骨の芯まで寒さがキツい2月の日本。メイはマイエット、修二と弟の昭平と共に日本に来日した。
成田空港からは車で神奈川の川崎市へと向かう。マイエットたちは川崎市に1DKのアパートに住んでいる。6畳の和室と2畳の台所。メイにとっては初めて嗅いだ畳の匂いはとても新鮮だった。
メイ!!
メイはマイエットの声で振り向いた。
今日からここが私たちが一緒に住む所よ。 あなたを引き取ってくれたパパに感謝しなさい。
フィリピンにマイエットたちが滞在していた間、メイは修二のことをパパと呼ぶように自然となった。 メイは父親ができたことが凄くうれしく満面の笑みでマイエットに頷いた。
あなたの寝床はここ。毎日しっかり家のことを教えるからやりなさいよ!!
マイエットは襖の下段部分を指した。下には新聞紙が敷かれており、寂しい冷たい感じがした。
ママ、暗くて怖いよ。
メイは襖の中で寝る事を拒んだ。その時、
がっ!!
鈍い音がメイの腹部を襲った。マイエットはメイのお腹をおもいっきり蹴ったのだ。 メイは声にならないほどに悶える。
メイ!!親の私たちの言うことが聞けないの?!口答えするんじゃないよ!! あんたを守るおばあちゃんもおじいちゃんもいないからね!!
マイエットはメイを繰り返し蹴りあげた。メイは必死に小さな身体を激痛に耐える事しかできなかった。 どれくらいの時間が経ったのだろうか...
メイの意識が戻った頃には外は真っ暗だった。そして起きたと同時に身体に走る痛み、冷たい襖の中でメイは小さくなりながら唯一与えられた小さなタオルケット一枚を自分にかぶせて恐怖と痛みを必死に堪えた。 部屋の中では川の字でマイエット、修二と昭平は暖かい布団に包まりながら寝ている。
朝、ご飯を食べてからまだなにも口にしていないメイは空腹にも必死に耐えていた。
たった四才の少女は日本に来日したことにより自分が今まで祖父母と暮らしていた生活とは一転して今まで味わった事がない恐怖に怯えている。この恐怖がまだ序の口であることも知らず...
窓の外は月の光が照らしており、その光を眺めながらメイはまた眠りに入った。
翌日からは朝早く起きてメイは両親と弟のご飯を作らされ、家の掃除、洗濯、弟の世話とこき使われた。冷たい水が小さなメイの手に激痛が走る。毎日メイはマイエットの言いつけどおり必死に家事をこなした。メイがご飯を作っても暖かいご飯を食べられる事はできない。マイエットたちが寝静まったあとにメイは食べ残しにありつける。
新しい食材などに手をつけたらメイはひどい暴力にマイエットにあっていた。ちゃんと家事をこなさない、ちょっとした失敗でもマイエットは容赦なくメイを痛めつけた。それがこわいためにメイは必死にマイエットの機嫌を損なわないようがんばった。
マイエットはメイを一度もアパートの外に出す事はなかった。そのためメイは日本に来てからアパートの外にすら出させてもらえずずっと家の自分の寝床である襖にいるか家のことをするために部屋にいるかの二通りだ。そのためメイは外がわからない。唯一見れる外の景色は部屋の窓の景色のみ。その上メイはマイエットが家に誰かを招き入れている間、メイは必ず襖の中に息を潜めなくてはいけない。
マイエットはメイという娘がいること自体隠していた。唯一メイにとって楽しみなのは修二がメイに隠れてくれる甘くておいしいパンを与えてくれるときだ。そんな生活を続けて行くうちにメイはどんどんやせ細っていき4歳児とは思えないほどの餓鬼のような状態だった。その上、話す相手もいず、自然と言葉というものを上手く発せられない子に成長していった。
そんな状態でもメイは必死に両親からの愛情を得られる事を信じて我慢した。メイは、どんなにつらくとも両親に愛される事しか望んでいなかった...
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