第16回 性愛の極致
○ 羽村堰 玉川上水の水源地にあたる「羽村堰」の堤の桜並木が初雪で真っ白な雪化粧をし ている。 桜の古木の枝も白雪を被っている。 ○ 花園家の門前 白光がする生地に黒砂を散りばめた花崗岩の門柱に[弁護士 花園]と金文字で 刻まれた表札が浮かびあがる。 その門柱も白い雪の笠をかぶっている。 ○ 花園家の中庭 応接室の窓下には紫、ピンク、黄色など色とリどりの菊の花が雪を被りわずかに 顔を覗かせている。 ○ 花園家の日本間 20畳敷きの日本間では青畳が敷き詰められ藺草(いぐさ)の薫りが漂っている。 和服姿の花園佐保子が襖を開けて入ってくる。 佐保子は床の間を背にして紫檀(したん)のテーブルに向かって牡丹の花模様の 座布団に座る。 「さて、きょうはどこからかな」 呟きながら佐保子はテーブルのうえにおかれていた藤原教授の著書に手をかける。 「先日は第6節まで読んだのだから今日は第7節 「ヒト」の性感帯 からだ」 佐保子はそのページを開き、読み始める。
◆ 藤原教授の著書 ◆
第7節 「ヒト」の性感帯
1 性感帯の概念 ここに「性感帯」とは、身体のうち刺激を与えることによって性的な快感を感じや すい部位をいう。 その部位で感じる「性感」とは、性行為によって生理的快感を感じることをいう。 しかし人間には、「性感の受容体」がない。受容体がなくとも、それでも感じるのは 体性感覚と皮膚感覚の中の一部が変形したものか、もしくはこれらの感覚が「性感」 を受容する役割を兼備しているものと考えられている。 この「性感」には男女とも個人差がある。 体部のうち「粘膜が体外にでている部位」とか「静脈が皮膚に近いところを走って いる部位」に性感を感じるのが通例である。 男性の性感帯としては、ペニスの亀頭、陰茎体、陰嚢、肛門、会陰(えいん)、乳首 などをあげるのが通例である。このほか前立腺も性感帯とされる場合もある。 これに対し女性の性感帯としては、陰核、陰唇、膣口、乳首、尿道口、肛門、など のほか「Gスポット」をあげるのが通例である。さらには「ポルチオ (子宮膣部)」 も性感帯とされる。 2 男性の性感帯 A 亀頭 ペニスの亀頭は、性感帯の代表的なものとされる。 この部位はペニス上部の最先端に位置するが、文字通り「亀の頭」によく似て いる部位である。 a 尿道口 亀頭の先端には尿道口が開く。この尿道口を俗語では「鈴口」という。 この「鈴口」は、尿を排出するだけでなく、亀頭を刺激することにより分泌 される「カウバー腺」の出口ともなる。さらには性交のときとか、オナニーの ときひは精液の出口ともなる。 b 「カリ部」の性的トレーニングの重要性 この「亀頭」と「陰茎体」との境界線には段差がある。この段差のある部位 を「カリ部」という。 この「カリ部」に亀頭部の性感帯が集中しているのが通例である。亀頭部の 性感帯の80%はこの「カリ部」に集中している。 この「カリ部」の段差には個人差があるが、その段差が大きいほど性交時に おける膣内での刺激力が増大する。そこでこのタイプの性器を俗語では「名器」 と呼んでいる。 この「カリ部」の刺激に対するトレーニングが少ないと「早漏」の原因となる。 c 「カリ部」の性的トレーニングの手法 そこで「カリ部」の性的トレーニングの手法を考えてみよう。 ア 直接接触型 まず乳首や脇腹など自分ありの性感帯を刺激してペニスを勃起させる。 するとしだいに性的快感を感じてくるにつれ、尿道口から透明で粘液質の 「カウバー腺」が分泌してくる。この透明な粘液を指のハラで塗り広げ「カリ部」 に塗し潤滑状態にする。そして5本の指で直角に「カリ部」を覆うように摘み ソフトに擦るように愛撫する。このソフトな接触と対応させ、腰を使って前後 にピストン運動をすればより効果的である。 さらに「カウバー腺」を塗すだけでなく、市販の「性交用ゼリー」を亀頭部全 体に塗すと亀頭部も「カリ部」もより潤滑となるから、「カリ部」のトレーニン グ効果は、よりいっそうアップされる。 イ ウオーター・バギナ法 浴槽の中でその縁の壁にお尻をあてがい、そこを支点として、お湯のなかでピ ストンにより「カリ部」を刺激しトレーニングする手法である。 まず浴槽のなかでその縁の壁にお尻をあてがい支点を決める。両足の膝をわず かに曲げ、腰の構えはペニスを膣に挿入するときの姿勢になる。両腕の手首の内 側の柔らかい部位を左右の乳首の外側にあてる。 この基本姿勢ができたら、セックスのときの体位である「立ち位」でするとき のように、液体であるお湯を「膣」に想定して、ペニスを「お湯の膣」にぐいと 挿入する。その姿勢で両手首内側の柔らかい部位を左右の乳首の外側に接触させ ながらピストン運動をつづける。 すると「カリ部」は「お湯の膣」つまり「ウオーター・バギナ」に刺激されて しだいに快感が昂進してくる。それだけ「カリブ部」の性感が鋭くなる。 