お兄さんはめっちゃボロいスターレットに乗っている。 赤信号でたまにエンジンが止まってしまったり、エアコンの風気孔から煙がでてくるというちょっぴり恐ろしい車だ。 兄の横顔を見ながら、なぜだか私の頭の中を今までの人生が走馬灯のごとく駆け巡った。 違う!死ぬのは私じゃないの!!! なぜだか私は私のなかの潜在意識を必死に説得している。 今から思えば少なからず、私も無言のまま動揺していたんだなと思う。
幼い頃、そういえば我が家のピンチのときにはいつも傍らに兄がいたなあとふと思った。 小学6年生の夏休み、私は親戚の家に遊びに行き、その帰りに滋賀県の親戚の家で家族と会うことになっていた。だが家族は誰もおらず母親が急病で倒れたことを知らされた。 名古屋と東京の親戚の家に行き、ディズニーランドの夢のような世界を味わったばかりで、私は地獄を見た気がした。その後母親は2ヶ月に及ぶ入院生活を送り、その間3回医者から死を宣告されたのだが、奇跡的に復活し、現在にいたる。 そして私はいまだに旅行に行くのが少し恐い。
少しして、兄が私を迎えに来てくれた。口数も髪の毛もあまり多くない兄だが、そのとき物凄く兄の顔を見てほっとしたのを覚えている。 兄が3年前に結婚して以来、ちょっぴり薄くなった家族の絆と、さらに薄くなった彼の髪の毛に思いを馳せ、わたしは少しセンチメンタルな気持ちになった。
車は走る。 ボロいけど。
しかし入り口が見つからない。 ほんま、呪いでもかかってるんちゃうか? と思うくらい、入り口にたどり着くのが大変だった。
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