第14回 黄金の絨毯
○ 羽村堰 玉川上水に沿って展開される桜並木の桜の葉がそよ風でちらちら舞い落ちる。 桜の古木の枝も葉が散って肌を剥き出している。 ○ 花園家の門前 白光がする生地に黒砂を散りばめた花崗岩の門柱に[弁護士 花園]と金文字で 刻まれた表札が浮かびあがる。 門柱の脇には金木犀(きんもくせい)の黄金の花が咲き誇っている。 ○ 花園家の日本間 20畳敷きの日本間では青畳が敷き詰められ藺草(いぐさ)の薫りが漂っている。 花園佐保子が襖を開けてはいってくる。 佐保子は床の間を背にして紫檀(したん)のテーブルに向かって牡丹の花模様の 座布団に座る。 「さて、きょうはどこからかな」 呟きながら佐保子はテーブルのうえにおかれていた藤原教授の著書に手をかける。 「あっ。そうだ。第4節 女性の外性器 からだった」 佐保子はそのページを開き、読み始める。
◆ 藤原教授の著書 ◆
第4節 女性の外性器
1 女性器の類型 A 女性器の概念 ここに女性器とは、女性の生殖器官のことをいう。 B 女性器の類型 この女性器は「内性器」と「外性器」に分類される。 C 女性の内性器 女性の性器のうち、器具などを用いなければ目には見えない部分をいう。 膣,子宮、卵管、卵巣が女性の内性器である。 D 女性の外性器 女性の性器のうち、器具などを用いなくても外から目に見える部分をいう。 陰核(clitoris:クリトリス)、尿道口(urinara)、小陰唇(ラビア)、大陰唇、 膣前庭、膣口などが女性の外性器である。 膣口は、会陰のすぐ上に位置している。 この会陰は「えいん」と読み、外性器(前の陰)と肛門(後の陰)との間に位置す る平坦な筋肉組織をいう。 女性の外尿道口は、膣前庭、陰核と膣口との間にあり、尿だけを排出する尿の出口 である。 これに対し、男性の外尿道口は、陰茎・亀頭部の先端にあって尿の出口である共に 精液・愛液の出口を兼ねている。 会陰のことを俗称では「蟻の門渡り」という。この会陰は左右からのつなぎ目がみ られ、性感があり、「バチニ少体」の存在も知られているので、「8の字筋」の奥に は性感が隠されていると考えられる。この部位は、強めの圧迫、細かい振動に反応す ることが多い。 しかも出産を容易にしようとする自在性を有する。このため出産が近づくと、この 部位は柔らかくなるという特徴がある。 2 陰核 A 概念 ここに陰核(clitorisu)とは、女性性器の上部にある女性の外性器としての器官を いう。 このクリトリスは外性器ではあるが、膣前庭のの最上部に現われているのは、その 先端に突起した一部分であり、その大部分は体内に隠されている。 このような女性のクリトリスは、発生学的には男性のペニス(陰茎)い相当するもの である。 このクリトリスの語源はギリシャ語のクレイスに由来する。そもそもクレイスとは カギとかネジのような「封じるもの」を意味している。 B 構造 クリトリスは「陰核体」および「陰核亀頭」から構成されている。 (a) 陰核体 クリトリスのうち、この部位は男性のペニスと同じく海綿体組織でできている細 長い構造になっている。成人した女性の場合、陰核体の上端から陰核亀頭の先端ま での長さは通常では3〜5cmほどだが、その長さには個人差が大きいといわれて いる。 尤も「陰核体から左右の陰唇内部に続く海綿体組織もクリトリスの一部とみなす 見解」によれば、全体で1cmほどになり、比較的大きな生殖器官ということにな ろう。 陰核包皮で包まれた陰核亀頭部中心として、左右に二股になっている陰核海綿体 の組織である「陰核脚」が伸びている。この「陰核脚」は体内の下方にまで伸び、 最終的には恥骨に接着している。 この「陰核脚」も陰核体の一部である。 (b) 陰核亀頭部 この陰核亀頭部は、陰核体の最上部で左右の小陰唇が合わさる箇所に位置してい る。そのサイズには個人差があり、陰核包皮から露出している部分は5〜7mmくら いである。 この陰核亀頭部には、性感を感じる「陰部神経終末」が高密度に分布しているた め、女性にとって最も強い性感帯である。それ故、性的テクニックとして大切な知 識といえる。 そもそもこの陰核亀頭部は、性感を感じるための器官とみられ、それ以外の機能 は解明されていない。 