おばあちゃんの手術は成功し身体は少しづつ回復してきたのだが、おばあちゃんはまだ一人で起き上がることも出来ない。普通の人なら、日にち薬でなんとかなるのだが、私の中の直感は告げていた。 「このままでは確実にボケる」と。 私は出来る限り病院に顔を出すように心がけた。 退職は決まっていたが、引継ぎやらなんやら色々大変だったのだが、なんせおばあちゃんをぼけさせまいと必死だった。
介護・・・と言えるほどでもないが、老人について私はあまりにも知らなさすぎた。 オムツにもいろいろと種類があり、動けない人はオシメタイプのものを使い、動けるようになるとリハビリパンツというものを使う。量が多い場合は尿取りパッドを使って対応しすることも知った。
毎日が勉強だった。 そして毎日が戦いだった。
おばあさんは元来明るい超ポジティブ人間なのだが、このときばかりは寝たきりの生活に辟易とし、気力を無くしていた。なんとか元気になってほしいと、暇を見つけては車椅子に乗せ、病院を散歩したものだ。 おばあさんと一緒に見た病院の小さな中庭が、妙に哀しかった。 「元気づけなきゃ」 と一生懸命明るく振舞うが、「おばあさんはもう寝たきりになってしまうかもしれない。」と思うと未来に希望がもてなかった。
しかし・・・部屋に戻ってみると、隣のベッドのおばあさんが自力で立ち上がり、そして車椅子に自分で移ったではないか!!!話を聞くとそのおばあさんも大腿骨の骨折で入院し、手術したのだが、金具がどうにも適合せず、いちどその金具を取り出し、改めて人口骨を入れ、2ヶ月を要したが無事回復し今に至るそうだ。
「うちもイケるかも」密かに心に一筋の光が差し込んだ瞬間だった。
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