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作品名:定子 92歳☆ 作者:抹茶小豆

最終回   コスモスの花の咲く頃に
ピンクや白の愛らしいコスモスにおばあさんはなにやら話しかけている。
「こら!あんた畑からはみ出したらあかん。」
私はふと相談員の正子さんの言葉の意味を考えた。
「私はねこのご老人たちひとりひとりの性癖をみて時々胸が熱くなるの。
それはそのひとたち一人ひとりの歩んできた人生そのものなの。そしてそれを愛しく思う」

正子さんはどうしてそういう風におもえるのだろう。
紙おむつお一生懸命洗濯するおばあさん。
ティッシュペーパーを大量に溜め込むおじいちゃん。
それって介護する側にとってとっても迷惑だし、現代社会にはあわないこと。
だけど・・・
「おばあちゃんが私のふるさとだから。」
ふいにそう思った。
私は大阪で育った。田舎なんてしらない。
だけどあなたの作ったおにぎりが、お漬物が、
あなたと過ごした思い出の一つ一つが私にとっての「ふるさと」だから。

あいかわらずコスモスが風を受けてそよいでいる。

「はあ?おばあちゃん、耳が遠くて聴こえへんわ。」と首をかしげてみせる。
私は苦笑し、車椅子を押しながら思う。
「愛しいね」


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