この陰核亀頭部の大きい女性の場合、男性におけるペニスの亀頭部とその下部に あたる肉茎との境界線の段差になっている「カリ部」もみられ、このタイプの女性 は強い刺激を求める傾向があるという。 このようなタイプは白人女性にみられるが、日本人女性にはほとんどみられい。 陰核亀頭部の色は、ピンクから暗褐色にいたるまでさまざまであるが、その色も 性的興奮により変化する。 この陰核亀頭部は、「陰核包皮」によって包まれている。 この「陰核包皮」は、陰核亀頭部を被っている恥丘下部から下がる畝状の包皮を いう。 これは、実際には小陰唇上部と重なっているが、別の組織である。 ここに恥丘は「ちきゅう」と読む。 この陰核包皮は、亀頭部の剥き出しでは、強すぎる性的刺激を和らげると共乾燥 から亀頭部をまもる役割も担っている。 日本人女性の場合、その長さは1〜2cmである。 この陰核包皮のことを性用語としては莢という。ここに莢は「さや」と読む。 陰核包皮と陰核亀頭部との間には、恥垢が溜まりやすいので不潔にしておくと炎 症をお越すことがある。そこで常に清潔を保つような自己管理が大切となる。 (c) 陰核亀頭部の固有性 この「陰核亀頭」は、女性の性的器官として固有性を有しいる。 この「陰核亀頭」は人体お中で唯一、性的興奮・快感の受容器としての役割を 担うために特化した性的器官である。 その特質を活かすための性行動の技術としては、やさしく刺激することが大切で ある。 たとえば陰核亀頭部を全体的にソフトに圧迫するテクニックを推奨する。 このような固有性を有する点で、「亀頭部」を備えた男性のペニスが生殖器官 としてだけでなく、排尿の役割を担う泌尿器としての器官でもあるのと異なる。 (d) 陰核亀頭の「朝立ち」 このように陰核亀頭は純然たる性的興奮・快感のための器官ではあるが、男性 のペニスと同じく、「朝立ち」の現象もみられる(前述参照)。 (e) 陰核の包茎 陰核亀頭には、男性の「陰茎亀頭」について起こる「包茎」という現象が起こる こともある。 その構造は、男性の陰茎と酷似しているし、包皮もあるからである。 この現象は、厳密には「包茎」ではなく、「包核」ともいうえきであるが、正式 の医学用語にはなっていない。 ただ、「陰核の包茎」といっても、そのほとんどが通常は包皮に包まれており、 性交時には露出する「仮性包茎」の状態である。 ただ10%程度だが、「真正包茎」の状態の女性もある。 包皮を被っていても快感度にはあまり差異はないのでオペをしない女性が多い。 ただ性交時に、包皮の摩擦によって痛みを感じる場合、とか、恥垢が溜まり不潔に なって悪臭を放つなどの問題を生じたときには切除のオペをしたほうがよい。 (f) 性交時の陰核 女性のクリトリスは、性行為にあたり重要な役割を担っている。性的に興奮して くるとクリトリス も充血し勃起する。このように勃起したときには、陰核体や陰核亀頭も膨張してや や堅くなる。これにともない陰唇内部の海綿体や小陰唇も充血し膨張してくる。 膣に挿入されたペニスのピストン運動により、これらの海綿体組織や皮膚が連動 して動き、陰茎亀頭を刺激して快感に誘導する。 やがて快感が絶頂にのぼりつめオーガズムに達する。尤も性交にによらないで、 オナニーとかパートナーによるクリトリスの愛撫によってもオーガズムに達するこ とができる。 3 陰唇 A 概念 ここに陰唇(Vulva)とは、女性器の一部で、外部から目で見える部位をいい、「小 陰唇」と「大陰唇」の総称である。 B 陰門 この「陰唇」は、「陰門」の概念に包括される女性器のひとつである。つまり論理 的には後者は前者の上位概念である。 その「陰門」とは、女性の体表から目で見える外性器の総称である。この「陰門」 という上位概念には「大陰唇」や「小陰唇」などの「陰唇」のほか、すでに考察した 「陰核」とか「尿道口」や「膣口」などが包括される。 C 陰門の機能 こおような「陰門」の主たる機能は、排尿、性行為、月経、出産などである。 4 陰裂 A 概念 ここに「陰裂(cleft of venus)」とは、女性の外陰部にある左右の「大陰唇」に よって刻まれた縦の裂溝をいう。 性俗語としては「ボボ(開く)」・「ワレメ」・「クレバス」・「縦筋」などと呼ば れる部分を意味する。 これを学問用語に置き換えれば「陰裂」となる。 