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作品名:WORLD 作者:sora

最終回   9
「あなたも…私と同じ…そう思ったから、
あんな明け方から相手をしたのよ、
そして…私はあなたに私の心を見つけて欲しくて、正して欲しくて、
あなたに無理矢理に自分の状況を教え込んだの…、
乱暴なことをしたって何度も思ったわ…

ごめんなさい、
でも私達ってお互いにお互いしかいないのよ…
私はあなた以上に、あなたは私以上に、お互いを分かり会える人になんて出会えないのよ、
これはもうあなたも気付いてるはずよ?そうでしょ?

でないと、私達は泣かないわ、
朝日が…世界がこんなにもクリアだったなんて気付かないはずよ?
そうでしょう?私とあなたはまた、いつかこの広い世界のどこかで出逢うわ…
それがきっと運命なのよ、
だから…ここでの「さようなら」を鵜呑みになんてしないで?
私を忘れててもいい…私を見つけだしたとき…私を思いだして、だから…「さようなら」。」


そして、ハルは消えてしまった。

部屋に残された僕は…何も出来なかった。これが悲しいことだと言うことは分かっていた。

でも…僕らの運命はもう…かえることはできない。

いつか…それが何秒に起こることなのか、
何時間なのか…全く分からないがそれでも、
僕らが出逢うことは確実だった。だから…僕はこの「さようなら」を鵜呑みになんてしなかった。

そして、僕の体は軽くなった。細胞は全て生まれ変わり。

日差しは僕の体をつけ抜けていくように感じられた。

僕にとって何もない日々が始まった…。でも…本当に何もない日々ではなかった。

ハルと出逢って僕は僕になることが出来た。

僕は僕として生き始めた。街の雑踏も、人が溢れる街も僕を受け入れ、そして優しかった。
月日だけは僕をさげずむように足早に過ぎていく。

ハルの言葉も記憶は忘れ始めている。
でも、理屈じゃなく心がハルを覚えていた。ハルだけを探し求め、ハルだけを必要としていた。

何ヶ月もして、心の何処かで寂しさが滲み出て…
消えてしまいたいと思うようになった。でも、心にハルがいてくれる。

人から見れば僕とハルの出逢いは、異常かもしれない。
でも、ボクにもハルにも何よりも必要で、
どんなことよりも必然的な出逢いだったんだ。きっとハルは、何処かで出逢うための僕の運命の人。

この広い世界の中で僕とハルの世界は共鳴し合ったんだ。
ハル以外僕にはいない。ハルがいるなら…世界を受け入れられる。

そして、世界は狭い。人ごみが溢れる雑踏で、光り輝く姿を見つけた。

あの夢の中で見た、人。白い服を着た、女性。出逢えた…運命の人。


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