20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:定子 92歳☆ 作者:抹茶小豆

第1回   おばあちゃん倒れる!
うさぎ追いし かの山
小鮒釣りし  かの川
夢は今もめぐりて
水は清し ふるさと

この曲を聴くと痴呆老人も思わず涙を流す名曲「ふるさと」 

はて、私たち平成人にとって「ふるさと」っていうのは一体何処なんだろう。

梅雨も明けたんだかどうなんだか、鬱陶しい天気が続いている。
7月1日仕事場に一本の電話が入った。その電話は近所で一人暮らしをしている91歳の母方のおばあちゃんのヘルパーさんからだった。

仕事場とはいえ、うちは法律関係の自営業で父と母と兄と私。そして事務員さんが一人いるだけの小さな事務所。副業でとある組合の事務も兼ねていた。
もっぱら法律関係が父と兄と事務員さん。母と私は某組合の事務を主に担当していた。

「おばあちゃんが倒れた!」
家族の各々が然程驚かず、
「来るべきときが来た」と表情を強張らせた。

私は内心気が重かった。
母親は自分の母であるおばあちゃんと物凄く仲が悪い。

そりゃあさぁ・・・
幼少期からの問題がさあ・・・
色々あるんだろうけどさあ・・・

私は上目遣いに母親の様子を伺い
「一応さあ、自分の親なんだし、病院行きなよ。」
というと

普段は父を尻に敷きまくっている母親が、このときばかりは妙にしおらしく、
父のシャツをつまみ、蚊の鳴くような声で
「一緒に来て」
と言った。

やめろ〜母親、この非常事態に父親に頼み事なんかするな〜イライラするだけやぞ!
私は内心「今ので3歳は老けた」と思うほど気を使った。

父親は状況判断ができない。悪い人ではないのだが、
「非常事態に父親には頼み事ができない」
それが我が家のジンクスだった。

案の定
「嫌や!一人で行け!」と言い放った父に
ほれ見てみぃ。と私は胃が痛くなった。

が、5分後、思い直して
「ほれ、早よ支度せい、病院行くで!」
と言って母と二人で事務所を出る父を見送りながら
「父、やるじゃん」と私は父を見直した。


次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 942