うさぎ追いし かの山 小鮒釣りし かの川 夢は今もめぐりて 水は清し ふるさと
この曲を聴くと痴呆老人も思わず涙を流す名曲「ふるさと」
はて、私たち平成人にとって「ふるさと」っていうのは一体何処なんだろう。
梅雨も明けたんだかどうなんだか、鬱陶しい天気が続いている。 7月1日仕事場に一本の電話が入った。その電話は近所で一人暮らしをしている91歳の母方のおばあちゃんのヘルパーさんからだった。
仕事場とはいえ、うちは法律関係の自営業で父と母と兄と私。そして事務員さんが一人いるだけの小さな事務所。副業でとある組合の事務も兼ねていた。 もっぱら法律関係が父と兄と事務員さん。母と私は某組合の事務を主に担当していた。
「おばあちゃんが倒れた!」 家族の各々が然程驚かず、 「来るべきときが来た」と表情を強張らせた。
私は内心気が重かった。 母親は自分の母であるおばあちゃんと物凄く仲が悪い。
そりゃあさぁ・・・ 幼少期からの問題がさあ・・・ 色々あるんだろうけどさあ・・・
私は上目遣いに母親の様子を伺い 「一応さあ、自分の親なんだし、病院行きなよ。」 というと
普段は父を尻に敷きまくっている母親が、このときばかりは妙にしおらしく、 父のシャツをつまみ、蚊の鳴くような声で 「一緒に来て」 と言った。
やめろ〜母親、この非常事態に父親に頼み事なんかするな〜イライラするだけやぞ! 私は内心「今ので3歳は老けた」と思うほど気を使った。
父親は状況判断ができない。悪い人ではないのだが、 「非常事態に父親には頼み事ができない」 それが我が家のジンクスだった。
案の定 「嫌や!一人で行け!」と言い放った父に ほれ見てみぃ。と私は胃が痛くなった。
が、5分後、思い直して 「ほれ、早よ支度せい、病院行くで!」 と言って母と二人で事務所を出る父を見送りながら 「父、やるじゃん」と私は父を見直した。
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