B 形状 女性の陰部は、脂肪組織に富んだ左右一対の「大陰唇」によって形成されている。 女性が両足を閉じた状態では、左右の「大陰唇」が密着してしまい、外見的には一 条の縦の裂け目に見える。この状態では、女性器の内部は隠されて見えなくなる。 これに対し、女性が両足を開脚すれば、密着していた左右の「大陰唇」は離反し、 「陰門」の形状になる。 この状態では女性器の内部構造が外見上も目で見られるようになる。 C 成長と陰裂 女児の段階では、「陰裂」が正面から明瞭にみられる。しかし成人女性になると 「陰裂」が正面から見えないこともある。この点、陰毛に隠されることも見えにく い要因のひとつになろう。 D 陰唇長 これは、「前陰唇交連」から「後陰唇交連」までの長さを意味する。 これをわりやすく言えば「左右の大陰唇が前方で合うところから後方で合うとこ ろまで」の長さである。 その長さには、年齢差、個人差、人種差などがある。しかも、その長さは肉体のお おきさに比例するといわれ、黄色人種より白人や黒人の女性のほうが長い。 E 小陰唇と陰裂 女児に成長段階では、「小陰唇」が陰裂からはみ出すことは稀である。しかし発育 とともに「大陰唇」と「小陰唇」の発育バランスが崩れ出してきて、成人女性にな ると「小陰唇」が顕著にはみ出す例もある。 小陰唇のはみ出し状態は、オナニーや性行為の頻度、妊娠・分娩の有無などによ り変化するとみられる。 5 大陰唇 A 概念 大陰唇とは「恥丘」下部から始まり性器全体をカバーできるように形成され、皺襞状 をした、通常の皮膚系に属する一対の脂肪組織から成る外性器をいう。 ここに「恥丘」は「ちきゅう」と読み、恥骨の頂上を被う脂肪組織である。成人女 性の場合、通常、この部分は陰毛で被われている。脂肪組織であるためその形状は盛 り上がって丘のようにも見られるので性俗語では「土手」ともいう。また女性の恥丘 の盛り上がりを「モリマン」という。このタイプには、恥骨自体が尖っているとか、 この部分に脂肪の乗りがいい場合がある。恥丘は女性らしさに不可欠の体部といわれる。 B 形状 この脂肪組織は、皺襞状をなしている。 その大きさには個人差があり、平均では長さ7〜8cm、幅2〜3cmといわれる。 この組織は性器とそれ以外の体部との境界線をなしている。その外見は平坦に見えるが、 両足を閉じると見えにくい。両足を開脚すると、性器を取り巻く陰毛が生えている、色 素が沈着した部分が「大陰唇」なのである。 女性を後ろ向きに立たせ、わずかに腰を曲げさせれば「大陰唇」をよく見ることがで きる。 C 機能 この「大陰唇」は、膣口や尿道口を保護する機能を担っているものと考えられる。 なぜなら女子胎児期からすでによく発達して性器をカバーしているからである。 この脂肪組織は通常の皮膚系の延長としてに進化したもであるから、「小陰唇」が 常に閉じられている状態を保つための土手の役割を担っているとも考えられる。 さらには、性交時におけるペニスのピストン運動などによる男女の骨盤同士の衝突を緩和 しているともみられる。 D 小陰唇との区別 ときには「小陰唇」を「大陰唇」と勘違いすることもある。 この認識は「クンニリングス」ともかかわりをもってくるので、正確な観察テクニックに より両者の区別を正確に認知しておくことが大切である。 E 性的技術 そもそも「大陰唇」は、陰毛同様のアポクリン腺が存在しているため、「性的臭い」を発 している。これを嫌う人もいるが、「松葉のような臭い」という人もいる。 このことから「大陰唇」も性的興奮にかかわりがあるとみられるのでパートナーを愛撫し てゆくときの性的技術としては、いきなり「小陰唇」にかぶりつくのではなく、まず「大陰 唇」をソフトに愛撫してから、おもむろに「小陰唇」の愛撫に辿りつくというテクニックが 大切となる。 6 小陰唇 A 概念 ここに「小陰唇(ラビア)」とは、「大陰唇」の内側に位置し、襞状をしている、一対の襞組 織を成す外性器をいう。 B 形状 この「小陰唇」は襞状をなしており、左右一対の薄茶色の花弁のように見える。その形状に は個人差が大きく千差万別である。その長さは全体で5cm前後である。その高さは2cm前 後で、一片の厚みは0.5cmといわれる。 この「小陰唇」の色には個人差があり、成人女性に場合、薄茶色から濃い焦げ茶色までさま ざまである。 