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作品名:恋の嵐・甘く切なく 作者:華凛

第1回   辛い日々
ゆうはもう限界だった。
今夜も会う約束をいきなりキャンセル。
たった一言。メールで「今日はなし。ごめんな」

(どんだけ浮気相手が大切なのよ!!
もう別れよう。)


更衣室のロッカーの扉を力まかせに閉じた。
「ゆう!ちょっと・・・・大丈夫?」
隣で化粧なおしをしていた親友の亜季が顔を覗き込んだ。
「あ、・・・ごめん。大丈夫よ」
定時直後の更衣室はすごく混んでいて、ゆうの閉めたドアの音に
ざわめきが一瞬途絶えた。

会社のドアを出て一息つく。タバコに火をつけた。
一緒に出てきた亜季がゆうの顔をもう一度覗き込んだ。

「ねえ、いったい何があったのよ。最近ゆうおかしいよ?
私にも言えないことなの?」
目鼻立ちのくっきりした美人の亜季。
もう3年くらい商社マンとつきあっているらしい。
来年当たり結婚するんじゃないかって
そんな雰囲気。


(それに引き換え私は。。。。)
亜季の幸せそうな彼氏との話を聞くたびに、少しだけいらだつ自分がいて
それも本当にいやだった。


ゆう、鈴森ゆう。今年27になる。
同じ会社のエリートサラリーマン、大野敏紀(としのり)と交際して
もう3年がたとうとしていた。
敏紀はかなりのイケメンで昔から浮いた噂が耐えなかった。
だからそんな彼が交際を申し込んできたときは
『今度は私の番なのね』くらいにしか思っていなかった。

当時彼氏のいなかったゆうは、何度目かの敏紀の誘いにのり
食事をした。
・・・手馴れている。女性の喜ぶツボを知っている。
そう、彼は細やかな気遣いと優しい笑顔で
あっというまにゆうもとりこにした。

そして付き合い始めても彼はそのことはもちろん回りには内緒にしてくれと
繰り返しゆうに念を押した。

同じ会社での恋愛は彼の出世に響く、そういう話をちらっと
敏紀から聞いたゆうは、したがわずにはいられなかった。

敏紀とは同じフロアで毎日のように顔を合わせていた。
今回の春の人事でも所属は変わらず、営業職の敏紀と
営業アシスタントのゆうの位置も変化はなかった。

事務員の32歳の色気あふれる女性、白若みどりと敏紀のやりとりに
最近うんざりしていた。
彼女と敏紀は入社当時つきあっていたらしい。
その話は敏紀本人からも聞いていた。

ゆうの会社はかなり大き目の会社で営業部署が10以上もある。
半期に1度くらいは通勤圏内での移動がある。
もちろん同じ部署にずっといるものもいた。
敏紀は入社してから今の営業所にずっといる。
年はゆうの1つ上だけれど、高卒で入社しているので
もうかなりのベテランだ。

みどりとは入社当時から1年つきあったらしい。
はじめから浮いた噂ばかりの敏紀への不安な気持ちはけせず
ゆうは敏紀との交際にOKするまで
3ヶ月はかかっていた。
その間、毎日のように会いにきて、電話やメールもまめにしてきていた
敏紀。
本気であることを知らせるように、過去の恋愛についても
すべてゆうに話していた。

ゆうと敏紀は半同棲状態だった。
といってもゆうのアパートと敏紀のアパートに半々で泊まりにいくかたち。
近頃はほとんど、敏紀の都合で、ゆうのアパートメインだった。
白若みどりが移動してきてから、わかりやすいくらい
敏紀の来る回数が減っていた。

もう1度や2度じゃない。
3年の間、そう1年に2人は浮気している敏紀。
でも彼はけっしてみとめることはない。

そんな感じでだらだらと交際し続けていた。






「鈴森さん、よろしく。」
社内は人事異動したばかりでなんだかおちつかない状態だった。
春の人事はかなりめちゃくちゃになる。
ゆうの仕事は営業に資料や見積もりを作成するもの。
基本的に1営業所に1人だけれど、そのゆうのアシスタントのほかに
ゆうの会社で扱う機械の専門知識をそなえた
いわゆる専任という職の人間もいた。
その挨拶に、寝不足の顔をあげた。

ほりの深い顔立ち。
切れ長の瞳。
ほっそりとしたあごに、サラサラの髪。
身長も180くらいはあるのか。
彼は自分の荷物を机に出しながら、ゆうのとなりの席にどかっと腰掛けた。
あ、そうだ。専任が変わったんだっけ。

だれだっけ?
「おいおい、誰だっけって顔してんな。」
「・・・あ、いえ。」
ゆうは慌てて、彼の顔をじっとみつめた。
「・・・覚えてないか。」
「・・・すいません。」
「同期なんだけどね。鈴森さん中途だからあまり知らないよね。男性陣はみんなしってるけどさ」
「・・・あ、同期!?」
「そ。今まではぜんぜんはなれたとこにいたから知らないだろうけど
野中一樹。カズでいいよ。同期だしね。よろしく」
本当にさわやかを絵に書いたような男だった。
切れ長の瞳が笑うとさらに細くなる。
でもその瞳は優しくて、なんだか温かくなる。
「鈴森ゆうです。ゆうで、いいです。」
「あはは、だから同期でゆうちゃんは有名だから、知ってるよ」

最近、敏紀の浮気についてばかり考えていて
他の男の人の顔をしっかりみたのなんて、すごく久しぶりだった


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