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作品名:ルジウェイ 作者:ナルキ辰夫

第11回   ★☆拷問☆★
 ふー、やっと準備が整った。

 バーンお前の妨害工作もこれまでだ、お前は「始めのアクセスコード」を自分の娘に記憶させたが、「終わりのアクセスコード」を取り出し損ねた、というより一人の人間には始めと終わりのアクセスコードを記憶させることが不可能であることに気付いたんだったな。

 まぁ、お前の部屋にあった資料にそう書いてあったから分かったのだが。

 しかも途中でほったらかして行方不明になりやがって、おまけに俺が苦労してやっと終わりのアクセスコードの取り出しに成功したと思ったら、予め予測していたのかマーメイに細工をして私が取り出したアクセスコードを抜き取り、どこの馬の骨か分からないやつの脳に記憶させるとは・・・。

 まったく、本国からサイバー部隊を呼び寄せて徹夜でやっと終わりのアクセスコードを記憶したやつを探し出せたからよかったものの、ここ2、3日は生きた心地がしなかったぞ。

 あとはこいつら二人のアクセスコードを利用して、こいつの中にある情報を全て取り出してやる。その時が人類の新しい歴史が始まる瞬間になるだろう。

 但し、それを利用するのは私だがな「フフフ、」バーンお前の一生を掛けた研究成果は私が有効に利用してやる、レイモンは誰にも気付かれないようにニャリと微笑んだ。

 レイモンは自分が持っている黒い鉱石を真空発装置の蓋を開けその中にしっかりと固定した。

 そして指示を待っている脳波読取装置のオペレータに向かって顎を上に向けた、「やれ」との合図である。

 オペレータは、一度生唾を飲み込んでからフレアとマイケルの脳波が映し出されているモニタに備え付けられているキーボードの実行ボタンを押した。

 フレアに最初の衝撃が走った、動けないように縛られている体が「びくっ、びくっ」と電気ショックを受けたように反応した。口は布切れで猿轡をされているので叫び声は聞こえない。しばらくするとフレアが気を失ったようにぐったりした。

 同様にマイケルも同じように反応しぐったりとした。

 レイモンが加速器のオペレータに向かって「よーし、加速器を始動させろ」と指示すると、加速器制御装置の横にいるオペレータがレバーをゆっくり下に下げた「ブオーン」と重低音がフロア全体に響き渡り加速器の状態を示す無数のLEDランプが激しく点滅し始めた。

 激しく点滅していたLEDランプが落ち着き始めるとレイモンは再び加速器のオペレータに向かって「速度が安定したら陽子ビームを鉱石にあてろ、確実にだぞ」と指示する。

 オペレータは加速器制御装置の横一列の配置されているスイッチを左から一つずつ順々に入れていった。フロア全体に響く重低音の音の中に「パッチ、パッチ」と電気が感電しているような音が混ざり始めた。

 レイモン所長は、真空発生装置の隣に設置されている解析用装置を操作しているオペレータに向かって支持を出す。

 「中央のモニタに鉱石からの情報を映し出せ、世紀の一瞬をみんなで共有するのだ」

 「はい、所長」

 オペレータはそう答えると、自分の目の前にあるモニタの映像をフロアの前面にあるメインモニタに切り替えた。

 しかしメインモニタはまだ砂の嵐状態だ、まだ信号がきていないようだ。

 「鉱石に、開始のアクセスコードを送信しろ」

 レイモンがフレアとマイケルの脳波読取装置を操作しているオペレータに指示をすると、オペレータはフレアの脳波が映し出されているモニタのキーボードを操作し最後に実行キーを「えぃ」と声を出し叩いた。

 フロア全体に「ブーン」と重低音の音が不気味に鳴り響きフロア全体に緊張が走った。
 レイモンは「くるぞ」とつぶやくとメインモニタに視線を釘付けにした。

 メインモニタには砂の嵐に代わって、大量の無秩序な記号の羅列が大量に表示され始めた。

 「おい、電圧を上げろ」とレイモンが脳波読取装置のオペレータに小声で指示する。

 オペレータ電圧を上げていくと、メインモニタが真っ白になり、そして少しずつ流線型の輪郭が現れ始めた、それは人類が始めて見る未知の文明の情報である。

 「おおー、でたぞ」周りから歓声が上がった。

 輪郭が徐々にはっきりし始めた、メインモニタに映し出されているのは、流線型の目らしい形をしいた映像であった。それはエジプトの墓に描かれている人物達の黒く淵ぶられた目を連想させる映像ではあるが、もっと別の文明を匂わせるものだった。

