20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:季節はずれの白い花 作者:甲本 森

第1回   湯船さんへの手紙1
湯船由貴子様

 
お元気ですか?


 先日は久しぶりの大阪、お天気は悪かったけど、コンサート、おおいに盛り上がり、インパクト強烈、これでしばらく活きていけると、刺激堪能、たいへん満足、善き日だったです。


 帰りの道すがら、随分遠慮のないこと言ってしまったなぁと、反省しました。
 素直に話を聞いていたら、非道い旦那さんに思えて、離婚を勧めるようなこと言ってしまいましたが、言いすぎたと反省しました。
 縁あって知り合った人と離れるのは、特に無理矢理別れようとするのはあんまり賛成できません。
 散々離婚の話をしておいて、いまさら何を、という思いもあるでしょうが、自分から縁切りって不遜っていうか傲慢っていうか、運命に逆らうようでちょっと畏い気がします。
 あなたの痩せた白い顔を見ると、離婚を口にすることで、励ますことが出来る気がして、ついつい言ってしまいましたが、私の考えは基本的には離婚反対なのです。


 わたし自身の方法、悩んでいる時、混乱している時に、平常心に戻るためにすること、参考になればと思い書いておきます。
 ためしてください。

 多重人格関連の本が流行っていたころ、あなたも興味を持って何冊か読んだと、言っていましたね。
 虐待される子供は、苦しさから逃れるため、別人格をつくり、別人格に苦痛を引き受けてもらう、その話を聞いた時、わたしはこころの中で苦笑していました。
 だってわたしは苦しくなるといつも、別人格を創りあげ別人格に慰めてもらっていたのですから。

 自分で自分をカウセリングする、とでも言うのでしょうか、混乱している自分を、突き放して冷静に分析する厳格なカウンセラーを、別人格としてつくりあげていたのです。
 白衣を着た、時代遅れの黒縁めがね。
 今時珍しい無頓着に束ねた黒髪。
 強さ故、孤立してしまう優秀な美貌の女医。
 自分の美しさに気づかず、他人のこころの深淵ばかりのぞいている。
 意地悪なぐらい厳しく、歯に衣着せぬ物言い。
 しかし、この人のカウンセリングで生還した人は数多にのぼる。

 わたしはまな板のコイ。
 開かれ、分類され、検査され、表から裏まで、隅々まで観察される。
 実験のための小動物のように、いやモルモットどころか、物のように。
 で、先生は職人のように、容赦なく徹底的に分析する。

 わたしの苦痛は何が原因?
 わたしは何をしたい?
 何をどのような状態にしたい?
 徹底的に分析し、苦痛の原因と解決の方向性を導き出す。


 人間ひとりでは生きていけません。
 ですが自分の人生は自分のものです。
 誰のものでもない。
 自分ひとりのものです。

 自分の責任で自分の人生を生き、そして自分ひとりで死んでいくのです。
 どんな金持ちでも、死ぬ時はひとりで死ぬでしょう。
 たくさんの取り巻きが周りで見物していても、死の恐怖や寂しさは誰も引き受けてくれません。
 生きたくて生きたくて、どんなに大金を積んでみても、代わりに死んでもらうことも出来ないのですから。
 死は孤独で、平等なのです。

 人はひとりで生きていけないけど、ひとりで死んでいく。
 だから人はみな、おそろしく孤独なのです。
 結局、自分の人生は自分ひとりの責任で、よりよく生きていくしかないということです。

 自分の不幸の原因を他人のせいにしているうちは、幸福になることはできません。
 より不幸になるだけです。
 責任転嫁は、不幸を呼ぶだけ。
 不幸は不幸を呼び、不幸スパイラルです。
 そう、自分の人生、自分が責任を持たないと何の解決にも至りません。
 ヒトのせいにしても仕方ない!ってことです。

 と同時に、他人は自分の予想通りに動かない、自分の思い通りにはならない、と認識すべきです。

 わたしなど、自分自身のことさえ、思い通りにはなりません。
 今日はこれこれをしようと予定を立てても、そのまんま全部を消化することなど、ほとんど出来ません。
 他人が自分の思い通りにならないのは、当たり前のことなのです。


 何度も書きましたように、人間はひとりでは生きていけない。
 けど他人をあてにして生きても幸せになれない。
 自分自身主体的に生きていくしかないのです。
 で、どんなふうに、どの方向に生きていきたいのか、繰り返し自己分析し倒すのです。
 しまくるのです。


 矛盾したこと書いているので、分かってもらえるかどうか、表現力の乏しいのが歯痒いのですが、原因、方向性を徹底追求していけば、何か得るところあるかと思います。
 歩き出す道が見えだしたら、半分解決みたいなところありますから。

 的はずれな事を書いたかも、抽象的で役に立たないと思っているかも、と恥ずかしく思う部分も多々ありますが、読んでもらってこころ軽くなってもらえればと思い投函します。


 私、とうとう体重が65キロになりました。
 主人には、ぶす、ぶたにプラスして、最近詐欺師と言われてます。
 痩せたあなたが少々うらやましく思いました。
 すみません、あなたにとっては、健康的に体重が減ったわけではなく、悩んだ末の、つらいことだったのに、失礼な言い方だったかもしれません。


 今度は会う時は、お互いもっと良い報告ができればよいですね。
 また会いましょう。
 今度は神戸でね。


  10月4日                    御子柴泉


次の回 → ■ 目次

■ 小説&まんが投稿屋 トップページ
アクセス: 1346