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作品名:とりあえず 作者:一ミリ

最終回   5
勝人の葬儀が終わった後、喫茶店で落ち合う手筈になっている。 
 清二は三日前、謎の男からの電話に軽くパニック状態に陥った。
 「勝人をやったのは俺だよ。奴の葬儀が終わったら、葬儀場の出口から右100メートル程まっすぐに歩け。看板が出てるからすぐ分かる。喫茶店だよ。そこで待っている」
 用件だけ告げると謎の男はすぐに電話を切った。
 声には全く聞き覚えがない。
 勝人は殺されたのか? それともただのいたずらか? でも、いたずらだとしたら何のために?
 そもそもこのボケナスは何所のどいつなんだ?
 葬儀が始まって終わるまで、延々と考えてみたものの全く見当がつかなかった。
 葬儀までは仕事が忙しくて考える暇もなかったのだ。
 行くしかしかないだろうというのが結論だった直感で。
 だが、不安も覚える。
 もしかしたら、殺人犯かもしれないのだ。勝人は軽く身震いを覚えた。
 喫茶店に入ったとたんに、ナイフでぶすりなんてことないだろうな? 
 と、出口に向かってノロノロと歩いている所で、
 「清二、久しぶりじゃない」
 振り返ると霞が手を振りながらこちらへ歩いてくる。
 「話しかけるタイミングがなくってさ、終わるの待って声かけようって」
 「ああ、3年ぶりぐらいか? 変わんないねお前」
 「あんたもたいしてかわってないじゃない。お互い様よ」
 「元気かって聞くまでもないようだな」
 「そんな常套句はくような奴に用なんてないの」
 「こりゃ失礼」
 「でもなー勝人が死んじゃうなんてね。自殺なんて。そんなことから一番縁が遠い奴だと思ってたのに」
 「時は人を変えるもんなんだよ」
 「まったく、あんたは時の洗礼なんてまるで受けてないみたいね。誰でも思ってることをもっともらしく言うとことか全然変わってない」
 「ところでな」

 清二は霞に電話のことを伝えた。ええ、なにそれ。何なの? さぁね、俺もわかんないよ。でも、とりあえずは行ってみるよ。ちょっと、私も行きたいんだけど。やばいかもしんないぞ。そんな意味ありげに嘯くバカにあってみたいじゃない。殺人でもいたずらでも度がすぎてるよそれはー。わかったよ。まぁ昔のよしみだ。
殺されたらそれまでだ。私は死ぬ気なんてないけどね。返り討ちだって。ほんと、お前、気が強いのは変わんないね。

 どこにでもあるような古ぼけた喫茶店だった。
 清二はドアの前で逡巡した。目をつぶり、深呼吸をした。
 ところで、霞は臆することなくドアを開け「何してんの? 度胸ないわね」と軽い侮蔑のまなざしを清二に一瞬向けた後にずかずか入っていった。
 女は度胸だねぇ、と思いながら霞の後を追った。
 店内には一人として客がいない。
 音楽も流れていない。
 マスターすらいなかった。
 「不用心だな」
 「何か不気味ね。やっぱり逃げた方がいい気がしてきた」
 「へぇー可愛いとこ残ってんだな」
 「うっるさいなぁーー」

 カウンターに隠れていた男はくだないおしゃべりにとことんうんざりしていた。
 とっとと終わらせてしまいたかった。
 この銃をぶっ放して二人を殺し、開放されたかった。
 だが、やり始めたのは俺だ、この俺なんだ。
 特に責任感があるわけでもないこの男は、自分がやりたい放題やった後の後始末など考えてみたこともなかった。
 だが、さすがにこのことは放り出してしまうわけにはいかない、という似合わない使命感を抱いていた。
 やるか。
 「お二人さん、フリーズだ」

 不意にカウンターの下から現れた男に驚愕して、清二と霞は固まった。
 フリーズなんていわれなくても、勝手にフリーズしたことだろう。
 「そこに座れ」
 二挺拳銃で両方に狙いを定めている20代半ば程の男はいった。
 大人しく座る。
 「これを読め」
 4枚の紙切れを渡された。二人で読む。
 というか読まざるを得なかった。拒否すればすぐさま頭を打ち抜くに違いない、目がいってやがる。
 と、清二と霞はほぼ同時にそう考えた。
 
 「で、何なんだこのふざけた作り話は?」清二は本気でバカばかしく思いながら吐き捨てた。
 相手が銃を持っていることを忘れるぐらい憤慨していた。
 「俺はパチンコなんかやったことな…」「なにこれ。あたし勝人と遠距離恋愛なんてしてない。清二と出来てる? 頭おかしいんじゃないの? てか、何でこんな性格悪く書かれてんのーー!」「いや、お前はそんなもんだよ」「はぁ? あんたと勝人の会話、あなたたちの知能レベルがよぉぉぉくでてるよね。いつもこんなんだったじゃん」「勝人はともかく、俺はあんな下品な話し方しないよ」「へぇー死んでるからって押し付けるんだ?」「そもそも、お前からいってきたんだろうが! 何言ってんだよこの淫乱が!」「はぁああああ?大概にしとけよアル中がぁ!!!」「大体この何か意味ありげに出てくる数字、ただのこじ付けで意味なんかないだろうが! 中学生かなぁおい」「あー私も思ったー。誰なのこんなバカな話書いたの。最低ー」

 好き放題に言いまくる二人を目の前にして男はどうしていいかまったくわからなかった。
 こいつら撃っちまっていいのか? なぁおい、いるんだろ。早く指示をだせよ。うるせーよこいつらよぉー
ほんとに。後を振り返る。なぁみてんじゃねぇかよ。とっととどうすりゃいいか教えろっていってんだよ。
おい、お前が指示出さなきゃ終わらないんだよ。言えよ。何やってんだよ。トロトロやってんじゃねーよ。
言え・・・ 

 パン、パン、パン。

 パソコンの液晶モニターに三つの穴。その穴の中心を取り囲むようにアリの巣みたいなヒビ。
 
 お前等、全員うるせーんだよ。静かにしろボケが!


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