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作品名:季節はずれの白い花 作者:甲本 森

第3回   湯船さんへの手紙
湯船由貴子様

 
 またお手紙します。

 別に向上心があるわけではないのです。
 私が、年甲斐もなく、やたら英検2級を目指したり、漢字検定を受けたりするのは、根底には、自信喪失状態にある自分を鼓舞したいからなのです。
 英語も漢字も、勉強している時は集中するし、集中すれば、現実を忘れることができるし、目標の級がとれたら、自信になります。
 学生の時は勉強しなかったのに、今こんなふうに勉強するのは、たんなる現実逃避なのです。

 浮気をされるのは、存在を拒否されたのと、同じです。
 浮気をされると、気付かないうちに自信を失い、自分がなくなります。
 ボディブローを打たれ続けているように、消耗し、委縮し、磨滅し、やがて消滅するのです。
 自分を確かめるため、自分が存在していることを実感したくて、ベースを弾き、ライブで汗をかき、歌ってたんです。
盲目の人が触感だけが頼りのように、両手を前に出してたどりつき、なでまわしを、想像しながら、手でみるように、ライブで演奏することだけが、自分の存在を、形を、輪郭をなぞる方法だったのです。
 
 本当に最近です、私がこんなにも自信喪失状態にあることに気づいたのは。
 知らないうちに、私は何もする気がなく、何をやってもだるくて、どうでもよくって、寝て食べているだけでもしんどくて、息をしているだけで気力はなく、ひょっとしたら私はもうすぐ死ぬんじゃないかと思ってしまいます。
 おかげで、結婚前45kgだった体重は68kgになり、いまでは、
「ぶた、ぶす、くさい、の三重苦やなあ」
と言われています。 そう、詐欺師とも言われます。
 失礼な話です。 でも、68Kgです。 しかたないです。
 時々、ぼんやりしながら、私は、いったい何をしているんだろうか?どうして、私は生れて来ちゃったんだろう?このまま、消えてしまったらいいのに、と思ったりします。


 スカートをはくとパンストが必要で、それなりの靴が必要です。
 パンプスがいいのか、サンダルがいいのか、同じスカートでも、トップに何を持ってくるかで、足もとも変わってくる。
 昔は、その組み合わせいかんで、全体の印象がかわるのが面白く思われ、少ないアイテムの中で、工夫しながら着こなすのが楽しかった。
 今は嘘のようにそんなことが、面倒くさくて、つまらないです。

 だいたい、最近、服を買いに行かない。
 買いに行っても、試着しない。したくない。 なぜなら、何を着ても似合わない。
 昔は、着たいと思った服は、十中八九、ほとんど似合った。
 服は、着たい人のためにあり、誰にとっても、着たい服は似合う服だと思っていた。
 
 服を買う時は、服のほうが、僕を着てよ!って、私を呼んでいた。
 お金がないときは、試着して、店員さんに、お似合いですよ、絶対いいですよ、と賛美されてから、お取り置きをたのんで、お給料日に買いに行った。

 今は、着たいと思う服を着ても似合わない。 
 無難な、誰が着てもサマになりそうな服を、試着しても似合わない。
 ホントに、何を着ても似合わない。
 悲しいことです。

 でも、せめて、今度神戸に出る時は、スカートはいて、メイクしていくことにします。
 楽しみにしてます。
 ごめんなさい。 愚痴ばっかり書いてしまいました。
 次は、もっと違う私でありたいと思います。
 励ましてくれてありがとう。
 またね

  
                           御子柴 泉


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