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作品名:果てしなき清流のように 作者:藤田

第3回   第3回 昆虫裁判 
 ◇ 昆虫裁判 ◇

山椒の葉はアゲハの幼虫に食べられた。
カマキリおじさんは
じいっと、それを見ていた。
「なんとも可哀そうや、なんて残酷な話
やないか。許せん!」
カマキリおじさんは
鎌を振りあげて、そう叫んだ。
「山椒の葉は、ほんとに可哀そう!」
エンマコオロギの幼虫は
ほろりと涙をこぼした。
カマキリおじさんは
「仇はわしがとったる」
と、 コブシをかためた。
カマキリおじさんは入念に鎌を研いだ。
ぴかぴかと光る鎌を振りあげて
カマキリおじさんは
貪欲なアゲハの幼虫を薙ぎたおした。
悲鳴をあげたアゲハのこどもを
カマキリおじさんは
テンプラに揚げ、みんな食べちゃった。
「これでよし。仇はとったし、満腹だし」
カマキリおじさんは
ごろりと横になって昼寝と決め込んだ。

それから一週間が経った。
アゲハ王国のクロアゲハ警察は
カマキリおじさんを逮捕した。
逮捕の理由は殺虫罪ということだった。
カマキリおじさんは
クロアゲハ検察庁に送検されちゃった。
そして
クロアゲハ王国・検察庁の
捜査検事はカマキリを訴追した。

カマキリおじさん殺虫罪事件の
第1回公判期日が開かれた。
クロアゲハ王国・検察庁の
公判検事は
冒頭陳述でカマキリ有罪と主張した。
訴因は
アゲハ王国刑法の殺虫罪だとさ。

裁判官は
黒褐色の法衣を纏ったエンマコオロギ
弁護人は
黄金の胸章きらめくヒマワリの花。

争点は
カマキリに「生存権」ありや。
カマキリにも
虫族としての「生きる権利」はあるか。

鑑定人は
国際法の権威
あらゆる花王国を
花から花へと
渉り歩きのミツバチ博士

それから一か月が経った。
ミツバチ博士の鑑定結果がでた。
カマキリに
虫として生きる「生存権」ありということだった。

弁護人
ヒマワリの花の
最終弁論がなされた。

やがて
判決言い渡しの期日となった。

法廷における
傍聴席は
山椒族の若者たち
アゲハ族の母親たち
カマキリ族の老人たち
コオロギ族や
ミツバチ族など
傍聴人で溢れるばかりだった。
コオロギ裁判長は判決を言い渡した。
判決主文
「カマキリは無罪」
判決理由
虫を食するは
カマキリが生きるための
自然法的な権利であるとさ。
その虫固有の
生まれつきの本能にもとづいて
その本能のままに
ほかの虫を食することは
自然界の
非難に値しない摂理だとさ。















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