日本人女性のほとんどが色素沈着を示している。 性行動の経験と「小陰唇」の色の関係もいくらかありうるものとみられる。しかし明確な基準 を設定することは困難である。 この「小陰唇」には独立脂肪腺が発達しているが、毛とか汗腺はない。 この「小陰唇」の皮下組織には、静脈網が発達していて、その深部には前庭球がみられる。 このため性的刺激により充血し膨張することで、クリトリスに類似している。 その一対は必ずしも左右対称とは限らないが、その上部にある「陰核包皮」と結びついている。 ただこの「陰核包皮」とは、別の組織である。 C 小陰唇の整形手術 小陰唇の形状は、男性の性的興奮を刺激するだけでなく、女性自身にとってもその姿が関心事に なる。そこで、自分の小陰唇の姿が気に入らないとして整形手術をする女性もいる。 D 機能 この「小陰唇」は、「大陰唇」とともに膣口や尿道口を保護する。そのうえ放尿時に尿が発散す るのを防ぐ機能をも担っている。 それだけでなく、性行動にもかかわりがある。その花弁のような形状が男性の性的興奮を刺激す るほか、ペニスを膣に挿入したとき、そのペニスに撒きつくような刺激を与える。 7 性感帯としての膣前庭 A 概念 ここに膣前庭とは、「陰裂(cleft of venus)の内側に位置し、左右の「小陰唇」により閉じられ 保護されている窪みの部分をいう。 B 形状 このように通常は、小陰唇によって囲まれているため、指で広げないと目では見えない部分である。 この部分は、三角形の粘膜が中心の性器領域に属する。そのほとんどがピンク色の粘膜状でスキー ン腺、バルトリン腺、膣液などにより常に濡れている。 C 性質 この「膣前庭」には、クリトリス、外尿道口、膣口、スキーン腺、バルトリン腺が含まれている。 この膣前庭は、クリトリスを含め、常に性的に感じやすい性感帯になっている。 D 自浄作用 その構造は入り組んでいるため、さまざまな小さな腺の穴の中に性感染症などの細菌が繁殖しやす い。そこで細菌の侵入を防ぐ防衛機能として自浄作用をはたらかせている。 この部位は傷つきやすく、細菌に汚染されやすいので、いつも清潔にしておくことが大切である。 E テクニック このように「膣前庭」には、繊細な尿道口や、さまざまな分泌腺があるので、最も鋭敏な性感帯と はいえ、その愛撫のテクニックにはデリケートな神経が求められる。 たとえばできるだけ指による接触を避け、舌先での愛撫が望ましい。 そして排便のときのペーパーの使い方も、雑菌の侵入を防ぐため前から後ろに拭くことが大切であ る。具体的には、膣側から肛門側に向けて拭き取るように心がけることを推奨する。 8 膣口 A 概念 ここに「膣口」とは、「膣前庭」の最下部に位置し、身体の内部にそなわっている膣の入り口をいう。 B 組織 この膣口は、筋繊維が束になった強靭な筋肉組織になっている。この点で内部の膣壁が虚弱な筋肉組 織であるのとは異なっている。 膣口は、柔軟で強靭な粘膜組織になっている。いわゆる「8の字筋」がその周囲を取り巻き伸縮自在 な組織としてその妙味を発揮する。 C 機能 この膣口は、通常時には月経時における経血の出口となる。このほか子宮や膣内分泌液の出口ともなる。 そのうえパートナーとのセックスのときにはペニスの挿入口となるし、出産時には産道の最終口となる。 このように「膣口」は多様な出口機能を果たしている。 D 膣口の場所と性技術 このような膣口の所在する場所がセックスとのかかわりで論議される。 いわゆる性俗語としての「上つき」・「中つき」・「下つき」が「これである。ただこれもどこを基準 にして計測評価しているのか曖昧である。 権威ある研究者からの報告によれば、白人女性、日本人女性とも「中つき」のタイプが多いという。 実際のセックスの体位における「正常位」の場合には、膣口が上向きのほうがペニスを挿入しやすいと いえよう。 そしてクリトリスを恥骨により自然に刺激することができるというメリットも考えられる。 膣口の所在する場所によって女性の性器としては「名器」といわれるかどうかを論議するよりも、もっ と大切なことは、現に存在する膣口の場所を正確に確認し、それに適した性技術としてのテクニック工夫す ることが望ましい。 