ウ エアー・バギナ法 この手法は個室でペニスを露出し、前段イのときとおなじように「立ち位」で するときの基本姿勢をとる。そして部屋のなかの「大気」を「膣」に想定してそ の「大気の膣」つまり「エアー・バギナ」にぐいとペニスを挿入し左右の両手首 のウ内側の柔らかい部位を乳首の外側にあてピストン運動に対応ざせながらソフ トに乳首を刺激してゆく。すると膨張したペニスの「カリブ部」は「大気の膣」 たる「エアー・バギナ」に刺激されて快感度を昂進してゆく。それにつれて「カ リブ部」の性感も鋭くなってゆく。 エ 実証例 このようなメソッドによって「カリブ部」は訓練されてゆき、「ペニスを生身 の膣に挿入したとき」に類似した快感ないしは「それ以上の固有の快感」を感ず るようになることがモニターの実験例によって実証されている。 d 亀頭部の特性と役割 ペニスの亀頭部はペニスの勃起と並行して勃起してくる。 しかし勃起しても「カリブ部」はペニスほどには硬直しない。これはピストン運 動により膣や子宮を傷つけないようにするためである。 ただ「カリブ部」が勃起したときは毛細血管により亀頭部にも「張り」が増加し てくるし、射精したときには亀頭部も膨らむ。 この亀頭はペニスを挿入したときのピストン運動により膣壁内のお凹凸や膣口で の刺激を受け入れるから、それだけ男性の「性的快感のセンサー」としての役割を 担っているわけである。ちなみに人間以外の動物の場合、先に雌の性器に射精した 「別の牡」の精液を膣から掻き出す排出作用もある。 B ペニス(陰茎) 男性のペニスは平常時には左右の脚の間の前方に懸垂する柔軟な器官であり、排尿 に用いられ、勃起すると棒状になって前方に突きだし精液を射精する器官である。 a ペニス(penis)の構造と機能 このペニスは男性の性器であるとともに排尿に用いられる泌尿器の機能を有する。 ペニスは性行為のとき「海綿体」が充血して勃起することで膣に挿入するのに適 した硬さをもつようになる。 この陰茎は海綿体、亀頭、包皮、尿道によって構成される。 ペニスの形状とか、長さとか、太さや色合いなどには個人差がある。 この男性の場合は陰茎骨を有しない。 b 海綿体 陰茎の内部には、左右一対の「陰茎海綿体」とその下側にある「尿道海綿体」と 3本の海綿体が通っている。この海綿体は体内の会陰部から陰茎の先端までつづい ており、陰茎の大半を構成している。 尿道海綿体は陰茎の先端までつづいて亀頭を形成している。 c 陰茎内の血管と勃起 ペニスには「陰茎背動脈」・「陰茎深動脈」・「陰茎球動脈」が通っている。 このほか「浅陰茎静脈」が通い、さらに「陰茎背神経」がはしっている。 性的興奮や生理現象により海綿体内部の「静脈洞」への血行が多くなると、スポ ンジ状の海綿体は血液で満たされ膨張し硬くなる。 これにつれてペニス全体も膨張して硬くなり「勃起」する。 d 亀頭 これについては前述(本著2−A)している。 e 包皮 亀頭以外のペニスの皮膚は、内部の組織とは癒合していないで、容易に前後にス ライドすることができる。これが包皮なのである。 この包皮により性交のとき前後のピストン運動を円滑にすることができる。 この包皮は、平常時には弛むため襞をつくり亀頭冠の上部にとどまるか、あるい は太い部分を乗り越えて亀頭を覆うこともある。 f 勃起不全 ペニスも勃起機能が低下してしまうことがある。 これを「勃起不全(erectrile dysfunction :ED)」という。 ドイツ語では「impotenzインポテンツ」という。インポは従来の慣用語になって いる。 勃起不全の原因はストレスなどで一時的に勃起不全に陥る例もみられるが、高血 圧とか糖尿病など身体的条件がかかわりをもつことが判明している。 一般的には加齢現象により勃起不全の率も高くなるといわれる。40歳を過ぎる と男性の半数以上が勃起不全のになるとも推定されている。 しかし、この点については個人差が大きく、本著の執筆にあたり実験に参加して いただいたモニターの方の例をあげると、80歳をすぎても、青年期なみに勃起が 旺盛な被験者もみられる。 C 陰嚢 男性の「陰嚢」は、ペニスの付け根に位置し、体外に膨らみ、睾丸(精巣)を含む 性器官である。 この陰嚢のことを俗語としては「ふぐり」とか「袋:玉袋・皮袋」とか「いなり:オ イナリサン」などといわれている。 a 陰嚢の構成 その表面はメラミンで、汗腺が多い。皮下脂肪はなく、表皮から順にみると真皮、 内様膜、コールス筋膜、4層の皮膜、睾丸鞘膜、という薄い平滑筋で構成されている。 これは厳密には「皮」とは異なる「平滑筋」であるが、俗に皮とみても人間の皮の うちでは最も厚いものである。 b 陰嚢の機能 この陰嚢は、精子の形成に適温とされる34度から35度を維持する機能を有する。 睾丸が熱くなりすぎないように温度調節の役割を担っている。