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作品名:洋平君の好きな人 作者:抹茶小豆

最終回   1

 
 それは公立高校のなんでもない日常の風景。
昼食を終え、教室の真ん中で数人の男子生徒が談笑している。
 
「あ〜彼女欲しい!」
二宮は椅子にもたれて天井を仰ぐ。
 
「そうだ!合コンしよ。合コン」
名案だとばかりに二宮は手を打つのだが、
その時、洋平の心に一人の女性の顔が浮ぶ。

「俺は・・・いいよ。」
そう言って寂しそうに微笑むと、二宮がしたり顔で、洋平を覗きもむ。
 
「はは〜ん、さてはお前好きな人いるんだろ?」
図星だとばかりに、洋平は赤面する。
 
「誰だ?誰だ〜?」

好奇心をむき出しに、友人たちが洋平に問いかける。
 
「ヒントくれよ、ヒント。」

「え・・・っと、年上の女性、なんだ。」
洋平は言いにくそうに口ごもる。

「あっ分かった、3年の佐々木先輩だろ?やっぱり、あ〜俺も分かるわ〜胸でっかいし・・・」
 木村がさも納得と言った様子。

洋平は静かに首を振る。
 「俺の好きな人は、もっと年上だし、胸ももっとでかい。」
 「あっわかった、英語1の益田理恵ちゃん?」
 「洋平、お前〜教師を好きになるなんて、けっこうやるな!」

なにがやるのかは全く検討がつかないが、友人どもは洋平を肘でつつく。
 「ちがうよ」
洋平はまた静かに首を振る。

その仕草、表情は、彼が苦しい恋をしているかのような、恋にやつれた艶めいた風情を漂わせ、友人たちを哀れませた。

「俺たち、何でも協力するから!言ってみろよ!」
「望みの薄い、恋なんだ」

「そんなこと、告白してみなきゃ分からないじゃないか」
友人たちは真剣に洋平を励まそうと、必死だった。

「いきなりは、無理でもまず友達から、とかさ。」
「友達も、きつい・・・かな」
「どうしたんだよ、その人彼氏がいるのか?」

いや、亭主と子供と・・・孫も、多分。

俺の好きな人は・・・
『購買部のおばちゃん』


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