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作品名:ルジウェイ 作者:ナルキ辰夫

最終回   ☆★最終話☆★
 ルジウェイの最高機関、ルジウェイ最高評議委員会は騒然としていた。委員の一人レイモンの越権行為が発覚し、それに対どう対応するかまったく方針が決まらないのだ。

 無理も無かった大半の委員がはルジウェイにおける自国の権益、又は会社の利益を確保するために派遣されていたからだ。彼等にルジウェイ建設当初の崇高な精神はまったくなかった。行方不明になっているバーンの存在が惜しまれる。

 しかし悪いことだけでもない現場の人間同士の協力体制ができつつあったからだ、彼らはコクト、オニール、ジミーらの行動が知れ渡るに従って、少しずつではあるが自分達が現在住んで働いている都市ルジウェイに対する帰属意識が芽生え始めていた。

 彼らは最高評議委員会の連中を宛てにしても何も変わらない自分達が動けばもっとルジウェイは良くなるのではないかと感じ始めていた。

 コクトはフレアの所属する脳科学研究所にきていた。自分が巻き込まれた今回の事件の真相について知るためである。

 「こいつが、超古代のコンピュータ?」

 コクトはフレアから受け取った黒い鉱石を眺めていた、その吸い込まれそうな美しい漆黒はコクトにでもこの鉱石がただの鉱石ではないことが分かる。不思議である自分の意識が吸い込まれるような感覚におちいる。

 「そう思っている人も何人かはいるけど、実際のところ分からないの」

 「もしかしたら、宇宙人の残したコンピュータ、さては未来人、異次元の世界からと色々候補あるけど、どう思う?」

 「さあ、まるでオカルトの世界だな」

 「ちょっと貸して、いいもの見せてあげる」

 フレアは、特殊な波長をだす装置の前に鉱石をかざしてリーに合図をした。リーが操作盤のスイッチを入れるとコクトは驚いた。

 どこかで見た覚えのある流線型の象形文字とも似たような映像が映し出された。

 「これは、・・・」

 「コクト、これと少し違うと思うけどあなたも同じ様な物を見たことがあるでしょう」
 「ああ、」

 と、コクトはこれ以上言葉がでなかった。

 もっと驚いたのは映し出された映像が動いているのだ、形は変わらないがその周りを無数の点が色を変えなが点滅している、まるで宇宙そのものが入っているようだ。

 「この装置で人間の脳波に近い波長を当てているの、それに反応して動いているでしょう。父から話は聞いていたけど私もこれを見るのは私も初めてよ」

 隣で照射装置の操作をしていた、リーが不思議そうに二人を見て

 「私には見えないよ、二人とも本当に見えてるの?」

 「ええ、リー、私とコクトには認識できるキーとなるパターンが脳に焼付けられているからよ」

 「本当はリーにも見えてはいるけど脳が認識してないだけなの、わかる?」

 「全然、まるで学校の先生みたいねフレア」

 フレアは少し微笑んだ。

 「父が言っていたけどいままで人間が作った全てのコンピュータの能力を集めても、これのもっている能力に比べれば、人間とウイルスの差ぐらいはあるんじゃないかって」

 「えらく極端な例だな」

 「そうね」

 「まだ人類の文明はこれを解析できるレベルまで到達していないらしいの」

 「ただ無理やりだけど分子、又は原子レベルでこの鉱石にアクセスすることで、急速に解析が進展したらしいのだけど」

 「そこで、高エネルギー研究所が関係してくるわけだ」

 コクトは少し理解できたような気がした。

 「あたり」

 「レイモンが早合点したまではなんとなく私にも分かるのだけど、・・・」

 「マーメイ、聞いてる?」

 フレアは突然声を大きくしマーメイがこちらを見ているだろうカメラを向いた。

 『・・・・』

 まるでマーメイが無視しているのではないかと錯覚するぐらい、何の反応も無かった。数秒後にマーメイが接続しているカメラのLEDライトが点滅しはじめた。

 『はい、フレア聞いております、何でしょうか?』

 マーメイが人工的に作られた女性の音声でこたえる。

 「あなた、何か知っているでしょう?」

 フレアはマーメイが単なる会話ができるコンピュータシステムだとは思ってなかった。
 バーンによってこの鉱石の持つごく一部の仕組みがマーメイに移植されているらしかったからだ。

 それに時々わざと機械らしく振舞っているように感じることがしばしばあるからかもしれない。

 『残念ながらフレア、貴方の質問に対する、答えは持ち合わせておりません』

 あいかわらず、マーメイは機械的に言葉を返すだけだった。

 フレアはコクトの方を向いて、両手を広げ肩の方まで上げて、

 「マーメイも分からないんだって!とても、あやしいけど、・・・」

 フレアはどうせ無駄と分かっていたので、マーメイをこれ以上追求するのはやめにした。

 「っく」

 コクトは笑いをこらえた、機械に性別はないがマーメイの合成音声は女性の声を擬似生成したものであるためついマーメイを女性と思ってしまう、フレアと喧嘩でもし始めないかと、ありえないことを想像してしまったからだ。

 「なによ」

 フレアがコクトの横っ腹を軽く突付いた。

 「うっ、ごめんフレア」

 それを見ていたリーは二人に見せ付けられているような気がして膨れ顔でつぶやく。

 「ああ、いいなー」

 マーメイが接続しているカメラのLEDライトが点滅しはじめた。

 『コクト、ジミーから呼び出です、近くのモニタにつなぎます』

 「ああ頼む」

 『おーい、コクト、こんなところにいたか、探したぞ、とはいってもマーメイに頼んだら直見つけてくれたがな』

 『俺もいるぞー!』

 オニールがモニタに割り込んだきた、ジミーと一緒にシュミレーションルームにいるらしかった。

 「あれ、ふたりともどうした?」

 『実はな、コクト』

 オニールがしゃべろうとしたが、ジミーが無理やりオニールをどけ、オニールに変わって話だした。

 『無人戦闘機のテスト飛行をしているんだ、今そちらの上空に向かわしたから外に出て見てくれ、偵察飛行テストでターゲットはお前にしたんだ、上空から写真を撮ってやるから、協力してくれ!』

 「おもしろそうね、行きましょうコクト」

 フレアは乗り気である。

 「分かった、いまから外に出るよ」

 「私は残る、もう見せ付けられるのはごめんだから」

 リーはふてくされた振りをしてふたりに気を使う。

 「ここからが早いわ、」

 フレアがつい最近自分が拉致されたばっかりの非常口へコクトの手を引いて案内する、非常階段を上へ一階分駆け上がるとそこはもう研究所の屋上であった。

 二人が研究所の屋上に出て見ると西の方からジェット機の音が聞こえてきた、振り向くと4機の無人ジェット機が猛スピードでコクトとフレアの真上を通過した。

 続いて内外側2機が左右に離れ、それぞれ左の機は左へ半円を描くようにスモークを吐きながら飛行しだした。右の機は右へ半円を描くようにスモークで線を引きながら飛行していく。

 「わぁーすごーい!あれもマーメイが操縦しているの?」

 「いや、実際は遠隔操作しているんだが人間が把握できない現場での細かい操作はマーメイと専用のシステムが連携してコントロールしているんだ」

 いつの間にかフレアの腕はコクトの腕にからまり頭はコクトの肩に寄り添っていた。

 一方シュミレーションルームでは、大騒ぎである。

 「おかしい!システムが暴走したぞ!!」

 東の空には大きな赤と緑のハートマークが描かれていた。

 おわり。


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