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作品名:自分が男でなくなる瞬間 作者:藤田

第33回   第33回  ゴールデン・マルチオーガズム
第33回  ゴールデン・マルチオーガズム
 ーその1ー


○ 羽村堰
  玉川上水に沿って展開される桜並木の桜は満開になっている。
  桜の古木の枝が垂れ下がり地面すれすれでそよ風に揺れている。
○ 花園家の門前
  白光がする生地に黒砂を散りばめた花崗岩の門柱に[弁護士 花園]と金文字で
 刻まれた表札が浮かびあがる。
  門柱の奥には広い芝生の庭が垣間(かいま)見られる。

○ 花園家の応接室
  かなり広いスペースの応接室の奥は乳白色の絹を張った衝立で仕切られ、書斎
 になっている。
  応接室の表ドアを開けると豪華な応接セットが配置されている。  
  奥のドアが開いて、パジャマ姿の花園弁護士がが入ってくる。
  花園弁護士は絹張りの衝立の脇を抜け、でんとしたデスクに向かった。
  デスクのうえには一冊の書籍がおかれている。
  そのブルーの表紙には「性行動の科学的研究」という金文字が刻み込まれていた。
「わしあ、、これまで何度も、藤原君の著書を読んでみたんだが、まだ、読み残しが
 あるはずだ。今日はどこを読むことにするか」   
 花園は藤原の著書に手をかける。すると栞を挟んだページが開いた。
「わしの留守中に佐保子が盗み読みをしたらしい。あいつったら」
 花園は栞を摘まみページに視線を移した。すると第7節 ゴールデン・マルチオー
ガズム、という聞きなれないタイトルに魅(ひ)かれた。
 花園はそのタイトルから読みはじめた。


 #  藤原教授の著書  # 


          第7節 ゴールデン・マルチオーガズム
                  −シングル型性行為の総括ー

 ここまでは、人間の[シングル型性行為]について男女別に考察して、そのセック
ステニックを実証的に詳述してきた。
 最後に、その総括として男女に共通した最高レベルの性的快感を満喫するための
性行動の技術を述べておきたい。
 そのタイトルは[ゴールデン・マルチオーガズム]としよう。
 ◇ 前戯行為
   適温に調節された密室でゼネラルストリップになる。
   直立して両足を開脚し、上半身をやや前傾し、いくらか腰をおとし、ピスト
  ン運動に適した基本姿勢になる。
   左右の手首を下腹部の臍の両脇に宛がう。宛がった左右の手首で胸部の乳首
  を目標として下腹部から胸部にかけてソフトに撫であげてゆく。
   その撫であげと並行して腰を使い大気の[エアーヴァギア]ないし[エアーペニ
  ス]にへばりつく。すると起ったままの姿勢でパートナーにやさしく抱擁された
  ときのようなソフトな快感がふんわりと湧きはじめる。
   その性感を感じたところで腰をひき、左右の手首は下腹部の臍の両脇の元の
  位置にもどしておくことにする。
   この愛撫性行動が前戯行為のパターンとなる。おなじ要領で愛撫性行動を繰り
  返してゆく。すると、しだいにぞくぞくするような性感が全身にゆきわたってゆ
  く。この場合に、はあはあと息を弾ませれば性感のアップはより急速になってく
  る。このように[呼吸を弾ませること]は、すべての性行動に共通した、性感昂進
  の基本的なテクニックであることが、モニターによる実験例で実証されている。
  たとえば射精しそうになったとき、射精をさらに促進するためには息を弾ませる
  ことが効果的である。
   こうして性感の昂進にともないペニスの勃起やクリトリスの膨張も自覚される
  ようになってくる。さらに乳首の勃起も自分で感得することができる。
   このパターンで50回ほど愛撫性行動を繰り返してゆけば、ペニスの亀頭部は
  [カウバー腺]から分泌された透明な分泌液で潤ってくるし、クリトリスも勃起し、
  [真正ヴァギナ]には愛液が分泌され湿潤になってゆくのが自分でも感じ取ること
  ができる。
   ここまで愛撫性行動がすすみ、性感も昂進してくれば、[前戯行為]としては充
  分である。
   そこで[シングル型性行為]の本番にすすむことになる。