このため温度によって は収縮するメカニズムになっており、暑いときには表面を広げて放熱し、寒いときに は縮まって熱を維持する。 c 性感帯 この陰嚢はペニスの付け根に位置し、「性感帯」のひとつとされる。 ただ強い刺激では不快感をもよおすので、ソフトに接触するのがよい。 D 肛門 解剖学的意味における「肛門」とは、「直腸」の体外への開口部をいう。 a 肛門の制御 この肛門は「肛門括約筋」によって制御される。 その表面は粘膜で覆われ、その外側に「内肛門括約筋」と「外肛門括約筋」がある。 b 内肛門括約筋 この括約筋は、不随意筋であり、自分の意思によって動かすことはできず、常に縮ま る状態になっている。 c 外肛門括約筋 この括約筋は、随意筋であるから、自分の意思で動かすことができる。 排便のときにこの括約筋を用いる。 d 肛門の機能 肛門は、糞便を排泄する排泄器官であるとともに、性的快感のセンサーでもある。 男女とも肛門は性的快感のセンサーとなるが、男性の場合には、肛門に指や綿棒 などを挿入して効率よく「前立腺」を刺激して性的快感を愉しむ性的指向性もある。 ちなみに「ホモセクシャル」などセクシャリテーによっては、肛門も膣とおなじ ような性器として活用される。「バイセクシャル」において男を愛するときも同様 である。 夫婦や恋人など正常なパートナー間においても「膣」と「肛門」とは「その味わ いが異なる」として肛門を膣と併用することも考えられる。 いずれにしてもその部位を清潔にしておかなければ、のちに問題をおこすことに なりかねない。 E 会陰 この概念は聞き慣れない文字であるが「えいん」と読む。これは外性器と肛門との 間にある平坦な筋肉組織を意味する。ここはいわゆる「蟻の門渡り」で、左右のつな ぎ目がみられる。 この「会陰」は、外性器と肛門との間に位置するため「性感」があり、「バチニ小 体」の存在も知られているので、「8の字筋」の奥には「性感」が隠されているとみ られる。 肛門が性感帯として性感を感じるのも「会陰」の性感細胞が影響するからだとみら れなくもない。 この「会陰」は、「強めの圧迫」とか「細かい振動」に反応することが多い。 そこでこの点はセックス・テクニカルのひとつとされる。 F 乳首 a 女性の場合 この「乳首」は「乳頭」と呼ばれ、乳房の先端に位置している授乳器官である。 乳首は乳を分泌する「乳腺」と結びつき、15〜20個もある乳頭の穴から乳を 出し哺乳をおこなう。 この「」乳首は、ときに「無乳頭」とか「陥没乳頭」という形状もあり、このよ うな形状の場合 には授乳に支障をもたらすことになる。 女性の乳首は「性感帯」としては上位にランクされる。 b 男性の場合 男性の場合は乳首が退化して乳房の外形がみられないのが通例である。例外とし て力士など太っている男性では、乳房らしき外形がみられることもある。 しかし男性の場合も明らかに乳首は存在している。 個人差はあるが、男性の場合も乳首は「性感帯」となる。しかもそのトレーニン グにより「ハイレベルの性感帯」に育成することができる。 c 乳首のトレーニング方法 ここてはモニターによる実証的研究の成果として「乳首のトレーニング方法」を 考察しておこう。 この乳首は、その部位にとり「性感の質」が異なる。乳首は刺激する部位によっ て「性感の質」が相違するのでこれをテクニックとして活用すれば、「マルチな性感」 をエンジョイすることができる。 ア 「正常位・標準」型 まず両脚を広げたまま、立った姿勢で性交の体位としての「正常位」の腰の据 え方をする。 ここで両手の親指のハラを左右の乳首の下側にあて、人差し指から小指までの 4本の指は広げた形で乳首の真下の胸部にあてる。これで基本姿勢はできた。 そして「大気」にへばりつき「大気の膣」たる「エア・バギナ」にペニスを挿 入する。 このペニスを挿入するとき、ぺばりつくのと同時に乳首の下側にあてていた親 指のハラを乳首の真正面に擦りあげる。 するとその刺激により、乳首に心地よい快感がはしるはずである。これでペニ スは「大気の膣」つまり「エア・バギナ」に挿入されたわけである。 この基本姿勢を構えたまま、ピストン運動を繰り返してゆく。するとピストン 運動に対応して両手の親指のハラは、乳首の真下から乳首の真正面を垂直に擦り 刺激されてゆき「乳首真正面の性感」を訓練してゆくことができる。 イ 「正常位・深入れ型」 まず前段のアとおなじ要領で「正常位」の基本姿勢をとる。 そして両手の手首の内側を左右の乳首の外側にあてる。ここで腰を据えて「エ ア・バギナ」にペニスを挿入する。そのとき、「大気」にへばりつくと同時に乳首 にあてていた両手首の内側で乳首を前後に擦する。すると乳首に心地よい快感がは しるはずである。 このパターンでピストン運動にはいる。