なんと言ったらいいのか…でも確かに彼女のことを僕は知っている。 誰だろう?僕に近かった何者かだ。 でもそんなこと彼女に聞けるわけがなかった。きっと彼女は僕が誰だか知っているだろうから…。
僕と彼女の間に暗黙の了解がいつの間にかできていた。 たった何回かのやりとりで彼女は僕の心の中にスルリと入り込んできた。
だけれど僕が彼女の中に入り込むことはできそうになかった。そして彼女に返信を返す。
「そうかも知れない、だって僕とあなたは何かで繋がっているのだろうから …僕の話を聞いて欲しい…だめかな?」
送信をクリックした瞬間僕は後悔した。
どうして僕は彼女にそんなことを言ってしまったんだろう? 僕が知っているかも知れない人なら尚更言うべきではないのに。そして彼女から返事が来る。
「何時間でも付き合うわ、あなたが話したいことを話して…何も隠してはダメ。 私はあなたの嘘ぐらいすぐにわかる。」
大人の女性を感じさせるような命令形の文章を僕は眺めるしかなかった。 自分から言ったものの何を話したらいいのかもわからない。 僕は返信する言葉を完全に失ってしまった。そうすると彼女から新しく言葉が来た。
「困っているんでしょう?だから私が言葉を引き出すから…素直に答えて…。」
そしてやっと僕は言葉を発する。
「わかった、自分の言葉がみつけられるようになったらちゃんと一人で話す、 だから…少しの間だけ手伝って欲しい。」
これ以上の言葉は出てこなかった。今の僕の精一杯の言葉の固まり…。
そうして彼女からの返信を待っていた。もうすぐ日が昇りそうになってきた。 東の空が微かに色づき始める。そして彼女からの手助けが始まった。
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