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作品名:ルジウェイ 作者:ナルキ辰夫

第14回   ★☆威圧☆★
 太陽は完全に西の砂漠に沈み、砂漠特有の冷え込みが始まった。都市ルジウェイの中にいるとわ言っても、周りは広大な砂漠である、寒さの影響はさけられない。

 高エネルギー研究所は外からはまるで誰も居ないかの様にビル内の電気と外灯が消されていた。

 内部の様子を知られないように、ライエンの指示で消しているのだろう。しかしところどころで人の気配がする。迎え撃つ体制は既にできているようだ。

 研究所内ではライエン、レイモンらがサイバー部隊からの報告を待っていた。脳波読取装置の横には応接室にあるようなソファーがありそこにはフレアが座っていた、いや座らされていた。

 手錠とか縄では拘束されていないが兵士二人がフレアの後ろに控えていてフレアに自由はなかった。

 マイケルは脳波読取装置のシートに座ったままである。脳をスキャンされた時の影響が大きかったのか意識が朦朧としている様子だった。

 フレアの前をレイモンがブツブツつぶやきながら行ったり来たりうろうろしていた、サイバー部隊が「終わりのアクセスコード」を持った人物を連れてくるのを今か今かと待ちわびているのだ。

 「レイモン、いいかげんにあきらめたら」

 「私の父は今の技術では無理と判断して他の方法を模索していたのよ」

 フレアには父バーンとレイモンが何をしようとしているか理解していた、バーンが行方不明になってから数日後にバーンからの音声メールで問題の「黒い鉱石」について詳しく知らせてきたからだ、そして自分は「始まりのアクセスコード」しか持っていないことも、そしてもしかしたら「終わりのアクセスコード」を持った人物が現れる可能性があることも、それはレイモンによって実現されてしまった。

 コクトが「終わりのアクセスコード」を受け取ったと思われる時間に、自分にも強烈な衝撃で伝わったことを覚えている、コクトと初めて会った二日前のことだ。

 そしてバーンの音声メールではまだそれを使う時期ではないと警告する言葉で終わっていた。

 フレアが音声メールを聞き終わるとマーメイによって音声メールは自動的に削除されバーンの言葉は残っていない。バーンからの指示でそうしたとマーメイは言っていた。

 レイモンはフレアを哀れむように眺めた。

 「バーンは臆病なだけさ答えが目の前にあるのに、怖くてそれを取り出そうしなかっただけだ。こいつのためにどれだけの人・物・金そして多くの時間が費やされたと思っているんだ!」

 フレアは拳を握り立ち上がろうとしたが後ろにいた兵士に両肩を掴まれソファーに無理やり座らされた。

 「貴方は人を殺してまで、そいつの情報がほしいの!?」

 レイモンは「フン」と鼻で笑いフレアの言葉をを無視した。

 監視室では受話器を持っている大尉がライエンに向かって叫んだ。

 「大佐、サイバー部隊からの報告です」

 彼の持っている受話器は通信兵が背負っている野戦用の通信機器につながれていた。

 「うむ聞こう、スピーカに切り替えてくれ」

 大尉はスピーカのスイッチを入れ受話器を無線機器に戻した、監視室いる人間ならサイバー部隊とライエンとのやりとりを聞くことができる状態になった。

 『大佐、残念ながら兵器をコントロールしている連中の所在はまだつかめません、しかし不思議なことにセキュリティシステムは正常に機能しているのですが、無人戦闘システムはセキュリティシステムを無視して勝手に動いています。レイモン所長から頂いた権限でも止めることは不可能です』

 「コンピュータ毎、物理的に破壊することはできないか?」

 『不可能です大佐、セキュリティシステムによってコンピュータルームは厳重に守られていて、我々では手が出せません。レイモン所長にこちらへ来てもらい直接空けてもらうしかありません』

 「確かに対テロ用に物理的には十分対策はされていると聞いた、最高の権限を持っているレイモンしか直接空けることはできないか、・・・。まったく融通の利かない仕組みを作ったもんだ」