 「これは、目を表したものでしょうか?所長」オペレータの一人がレイモンに質問するがレイモンにもわかるはずがなかった。

 「さ、さあな」

 「それより、データはちゃんと取れているか?」

 「はい所長、順調です」

 真空発生装置の隣に設置されている解析用装置のモニタには鉱石から流れ出す大量のデータが保存用ディスクにどんどん流れている様子が映し出されていた。

 フロアの上部にある監視室の窓からその様子をライエンが見ていた、レイモンの方がうまく行っているのを確認したのだろう、しばらくすると監視室の窓からライエンの姿が見えなくなった。

 フロア全体に響く重低音の音の中に「パッチ、パッチ」と電気が感電しているような音が安定して聞こえていたのが急に不規則に鳴り始めた。同時にメインモニタの映像が乱れ始めた。

 「どうした、安定させろ」

 レイモンが叫ぶ。

 「だめです、フレアの脳波が乱れ始めました」

 脳波読取装置のオペレータも少しパニック気味である。フレアは体中をベルトで固定されはいるが、手の指が苦しそうに動いている。

 「所長システムがこれ以上耐え切れません!!、このままでは暴走します」

 真空発生装置の隣に設置されている解析用装置のオペレータがレイモンに大声で知らせる。

 「あわてるな、終わりのアクセスコードを送信しろ」

 「あっ、そうだったさすが所長です」

 脳波読取装置のオペレータは直にマイケルの脳波が映し出されているモニタのキーボードを叩き「おさまれ」と声を出し実行キーを押した。

 しかし「パッチ、パッチ」と電気が感電しているような音は激しくなるばかりで収束する気配がしない。

 それどころかマイケルの体が激しく痙攣し始めた、フレアの苦しそうな様子とは明らかに違う動きだった。

 レイモンの顔が青ざめ始めた、どういうことだバーンの話だとこいつの暴走は終わりのアクセスコードでコントロールできると言っていたが、間違いだったのか!

 メインモニタの映像に無秩序な記号の羅列が表示しては消え、再度表示されては消えと、明らかにシステムが暴走していることが分かる状態になった。

 「所長システムが暴走してます、このままでは記録用のディスクがパンクします」

 解析用装置のオペレータが叫ぶように報告するがもはや打つ手がなかった、鉱石から吐き出される未知なる文明の大量の情報は数百テラバイトのディスクを一瞬にして食いつぶしてしまった。

 そして数秒後、システムの破壊を防ぐための安全装置が始動し始めた、加速器から鳴り響いていた重低音の「ブーン」という音が徐々に小さくなっていった。

 「パッチ、パッチ」と感電しているような音が聞こえなくなったところでフロアに配置されている各機器が「シュー、」と音を立て順次ダウンして行く、システムの稼動状態を確認するLEDランプ群は完全に沈黙したのだった。

 フレアとマイケルもシートに座ったままぐったりと身動きする様子もなかった。

 「所長、この男は終わりのアクセスコードを持っていません」

 脳波読取装置のオペレータは、マイケルから出る脳波は通常の範囲を超えるものではなく、電圧を上げてもマイケルの脳は苦痛を感じるだけでフレアのように特定の波長の脳波を発生させなかったことに気付いていた。

 「人違いか?」

 「おそらく、」

 「くっそ!どいつもこいつもまったく、・・・」

 レイモンは地団駄踏んで悔しがる、誰一人として事の重大さが分かってないような気がしてならなかった。

 「おい、データセンターでのんびり寛いでいる連中にこのことを伝えろ、そしてマーメイからメッセージを本当に受け取ったやつを探してここにつれてこいと言え!」

 「分かりました、所長」

 「まったく何がサイバー部隊だ聞いてあきれるわ、この役に立たない連中を連れてきた責任はライエンにとってもらうぞ」

 レイモンは監視室を見上げたが監視室の窓にはライエンの姿はなかった。


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