   * [ゴールデンマルチオーガズム]に向けた[シングル型性行為の本番] *

◇ ワンステップ ◇
  この本番は、ワンステップからはじまり、ツーステップを経てスリーステップに
 至り[ゴールデンマルチオーガズム]の絶頂に登りつめるというプロセスを辿ること
 になる。
  まず起ったままの性行動における基本姿勢を構える。
 (1) [A型の体位]
左右の手首を左右の[乳首の斜め下]に宛がい[エアーヴァギナ]ないし[エアー
  ペニス]に向かってぐいとへばりつく。これで男性の[真正ペニス]は[エアーヴァ
  ギナ]に挿入されたことになり、女性の[真正ヴァギナ]は[エアーペニス]を受け
  入れ食い縛ったことになる。言い換えれば[真正性器]と[疑似性器]とが結合され
  たわけである。
   これで性器は結合されたから、ここからはピストン運動にはいることになる。
   腰を使って[大気]にへばりつきながら、左右の[乳首の斜め下]に宛がった左右
  の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けソフトに擦りあげてゆ
  ゆき、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん]と1回の快感を感じたところ
  で腰をひけば、[トン]と1回の快感が反復される。その反復快感を感じたら左右
  の手首は[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
   これが[1拍子]のピストン運動である。
   ここで[2拍子]のピストン運動に転換する。
ふたたび腰を使って[大気]いへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がっ
  た左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けソフトに擦りあ
  げてゆき、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギア]に[とん、とん]と2回の快感を感
  じたところで腰をひく。すると[トン、トン]と2回の快感が反復される。その快
  感を味わいあがら左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
  これが[2拍子]のピストン運動である。
   こんどは[3拍子]のピストン運動に切り替える。
   腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]の宛がった左右の
  手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあげてゆ
  くと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん]と3回の快感を
  感ずる。その快感を感じたところで腰をひけば[トン、トン、トン]と3回の快感
  が反復される。この[反復快感]は、最初に感じる[とん、とん、とん快感]がポジ
  テブなもであるのに対してネガテブなものであるが、その快感の質は、言葉では
  表現することができない芳醇な快感である。このことはモニターによる実験例で
  明らかにされている。
   この芳醇な快感を感じたところで左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位
  置にもどしておく。これが[3拍子]のピストン運動である。
   そして[4拍子]のピストン運動に転換する。
   左右の[乳首の斜め下]に宛がった左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳
  首の上部]に向けて擦りあげながら腰を使ってぐいと[大気]にへばりつき、[真正
  ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん]と4回の快感を感じた
  ところで腰をひけば[トン、トン、トン、トン]と4回の芳醇な快感が反復される
  ので、左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
   これが[4拍子]のピストン運動である。
   ここで[5拍子]のピストン運動に転換する。
   腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった左右の
  手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあげてゆ
  くと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、とん]と
  5回の快感を感ずる。その快感を感じたところで腰をひけば[トン、トン、トン、
  トン、トン]と5回の快感が反復される。その快感を味わいながら左右の手首は
  左右の[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
   これが[5拍子]のピストン運動である。 
   ここで[6拍子]のピストン運動に転換する。
   構えた腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった
  左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあ
  げてゆくと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、
  とん、とん]と6回の快感を感ずる。その快感を感じたところで腰をひけば[トン、
  トン、トン、トン、トン、トン]と6回の快感が反復される。その快感を味わい
  ながら左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
   これが[6拍子]のピストン運動である。
   そして[7拍子]のピストン運動に転換する。
   腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった左右の
  手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあげてゆ
  くと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、とん、
  とん、とん]と7回の快感を感ずる。その快感を感じたところで腰をひけば[トン、
  トン、トン、トン、トン、トン、トン]と7回の快感が反復される。その快感を
  味わいながら左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置にもどしておく。
   これが[7拍子]のピストン運動である。
   ここで[8拍子]のピストン運動に転換する。
   構えた腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった
  左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあ
  げてゆくと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、
  とん、とん、とん、とん]と8回の快感を感ずる。その快感を感じたところで腰を
  ひけば[トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン]と8回の快感が反復
  される。その快感を味わいながら左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置
  にもどしておく。
   これが[8拍子]のピストン運動である。    
   さらに[9拍子]のピストン運動に転換する。
   構えた腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった
  左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあ
  げてゆくと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、
  とん、とん、とん、とん、とん]と9回の快感を感ずる。その快感を感じたとこ
  ろで腰をひけば[トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン]と
  9回の快感が反復される。
   その快感を味わいながら、左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置に
  もどしておく。    
   最後に[10拍子]のピストン運動に転換する。
   構えた腰を使って[大気]にへばりつきながら左右の[乳首の斜め下]に宛がった
  左右の手首で左右の[乳首の真正面]ないし[乳首の上部]に向けてソフトに擦りあ
  げてゆくと、[真正ペニス]ないし[真正ヴァギナ]に[とん、とん、とん、とん、
  とん、とん、とん、とん、とん、とん]と10回の快感を感ずる。その快感を感じ
  たところで腰をひけば[トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、トン、
  トン]と10回の快感が反復される。
   その快感を味わいながら、左右の手首は左右の[乳首の斜め下]の元の位置に
  もどしておく。   
   これが[10拍子]のピストン運動である。
   ここまでが[A型]の体位による性行動のテクニックである。

○ 花園家の応接室
  かなり広いスペースの応接室の奥は乳白色の絹を張った衝立で仕切られ、書斎
 になっている。
  応接室の表ドアを開けると豪華な応接セットが配置されている。  
  花園弁護士が絹張りの衝立の奥のデスクに向かって読書に耽っている。
  花園は開いたページに栞を挟み、藤原教授の著書を閉じる。
  天井に向け両腕を突き上げ花園は背伸びをする。
「ああ。このへんで一息つくとするか。コーヒーでも炒れてくるか」
  花園は奥のドアから消えてゆく。
  
○ 羽村堰
  玉川上水に沿って展開される桜並木の桜は満開になっている。
  桜の古木の枝が垂れ下がり地面すれすれでそよ風に揺れている。


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