高エネルギー研究所の正面玄関は無数の銃跡で穴だらけになっていた。そこにはコクト、フレア、ライエン、レイモン、と数名の兵士がいた。他の兵士らは周りの後片付けで忙しそうに動き回っている。
「コクト、すまんこいつが勝手にしたこととは言え君を裏切ってしまったようだ」
ライエンはレイモンの首根っこを押さえ、コクトに差し出すようにレイモンの顔をコクトに向けた。
レイモンは、ライエンに向かって叫び始めた。
「ライエン、お前は分かっているのかこいつがコクトだぞ!、こいつが持っている終わりのアクセスコードさえ手に入れば全が揃う、我々の思うがままだ!早くそいつとフレアを本国につれて帰ろう。その前に私をないがしろにするな、手を離せ!」
レイモンはまるで子供のように叫び暴れだした。
「アクセスコード?何のことだ?」
コクトはフレアを見た。
「あとで教えてあげるわ、コクト」
フレアはやさしく答える。
「レイモン、我々は拘束されないだけましだ。な、そうだろコクト」
「えーと、僕は警察じゃないからね」
「警察官はまだあそこで伸びているし、引き上げるのなら今のうちだと思うよ」
と、歩兵ロボットが担ぐ担架に乗せられてるオニールを指差す。
ライエンは片方の眉をピックと上に上げ「その通りだ」と言うと、コクトに握手を求めた。
コクトはライエンと握手を交わす。
「コクト、私が言うのも変だが、君とフレアはルジウェイを取り巻く巨大な陰謀にいやおうなしに巻き込まれることになる、くれぐれも用心することだ、検討を祈る」
「ああ、」
と答えるが、コクトにはさっぱり何のことだか理解できていない。フレアが知っていそうなのであとでゆっくり聞こうと思った。
ライエンはフレアにも握手を求めた、
「フレア、我々の君へのアプローチは間違っていた、苦しめてすまなかった、あとコクトと間違われた彼にも謝ってくれ、ゆるしてくれるとは思えないが・・」
ライエンは目でオニールと一緒に歩兵ロボットが担ぐ担架に乗せられてるマイケルを見た。
「ええ、大佐あなたも、お元気で、」
「それと、これは君とコクトへのプレゼントだ」
と、言うとライエンはレイモンには見えないようにして黒い鉱石をフレアの手に託した。
「こ、これは」
フレアが話そうとするとライエンは一指し指で口をおさえた。
コクトはそれを見てフレアに「あとでこれについても教えてくれよな」と小さい声で伝えた。
「では大尉、うるさい連中がかぎつけてこないうちに引き上げるか」
「イエッサ、」
高エネルギー研究所の中庭にはライエンの母国からきた大型ヘリが1機駐機していた。
その周りを囲むように、歩兵ロボットが整然と取り囲んでいる今回の場合は、護衛しているといった方がいいだろう。
総勢30人の武装した兵士と武装はしていないが軍服を着けた兵士がヘリの後部ハッチへからヘリへ次々と乗り込んでいく。
最後にライエンが相変わらずレイモンの首根っこを捕まえたまま乗り込んでいった。
ハッチを閉めるための油圧装置の音が聞こえる、徐々にハッチは閉まっていった。
ライエンはコクトとフレアの方を向くと軽く敬礼をした。
コクトも敬礼をしようとしたがふだんやったことがないので、中途半端に右手をあげただけだった。それをみたフレアは少し笑った。
ヘリは轟音を立て上昇し、ある程度の高度を保つとルジウェイの西の砂漠へ向かって飛び立っていった。
ルジウェイの西側には約500キロも砂漠が続き、砂漠を抜けるとそこは大西洋となっている。空母がそこでライエン達を迎えに来ているのだろうと、コクトは思った。
コクトとフレアの後ろからオニールがタオルで頭を抑えながら、とぼとぼ歩いてきた。 「もう、いちゃたのか?」
「ああ、」
携帯端末のスピーカーからジミーが叫んでいるのが聞こえる。コクトは耳に装着している携帯端末のスピーカーを外部出力に切り替えた。するとジミーの大きな声が聞こえた。
『コクトー!返事しろー、俺だジミーだ』
「ああ、どうした?」
『おお、やっと繋がったか、そうそうコクトこいつらにやらせることは無いか?』
ジミーの言うこいつらとは、もちろん彼らが動かしている歩兵ロボットと無人装甲車、そして無人ヘリのことを指している、。
『だんだんこいつらの扱い方の要領が分かってきたんだ、シュミレーションルームにいる連中もまだ物足りなさそうだぞ、それと無人の戦闘機もあるが試していいか?』
フレア、コクト、ジミーの3人はしばらくお互いを見た後、笑い出した。
コクトも彼らの気持ちが分かるような気がした、やっとゲームの要領が分かってきて面白くなってきた子供のようだ。
「戦闘機はまだやめた方がいい、それよりもルジウェイのメインストリート行進して、格納庫へ帰るってのはどうだ?」
ジミーは少し残念そうだったが
『そうか、戦闘機はだめか・・、よしゃそれでは派手に格納庫へ向かって行進することにするか』
ジミーは沿道にいる人たちが度肝を抜かれる様子を想像すると、わくわくしてきたようだ、はりっきてシュミレーションルームにいる連中となにやら相談し始めた。
もちろんその後、ルジウェイのメインストリートが大渋滞になって、大目玉をくらう羽目になるのだが、まぁそれはしかたがない。
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