ピストン運動が増加するにつれて乳首 およびペニスの快感度もアップされてゆく。 ピストン運動の振幅をおおきくすればするほど、正常位でペニスを膣の奥まで深 く容れたときの快感を満喫することができる。 これはモニターによる実証例で証明されている。 ウ 「正常位・浅入れ型」 まず前述アの要領で正常位の基本姿勢をとる。 そして右手の手首の内側を右の乳首の右下にあてる。左手の手首の内側を左の 乳首の左下にあてる。腰を据え「大気」にへばりついて「エア・バギナ」にペニ スをぐいと挿入する。 そのとき「大気」にへばりつくと同時に乳首にあてていた両方の手首の内側で 左右の乳首を前後に擦りあげる。すると乳首に心地よい快感がはしるようになる。 ここでピストン運動にはいる。 このピストン運動に対応して手首の柔らかい部位により左右の乳首の右下・左 下をソフトに擦りあげる。 このパターンを繰り返すとペニスおよび乳首に快感が昂進してゆく。 こうして乳首の右下と左下の部位のトレーニングがなされてゆき、乳首の性感 が高められてゆく。 この型によれば、ペニスを膣に浅く容れたときの快感度が感じられることが実 証されている。 エ 「動物位」型 これはセックスのときの「動物位」のときとおなじ快感を鍛えるテクニックで ある。 まず膝をやや屈めて「動物位」のときの基本姿勢をとる。 そして左右の両手首の内側の柔らかい部位を左右の乳首の上部にあてる。個室 の「大気」を膣に見立て、ぐいとペニスをその「エア・バギナ」に挿入する。 この基本姿勢でピストン運動をはじめる。 前後のピストン運動に対応させて乳首の上部を刺激してゆく。その場合、乳首 にあてた両方の手首は「八の字」型で左右に開きながらピストン運動に対応させ、 おなじパターンの「乳首刺激」を繰り返してゆく。このパターンでおよそ50回 程度も繰り返せばペニスは勃起し、前後のピストン運動により「動物位」のとき とおなじ快感がペニスに感じられる。 このトレーニングが進化してゆけば「動物位以上の快感」を感ずるレベルに達 することがモニターによって実証されている。 このようなテクニックによって「乳首上部の性感」はトレーニングされてゆく ことになろう。 オ 「後座位」型 まず個室の中の「大気」を膣に見立てた「エア・バギナ」に向かい、性交にお ける体位としての 「後座位」の基本姿勢をとる。 そして右手首の内側の柔らかい部位を右乳首の「右斜め上」にあてる。次に左 手首の内側の柔らかい 部位を左乳首の「左斜め上」にあてる。 この場合、「後座位」といっても両脚を開き中腰になって「大気」にへばりつ き、「エア・バギナ」にペニスを挿入する。ここでピストン運動をはじめる。 すると手首の内側に接触された左右の乳首は自然に刺激されるはずである。 するとやや深く膣にペニスを挿入した「後座位」のときの快感を満喫すること ができる。 このテクニックにより左右の乳首の「右斜め上」・「左斜め上」の部位の性感 のトレーニングをすることができる。 カ 「射精直前性感」型 この手法はペニスから精液を「射精する寸前」とおなじ質の快感を感じること ができる乳首のトレーニング方法である。 まず両脚を開いて中腰になり、個室の「大気」を膣に見立てた「エア・バギ ナ」にへばりつく。 そして左右の手首の内側の柔らかい部位を左右の「乳首の真正面」から垂直に あてる。これは乳首の 尖端を刺激するためのポーズである。 この基本姿勢でペニスを「エア・バギナ」にぐいと挿入する。この段階でもす でにペニスは勃起しは じめているはずである。ここでピストン運動をはじめる。ピストン運動の揺れに 連動されて手首による 乳首の刺激もおなじテンポですすんでゆく。ペニスはたちまち勃起するはずであ る。「乳首の真正面」の部位は乳首のなかでは最も性感の鋭い部分だからである。 こうしてピストン運動を継続してゆくと、乳首の快感度のアップとともにペニ スの快感度も昂進してゆく。 やがてペニスの快感のシチュエーションは「射精寸前」の性感に達する。 しかもピストン運動のテンポを速めればはやめるほど、射精寸前の性感度は昂 進してゆく。そのまま一定の時間、ピストン運動を継続してゆけば「射精しない オーガズム」という快楽の花園に到達することができよう。 d 乳首の部位による性感度 これまでの乳首の性感のトレーニングで明らかになったように乳首は、その部位 によって性感の度合が異なることがモニターにより実証されている。 ただ性感度には個人差があるので一律ではないが、モニターによろ実験例を手掛 かりにすると、乳首の性感の度合は次のようにランクされることが明らかになった。 ア 乳首の「真正面」 この部位は乳首のうち最も性感度が高い。 だからそのトレーニングにより「射精寸前」の性感度がえられる。 イ 乳首の真上部 ついで「乳首の真上部」の性感度がが高い。この部位を左右に「八の字型」に 刺激すると「動物位」のときのような強い刺激が感じられる。