E 膣口と処女膜 実際にセックスをしたことがない未経験者の場合には、膣口と同時に処女膜を観察することができる。 膣口はセックスの世界への関門であり境界線だからである。 これに対しセックス経験後でも数年間にわたり処女膜が残存しているという実証例もある。 9 尿道口 A 概念 ここに「尿道口」とは、「膣前庭」の中ほど上部に位置し、尿を排出する尿の出口をいう。 B 組織 尿道口の左右にはスキーン腺(傍尿道腺)があり、この腺から分泌される分泌液により尿道入り口の感想を防 ぐ仕組みになっている。女性の尿道は短く、直線的になっている。このため雑菌や大腸菌が侵入しやすく、急 性の膀胱炎などを起こしやすい。 だから尿道口の周辺は清潔にしておくことが大切である。 C 排尿のメカニズム それでは排尿のメカニズムはどうなっているのか。 このメカニズムは、腎臓の浄化作用により排出された尿は膀胱に滞留し、尿道を経て尿道口から排出される、 という仕組みで、男女ともそのメカニズムは同じである。 ただ尿道の長さと角度において男女間では大きな差異がある。 女性の尿道は短いのに対して、男性の尿道は長い。 D 尿道口お性感帯性 それでは女性の尿道口も性感帯に属するのであろうか。 尿道口にも性感があるかどうかは明らかではない。だが、尿道口は性感帯の代表的存在といわれる「膣前庭」 の中ほど上部に位置しているのだから、やはり性感帯のひとつと考えるのが自然であろう。 E 尿道自慰の危険性 尿道に異物を挿入して性的快感を味わうマスターベーションを「尿道オナニー(自慰)」という。 男性の場合には、尿道に異物を挿入し、「前立腺」への刺激をしてゆく。女性の場合には、充満感や異常性行 動のスリルを味わうことになろう。女性の場合には尿道口に対する刺激、その刺激により排尿したくなるという、 くすぐったい感覚などが楽しめるという。 実際には、綿棒、マチ針、ヘアピンなどで尿道口を刺激するとか尿道口をにこれらの異物を挿入して軽く動か したりするらしい。 しかしこの「尿道自慰」は尿道の粘膜を傷つけ炎症を起こしやすい。傷ついた部分はそれだけ狭くなる。男性 の場合、尿道が恥骨の下で急角度に曲がっているので、硬いものを入れると、その部分を損傷する危険がある。 とりわけ女性の場合には、尿道が短いため、やっているうちに異物が膀胱にはいり取り出すことができなくなる 危険性が指摘されている。
○ 花園家の日本間 20畳敷きの日本間では青畳が敷き詰められ藺草(いぐさ)の薫りが漂っている。 和服姿の花園佐保子が襖を開けて入ってくる。 花園佐保子は床の間を背にして紫檀(したん)のテーブルに向かって藤原教授の著書を 読んでいる。 佐保子はその著書に栞を挟みページを閉じる。 うっと背伸びをした佐保子は、座布団を枕に仰向けになって天井を見つめ、呟きはじ める。
・・・・あたし、花園と結婚するまでは、藤原先生の著書に詳しく書かれているような専門的な性の知識はあまりなか ったわ。この節を読んだだけでも、随分お役にたつことがおおかったわ。あたし、生娘のころ、風呂にはいってからだ を洗っているとき、乳房に触れるといい気持ちになれたわ。あるとき、湯上りのソフトなピンクのタオルが下腹部に触 れたとき、素敵な快感が全身に走ったの。そのとき、右手の中指でクリトリスに触れたら一層、素晴らしい性感が走っ たの。そころはクリトリスなんていう言葉はしらなかったわ。藤原先生の著書によれば、そのクリトリスこそ性感帯の 女王様なんだわ。これまであたし、自分の陰部を際立ってよく観察したこはなかったの。 いまから浴室に入って鏡でよく確かめてみることにしよう・・・・
佐保子は起きあがり、襖を開けて廊下に出るとその奥の浴室に向かった。 脱衣室で衣服を脱ぎすてた佐保子はゼネラルストリップになって洗い場に降りた。
○ 花園家の門前 白光がする生地に黒砂を散りばめた花崗岩の門柱に[弁護士 花園]と金文字で 刻まれた表札が浮かびあがる。 門柱の脇には金木犀(きんもくせい)の幹が風に揺れている。 台風一過で爽やかな秋晴れになった。 強風に煽られて金木犀の黄金の花が大量に散ってしまった。 花園家の門前の道路には、散り果てた金木犀の黄金の花弁で黄金の絨毯が敷き詰めら れている。
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