問しようと声を出そうとすると、バーンに拒まれた。

 「いいか、お前に二つのメッセージを託す、一つは開く時の始めのアクセスコードでもう一つは終わりのアクセスコードだ、二つのメッセージは対でなければ意味が無い、万が一私が戻ってこなかった場合でも時がくればそれは必ず必要になるはずだ」

 と言い残すと、巨大な加速器が唸るような音をたて動きだすのがわかる。そしてフレアの頭の中で物凄い閃光が走った。

 フレアが意識を取り戻したのは自分の部屋のベットの中だった、フレアの頭の中にコクトが見せた映像とは少し違うが、流線型の形をした象形文字とも似たような映像が残像のようにこびりついていた、しばらくするとその残像は薄まりそして消えていった。

 それ以来父であるバーンとは会っていない。

 そしてコクトがあの映像を見せるまでは、どんな形であったかすら忘れていたのだ。

「フレア、見て」

 リーが上司らしき席の方向を顎で示す。

 数人の武装した男達が上司とやり取りをしているのが見える。
 上司がフレアの方を向くと、上司が手招きをしているようだった。

 「フレアのことを呼んでいるみたいよ」

 「ええ、いやな感じ」

 男達は、フレアの席に向かって取り囲むように近づいてくる。
 フレアはわざと気づかない振りをして

 「リー、少し席をはずすわ、あとで連絡するね」

 「気をつけて、フレア」

 フレアは中腰でしゃがんで男達に見えないように非常口の方へ移動した、中腰になるとパーティションが邪魔をして男達からはフレアは見えない。少し焦った男達は早歩きで、フレアの席をめざした。

 「おい、ここにいたフレアとか言う女はどこへ行った?」

 リーは耳からヘッドホンを取り「えっ?何」リーは今まで音楽を聞いていた振りをして、知らんぷりを決め込んだ。

 「ちっ、逃げられた、おい探せ」

 リーダらしき男が指示を出すと既に役割が決められているのか男達はそれぞれ持ち場につくように、一人は出入り口をかため残る二人は席の周りを探し始めた。

 そのころフレアは、既に非常口まできていた。音がしないようにゆっくり、非常口を少しあけ開けフロアから抜け、ゆっくり非常口の扉をしめた。

 「ガチャ」と小さな音はしたが男達には気づかれていないようだった。

 フレアは今自分に起きていることが尋常ではないことを強く感じていた。一時的に逃げたのはいいが、いったいあの男達は何者なんだろう、上司が私を引き渡そうとしたのも納得がいかない。

 ただこのままあの男達へつかまることはできないと思った。
 今は安全なところへ移動し、身の安全を確保してから友人のリーと自分の上司へ状況を確認することにした。

 「安全なところ・・・」

 ふと、コクトのことが頭に浮かんだ。

 「そうだ、彼のところななら安全ね」

 知り合ったばかりだから二人の関係を知っている人はリー以外はいないことになる。

 「二人の関係?」

 フレアは少しおかしく思った。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 4997