だから早くペニス を勃起させたいときは、左右の手首を左右の 乳首の真上部にあて「八の字型」に刺激することを推奨する。 ウ 乳首の「左右外側」 この部位は3番目にランクされる。この部位はかなり強い性感を感じるから 「正常位・深入れ型」の 性感として味わうことができる。 この部位の刺激でも「射精しないオーガズム」に達することがモニターにより 実証されている。 エ 乳首の「左右斜め上」 この部位は4位にランクされている。 この部位では膣にペニスをやや深く挿入したときの性感度がえられる。この性 感度は、「前座位」の性感度に匹敵する。 オ 乳首の「左右斜め下」 この部位は、乳首のなかででは最もソフトな性感がえられる性感帯である。 この部位は「正常位・浅入型」とほぼおなじ性感度である。 G 前立腺 男性の性感帯としては、これまで考察してきた部位のほかにも性感帯とされる部位 がある。 たとえば瞼、耳たぶ、脇腹、手足の指の間、首筋、内股、前立腺などをあげること ができる。 ここでは「前立腺」について考察しておこう。 この「前立腺」ハ、膀胱の下部に位置し、栗の実のような形状をしていて、尿道と 精管との結合部を囲むような構成になっている。 精巣からの粘液と前立腺からの分泌液とが混合されて精液をつくり射精される仕組 みになっている。 肛門から指を入れて腸壁沿いに「前立腺」を探り、指で圧迫刺激することを「前立 腺マッサージ」という。 この手法により電気ショックをうけたような快感を感じ、射精することもある。 ただこの性行動は内臓器官への異常な接触と刺激であり、肥大や炎症を起こしや すく、排尿困難とか、勃起不全などのリスクを覚悟しなければならない。 このようなマッサージの経験がない者にはその醍醐味は明らかではない。けれども その経験者によれば、前立腺は絶妙な 性感帯なのであろう。 H 性感と環境 人間の性感には「心理的環境」とか「社会的・自然的・地理的環境」がかかわりを もってくる。 おなじ人でも、その日の健康状態、客観的な自然的環境、主観的な心理的環境に よって「性感度」に差異を生ずる。 このように性感はいつも一律に感じるものではない。 その日にその人がおかれた環境やその場のシチュエーションにより「性感」も異 なってくる。 3 女性の性感帯 もとより個人差はあるが「女性の性感帯」としては陰核、陰唇、膣前庭、膣口、乳 首、肛門、会陰、Gスポット、ポルチオなどのほか、脇腹、瞼、耳たぶ、首筋、内股、 指の間、髪の毛といったふうに多彩である。 これらについて順次、考察してゆく。 A 陰核 この「陰核(clitoris)」は、女性器の上部にあたる外性器としての器官をいう。 これは発生学的には男性のペニスに相当する。 この「陰核」は、「陰核体」と「陰核亀頭」によって構成されている。とりわけ 「陰核亀頭」は、人体になかで唯一、性的興奮・性感の受容器としての役割を担うた めに特化した性的器官であるから「乳首」とともに女性の性感帯の代表といえる。 それだけにペニスとおなじく「朝立ち」の現象もみられる。 性的に興奮してくると、クリトリスも充血して勃起する。つれて「陰核体」や「陰 核亀頭」も膨張してやや硬くなる。 これにともない「陰唇内部の海綿体」や「小陰唇」も充血し膨張してくる。 膣に挿入されたペニスのピストン運動により、これらの海綿体組織や皮膚が連動 て動き、「陰核亀頭」を刺激して快感に誘導するというメカニズムになっている。 やがて性感が絶頂にのぼりつめオーガズムに達する。 ただパートナーとのセックスによらないで、オナニーをしても快感に達することが できる。膣にペニスを挿入しなくともパートナーによるクリトリスの愛撫によっても オーガズムにのぼりつめることができる。 B 陰唇 この「陰唇(vulva)」は女性器の一部で、外部から目で見える部分をいい、これは 「小陰唇」と「大陰唇」の総称である。 これらも「陰核」についで「性感帯」となり、パートナーによる愛撫の対象となる。 a 大陰唇 これは「恥丘」下部からはじまり、性器全体をカバーできるように形成され、皺襞 状をした、通常の皮膚系に属する一対の脂肪組織から成る外性器をいう。 この「大陰唇」は膣口や尿道口を保護する役割を担っているが、「小陰唇」が常に 閉じている状態を保つための土手の役割をも果たしている。しかも性交時におけるペ ニスのピストン運動などによる男女の骨盤同士の衝突を緩和しているものとみられる。 このような「大陰唇」は性的興奮にかかわりをもつものと考えられる「性感帯」に 属する。この「大陰唇」は、陰毛とおなじくアポクリン腺が存在しているため「性的 臭い」を発している。この臭いを嫌う人もいるが、性感を高める要因になるという人も ありうる。 