コクトは白い広大な空間の中にポツンと立っていた。空間の広さは見当もつかない、白い宇宙空間といったところだ。しかし周りには太陽も無ければ惑星もない、星らしき光の存在も感じられない。
しばらくするとコクトの目の前に巨大な流線型の形をした象形文字とも似たような映像が浮かび上がってきた。流線型の象形文字の真ん中に瞳を象るように丸い空間が開いていた。まるで別の世界がそこにあるように。
コクトは、巨大な流線型の存在が一瞬、まばたきをしたように見えた。
その巨大な流線型の存在はコクトに何かを伝えたがっているようだ、存在は強く身震いすると大量の白いエネルギー波をコクトに送ってくる、不思議にコクトの体はそのエネルギー波をどんどん吸収してゆく、コクトの体は無限に送られてくるエネルギー波を吸収すればするほど密度が高まり凝縮され光出し始めた。
コクトは自分の存在が無くなり別のもに変わっていくような感覚に陥ってきた。
「自分が消えていく、・・・」
「いやだ!」
恐怖と不安の感情がコクトを襲う、しかし逆の「このまま別の存在になりたい」との誘惑の感情も同時にコクトの胸の中を支配してゆく。
無限に続くと思われたエネルギー波、恐怖、不安、誘惑の複雑に入り混じった不思議な時空間がピッタと停止した。
ふと隣をみるとフレアがいた、フレアはコクトの右手に自分の左手を絡ませるように滑り込ませ強く握った。
「コクト、彼等に負けてはだめ」
「戦いましょう」
光を発していたコクトの体から少しずつ光が消え元の姿に戻ってきた。
巨大な流線型の存在は怒るかのように身震し、さらに強くエネルギー波を強く送る、しかし怒りの色なのか、白いエネルギー波は赤になりそして紫になり終には邪悪な雰囲気を漂わす暗黒の黒いエネルギー波になってコクトとフレアに襲い掛かってくる。
フレアはコクトの方を向いて微笑む。
『大丈夫、私達はそんなに弱くないから』
するとフレアの体から青く澄み切った無数の光の帯が照らし出され、暗黒のエネルギー波を切り裂いて行く。
暗黒の黒いエネルギー波は、青く澄み切った無数の光の帯の中心にいるコクトとフレアに近付くことができない。
次第に暗黒の黒いエネルギー波は弱まり巨大な流線型の存在は薄くなって消えていった。白い空間も消えコクトとフレアの周りには無数の星が煌く銀河が広がってゆく。
「すごい、星がいっぱいだ」
コクトは両手を広げ自分の周りに広がる銀河に感動しながら見渡した後、フレアの方を向いた。
「フレア、あの目の形をしたやつはなんだ?」
「あれ、君は!?」
コクトの隣にはフレアではなく別の女性が立っていた。真っ直ぐ綺麗に伸びた亜麻色の髪をしており目は吸い込まれるような深いブルーであった。何故かコクトはその子を知っていた。
「マ、マーメイか?」
彼女はコクトを見ると深くゆっくりと頷く。
いつの間にかフレアとマーメイが入れ替わっていたのだ。びっくりしたコクトは「何で!?」と頭が混乱する。
するとスーと気が遠くなる感覚がコクトを襲う、物凄いスピードで意識が落ちていく、ブラックホールにでも吸い込まれているようだ。
・・・
「おう、コクト目が覚めたか」
オニールである。
「ここは?・・」
座席から少し首を上げ、キョロキョロ周りを見渡す、まるで昨日のことが全て夢だったようなしぐさだ。
「これで顔をふけよ」
とオニールが冷たいタオルをコクトに投げた。
それを受け取り顔を拭きながら、少しずつ昨日の記憶がよみがえってくる、その代わりさっき見た夢のことはゆっくり記憶から薄れていった。
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