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作品名:眠り姫 作者:抹茶小豆

最終回   1
「眠り姫」
 女の子はみんな、お姫様なのである。

それは、ある晴れた日の昼下がり。
姫は王子様を待ちぼうけ。
頭から布団を被り、ふて寝の真っ最中。

「ひどいわ。
 時間に遅れるなんて」

姫は王子様に恋をしたのかもしれない。
それは、淡い恋。
咲き初めの花のような・・・。

普段なら、笑って許してあげられるのに。
なんでだろう?
なんで、だろ?
そして、気付く。
そうか、
私はあの人を待っていたんだ。

あの人の笑顔、
あの人の声を、

「はやく、いらして・・・」

やがて足音が聞こえ、姫の王子様が姿を現す。
王子様は、ふて寝の姫の耳元に低く囁く。
「姫、遅れて申し訳ありません」
それは、心を鷲掴みにするような美声。
少し長めの前髪から覗く、端正な眉目。

あの人だ。
私の王子様・・・。

姫は猶も拗ねている。
ぷうと口を膨らませた瞬間・・・。

ガコっ

王子は苦笑する。

「姫、入れ歯が外れています。」

姫の名前は、山本梅子 九十二歳。

王子の名前は、速見 隆 二十三歳。

職業はホームヘルパー・・・2級なのであった。


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