セックスの技術としては、いきなり「小陰唇」にタッチするのではなく、まず「大 陰唇」をソフトに愛撫してから、おもむろに「小陰唇」に辿りつくというテクニックを 推奨する。 b 小陰唇 この「小陰唇」は「大陰唇」の内側に位置し、襞状を成している、一対の襞組織を 成す外性器である。 花弁のようなその形状には個人差が大きく千差万別といわれる。そのいるにも個人 差があり、薄茶色から濃い焦げ茶色まで花弁の色はさまざまである。 その皮下組織には静脈網がよく発達していて、その深部には前庭球がみられるため、 性的刺激により充血し膨張することでクリトリスに類似している。 このように重要な性感帯であるから、セックステクニックとしてはデリケートな愛 撫が望ましい。 C 膣前庭 これは「陰裂」の内側に位置し、左右の「小陰唇」により閉じられ保護されている 窪みの部分である。 この「膣前庭」は、通常は「小陰唇」によって囲まれているため、指で広げないと 目では見えない。 これは「三角形の粘膜」が中心の性器領域に属し、そのほとんどがピンク色の粘膜 状で、スキーン腺、バルトリン腺、膣液により常に濡れている。 この「膣前庭」にはクリトリス、外尿道口、膣口、スキーン腺、バルトリン腺が含 まれている。クリトリスを含め「膣前庭」は常に性的に感じやすい「性感帯」になっ ている。 この「膣前庭」には繊細な尿道口やさまざまな分泌腺があるので最も鋭敏な「性感 帯」であるとはいえ、その愛撫にはデリケートな神経が求められる。だから、できる だけ指による接触を避け、舌先での愛撫が望ましい。 D 膣口 この「膣口」は「膣前庭」の下部に位置し、身体の内部にそなわっている「膣」の 入り口である。 「膣口」は伸縮自在で、筋組織が束になって強靭な筋肉組織になっている。 これは 柔軟で強靭な粘膜組織になっており、いわゆる「8の字筋」がその周囲を 取り巻き伸縮自在の妙味を発揮する。 この「膣口」は月経時における経血の出口になるほか、子宮や膣内分泌液の出口と もなる。しかも性交時にはペニスの挿入口となり、出産のときは産道の最終出口とも なり、多様な役割を担っている。 この「膣口」の所在する場所がセックスとのかかわりで取り沙汰される。 いわゆる「上つき」・「中つき」・「下つき」などが論議されるが、「中つき」の タイプが多い。実際のセックスにおける「正常位」の場合には、「膣口」が上向きのほう がペニスを挿入しやすい。しかもピストン運動にともなう恥骨の接触によりクリトリス を自然に刺激することができるというメリットもある。 尤もその場所を論議するよれも、大切なことは、現に存在するその女性の「膣口」の 所在する場所を正確に確認し、 その位置に適した性技術としての具体的なテクニックを工夫するのがパートナーと しての責任といえよう。 E 尿道口 これは「膣前庭」の中ほど上部に位置する尿を排出する尿の出口である。 この「尿道口」にも性感があるかどうかは明らかではない。この点、「性感帯」の 代表といわれる「膣前庭」に含まれているのだから、やはりその位置からみて「性感 帯」のひとつと考えるのが自然であろう。 だからといって「尿道オナニー」は危険である。実際には、綿棒、マチ針、ヘアピ ンなどで「尿道口」を刺激するとか、尿道にこれらの異物を挿入して軽くうごかした りするらしい。しかし、これは尿道の粘膜を傷つけて炎症を起こしたり、傷ついた部 分はそれだけ狭くもなる。そのうえ女性の尿道は短いため、楽しんでいるうちに異物 が膀胱にはいり、取り出すことができなくなるという危険性もある。それ故「尿道オ ナニー」は推奨することができない。 F 乳首 a 授乳器官 女性の乳首は「乳頭」と呼ばれ、乳房の尖端に位置している授乳器官である。 この乳首は、乳を分泌する「乳腺」と結びつき、15個から20個もある乳頭の 穴から乳を出して哺乳をする。 b 乳首の形状 乳首の形状にかかわるものとして「無乳頭」とか「陥没乳頭」の問題がある。 これは文字通り乳頭の奇形である。 この「」場合は乳首の形状が本来あるべき形状をそなえていないから授乳に支障 をもたらすことになる。 c 性感帯としての乳首 女性の乳首は「クリトリス」とともに「性感帯」のシンボルである。単に乳房に 触れられるだけで性感を刺激するし、まして乳首に触れると、その刺激は鋭いのが 通例である。 d 乳首のトレーニング 女性のの乳首は「性感帯」のシンボルであるから、とくにその「性感」の訓練を するまでのことはあるまい。しかし、より感じやすい乳首を練り上げることも考え られる。その場合のトレーニングの手法は「男性の乳首のトレーニング」に準じて 試みることで足りる。 ア 「正常位・標準型」 まず両脚を広げたまま立った姿勢で、パートナーが膣にペニスを挿入するのを 受容する腰の据え方をする。映像的には「大気」の中にペニスを想定し、その 「大気」にぐいとへばりつき、「エア・ペニス」を自分の膣に受け入れる。 