 『いい知らせもあります』

 『レイモン所長から依頼されていたメッセージを受け取った人間が分かりました、マーメイの通信記録にしっかりとそいつの情報がありました』

 「通信記録が残っていたのか?」

 『いえ、消されていましたが我々の持ってきた復活用のプログラムでどうにか復元することに成功しました』

 「で、そいつの名前と所属は?」

 『ジャン・フィデル・コクトです大佐、所属はそちらにいるマイケルと同じ都市管理局の通信監視室に所属しています』

 「でかしたぞ、ご苦労であった。すぐにレイモンをそちらへ今すぐ送ることができないが引き続き無人戦闘システムを停止させる方法がないか調べてくれ、以上だ」

 『了解、大佐』

 「プッ」と通信が切れる音がした。

 まだ任務を遂行できる可能性が残っていると感じたライエンの目が光った、まだ勝負はついていないと。

 「大尉聞いてのとおりだ、ルジウェイ警察に配置している部隊に連絡しジャン・フィデル・コクトの身柄を確保させろ、ルジウェイ警察にも協力させるんだ。いそがせろ!」

 「イエッサ!」

 大尉は素早く受話器を取り大佐の命令を部隊に伝え始めた。

 ライエンはレイモンのいる加速器コントロールルームを見下ろせるところまで移動し、連絡用のマイクを口に近づけてマイクのスイッチを入れた。

 『レイモン、終わりのアクセスコードを持っているやつが分かった、今そいつの身柄を確保する指示を出したところだ』

 レイモンは監視室の方を見上げた。

 「ほんとか!?、誰だ」

 『都市管理局に所属するジャン・フィデル・コクトだ、知っているか?』

 思い出そうと腕を組んで目をつぶるが直ぐに。

 「いや、知らんな」

 フレアはピックと反応した、そしてあわてて回りに気付かれていないことを確認した後、自分の足元を見るようにうつむいた。

 「コクト、・・・・」

 『レイモン、外にいる無人兵器どもがいつ攻撃してくるか分からない、最悪の時も考えて直にでも撤収できるように準備はしておいてくれ』

 「分かった、大佐、できるだけそうならないようにお願いしたい」

 ライエンはレイモンに軽く敬礼をしてマイクのスイッチを切った。

 「大佐、ゲートからの連絡で先ほど上空にいた無人ヘリが姿を消したそうです」

 レイモン大佐の頭の中で「ピーン」と小さな旋律が走った。

 「さっそく来たか、」

 「大尉、外の連中に伝えろ!やつらが動き出す前兆だ、くるぞ!!」

 今まで沈黙していた20台の装甲車のライトが一斉に点灯し、高エネルギー研究所を照射した。研究所が眩しい光でライトアップされるとあちらこちらで、悲鳴にもにた「うっ」と叫び声を押し殺したような悲鳴らしき音が聞こえた。何人か暗視カメラをつけた状態だったのだろう。

 装甲車に装備されている機関砲が音をたて高エネルギー研究所の方向をゆっくり向いた。全装甲車が同時に同じ動きをするため傍から見ると訓練の行き届いた操縦士が芸術的な操作をしているのだろうと、誰でも思ってしまう。

 研究所の方からはライトに邪魔されて見えないが、全車両の後ろの観音開きのドアが開いた。無人装甲車には歩兵ロボットが4体ずつ装備されている、大きさは人間の子供ぐらいで4本の足が付いており4足歩行で人間と同じようにあらゆる場所を移動できる。

 歩兵ロボットには自動小銃とロケット弾4発が備え付けられていて人間の歩兵の補助的役割ができるように作られていた。

 しかし歩き方はお世辞にもカッコいいとは思えない多少蟹股ぎみだ。

 「見てみろ、こまいのが出てきたぞ、」

 研究所を守っている、兵士が指をさす向こう側で4体ずつ隊列を組んで、歩兵ロボットが装甲車の前に展開しはじめた。20台の装甲車から降りた80体の歩兵ロボットの動きはちょいとした深夜のマスゲームであった。

 歩兵ロボットの展開が終わったと思ったら、全装甲車のライトが消された。装甲車両のライトで眩しいほどにライトアップされていた研究所が一瞬のうちに真っ黒な夜の闇に溶け込んだ、しばらくし目が暗闇に慣れてくると満点の星空の光が研究所の輪郭を浮かび上がらせた。

 その周りでは無数の小さく赤い光が、明かりのついていない研究所を取り囲む様に整然と並んでいる。歩兵ロボットの出す赤外線照準器の光であった。


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