ここで両方の手首の内側の柔らかい部位をソフトに「乳首の真下の胸部」にあ てる。 これで「エア・ペニス」は「生身の膣」に挿入されたので腰を使ってパート ナーのピストン運動にこたえる。 そのピストン運動に対応して両方の手首の内側で乳首の真下から乳首の真正面 に擦りあげる。 こうすると、しだいに乳首に快感がはしるだけでなく、「自分の膣」に手を触 れなくても「正常位」のときとおなじ性感を生身の膣に感じるようになる。 イ 「正常位・深入れ型」 アの要領で「エア・ペニス」を「自分の生身の膣」に受け入れる。両方の手首 の内側を左右の「乳首の外側」にあてて、パートナーのピストン運動に対応して 「大気」にへばりつけば、乳首に快感がはしるだけでなく、膣に手を触れなくて も「正常位・深入れ型」の性感を自分の膣に感じるようになってゆく。 ウ 「正常位・浅入れ型」 まずアの要領により「正常位」の腰の据え方をする。そして右手の手首の内側 を「右の乳首の右下」にあて、左手の手首の内側を左の「乳首の左下」にあてる。 この基本姿勢で「大気」にへばりつき、パートナーの「エア・ペニス」を自分 の膣に嵌め込む。 ピストン運動にに対応して左右の手首の内側で「右の乳首の右下」と「左の乳 首の左下」をソフトに擦りあげてゆく。するとしだいに乳首が心地よくなり、膣 に]手を触れなくても、パートナーがペニスを浅く入れたときの快感がはしる ようになる。 エ 「動物位型」 まず腰を曲げて動物が這ったときの姿勢をとる。しかし、両手を使うため、前 屈みになったままにして、パートナーが背後から載れるような姿勢にする。両方 の手首の内側の柔らかい部位を乳首の上部にあて乳首を刺激できるポーズになる。 これであなたの背後からパートナーの「エア・ペニス」があなたの「生身の膣」 に挿入されたことになる。 ピストン運動にがはじまる。これに対応して両方の手首で両方の乳首の真上を 「八の字型」で左右に開くように擦りながらピストン運動をつづける。 これにより乳首に快感が増してくるだけでなく、膣に指を触れなくても「生身 の膣」が、「動物位」のときのような性感を満喫することができる。 このようなトレーニングにより「乳首」をいっそう「性感度の鋭い乳首」に鍛 錬し性的快感のセンサーとしてパートナーに歓迎されることになろう。 G 肛門 女性にとって「肛門」も「性感帯」となる。 これはパートナーがセクシャリテーとして異性を愛するとともに両性をも愛する 「バイセクシャル」のとき、「膣」によるセックスではなく、「肛門によるセック ス」を求められた場合のはなしになる。いずれにしても清潔にしておくべきである。 H 会陰 この部位は「外性器」と「肛門」に至近の距離にあるだけに女性にとっても「性感 帯」となる。 I 髪の毛 女性にとっては「髪の毛」も「性感帯」となりうる。パートナーにやさしく髪の毛 に触られるだけで性的に興奮してくる例もある。もちろん個人差はあるので「髪の毛」 に触れられても、あまり感じない人もいるであろう。 女性を愛撫するときの手順としては、パートナーはまず女性の髪の毛から愛撫をは じめるのが正統派だという考えもある。 本節で考察している「性感帯」では、その人が「性感」を感じる場合のはなしであ るが、その「性感」とは、性的興奮を惹起する快感を意味する。男女とも性器に触る ことが最も直接的な性感に繋がることはたしかである。しかし髪の毛に触られたり、 肛門、太もも、耳たぶ、指の間の柔らかい部位などを撫でたり、舐めたりすることで も性感を惹起することがある。 とりわけ女性の場合は、その「全身に性感帯が分布」しているともいう。 J Gスポット a 概念 この「Gスポット(Grafenberg spot:G-spot)」は、「恥骨」の下にある「膣壁」 前方上部に位置する小さな領域である。 もともと、この概念はドイツのエルンスト・グレフェンベル(EmstGrefenberg) にちなんで命名されたものである。 この「Gスポット」はより正確にいえば、膣前方上部の小さな領域であって恥 骨の真下にある女性の「尿道海綿体」をいう。 この領域の広さは狭く、個人差はあるけれども、通例はコイン程度の大きさと みられている。 b Gスポットの部位 この「Gスポット」の部位は、膣に中指を全て挿入し「PIP関節」を曲げた 周 辺に位置するのが通例である。 電子顕微鏡により「Gスポット」の周辺には知覚神経があることが発見されてい る。この「Gスポットは確かに存在するが、すべての女性に備わっているわけでは ない」とする研究報告もある。 c Gスポットを自分で探す方法 実際には、膣に中指を挿入してその位置を確認することになる。 まず仰向けに寝そべって膝をたてる。自分の中指を曲げんがら膣に挿入する。 ちょうど中指の「第二関節」が膣の入り口にはいるかはいらないかというくらい に入れたところで、中指の「第一関節」の指のハラが触れている「ちょっとざらざら したところ」が「Gスポット」である。この部位は刺激を与えると膨らんだ感じにな るのが通例である。 d 開発される「性感帯」 この「Gスポット」が存在する部位には、「スキーン腺」という分泌腺がある。 この「スキーン腺」は、発生学的には男性の「前立腺」に相当するものであること から「スキーン腺」のことを「女性の前立腺」とも呼ばれている。 男性の「前立腺」は性感帯とされているが、女性の「Gスポット」も性感帯である。 しかも「開発される性感帯」といわれる。 この部位に触れられた当初は痛く感じられるかもしれない。けれどもソフトな刺 激をつづけてゆくうちに、「格別の性感」を感じるように育成・開発されてゆく。 女性を幸せにするためにも、パートナーはデリケートな神経を使い自分なりにその 育成・開発のテクニックを工夫してゆけばよい。 このように適切な刺激による訓練にともない、その性感度が高まるような状態に なればペニスや指の挿入だけでオーガズムを感ずるようになることが期待される。 この部位は膣の内部だから舌で愛撫することは無理である。そこで指の使い方が ポイントになる。そこで気持ちよく感じる部分を指でマッサージしたりして、自分 に感じるテクニックをパートナーとも連携しながら発見するのがよい。 K ポルチオ a 概念 ポルチオ(Portio)は、子宮のうちで膣に突き出した部位(子宮膣部)の俗称である。 この概念は、ラテン語ではPortio vaginalis uteri(ポルチオー・バギナーリス・ ウテリー)という。Portioは「部分」を意味しており、vaginalisは「膣の」を意味し、 uteriは「子宮」を意味する。そのうち初頭の単語をピックアップして「子宮膣部」の ことをポルチオと呼ぶようになった。 b 性感帯としてのポルチオ 従来、性感帯の女王といえばクリトリスとされていた。 ところが「性感帯の神様」といわれる「膣深奥の性感」が注目されるようになった。 これが「ポルチオ性感帯」である。 c ポルチオ・オーガズム この膣最深部、、子宮口および子宮膣部で感じるオーガズムを「ポルチオ・オー ガズム」という。 尤も解剖学上はこの部位に感覚神経・細胞の類いは存在しないとされている。それで も開発されると絶妙な性感を感じるのはなぜだろうか。 この「ポルチオ・オーガズム」の経験者によれば、「クリトリス・オーガズム」は 自己の意思で制御することができるけれども、「ポルチオ・オーガズム」では「制御不 能な腹の底からオーガズムが湧き起こる」とされている。 このようなオーガズムを享楽できるようになるには、パートナーとの心身一体の性的 訓練による開発が要求される。性交の体位としては「正常位」または「女性上位」でペ ニスを膣深部まで触れさせる必要があり、分泌液は最大限に分泌させ、皮膚の接触を含 め、あらゆる部位の性的刺激を絶好調にするほか、そこに至るまでの性交の回数、皮膚 感覚や性器の部位の性感度アップのトレーニングなど長期間にわたる双方の努力が前提 とされるようである。 たとえば性交の回数については、年間200回以上で、2〜3年間は継続しなければ ならないとする主張もある。 要するに、性器を中心とした身体の訓練とともに、相互にパートナーを信じ、絶愛す るメンタルな側面などの条件を整える努力が要求される。 そうだとすれば、これは「性愛の極致」に到達するための努力ともいえよう。
○ 花園家の日本間 20畳敷きの日本間では青畳が敷き詰められ藺草(いぐさ)の薫りが漂っている。 佐保子は床の間を背にして紫檀(したん)のテーブルに向かって牡丹の花模様の 座布団に座っている。 「ああ・・」 背伸びをした佐保子は藤原教授の著書を閉じる。
◇ 花園佐保子の独白 ◇
ああ・・・。このチャプターは長くで読みでがあった。 あたし、これまで「性感帯」などまともに考えたことなかったわ。ただ、うちの先生は、夜の ベッドの中のアクションになると、いつも、きめ細かく、あたしをリードしてくれるから。あたし、 リードされるまま、それなりに反応していただけだったわ。藤原先生のこの著書を読んでみて感じ たことは、セックス・アクションになると、うちの先生は、かなりのテクニシャンだったみたい。 たっぷり1時間をかけて、いつもあたしを愛撫してくださった。オーガズムを満喫させてくださった。 あたし幸せだったんだ。これからは、「愛され方」について工夫してみることにするわ。 それにしても、あたし「性愛の極致」なんて言葉、しゃべったことなかったわ。 夜のベッドのなかの暮らしにも、これほど奥の深さがあったのかとおもいしらされたわ。
○ 羽村堰 桜並木の堤に白雪が舞いつづけている
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