20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:海の見える公園にて 作者:さらら

第2回   2
和宏の佑美に対する愛情は、ずっと変わらなかった。次第に、和宏と同じ大学に入学したいと考えるようになった佑美に、和宏は、自分の時間を惜しみなく使い、勉強を見てあげた。大学の勉強も忙しいのに、バイトもし、佑美の相手もし、自分の遊ぶ時間もなかったのではないかと、心配もした。だが、和宏は、
「折角受かった大学だからちゃんと楽しんでいるよ。佑美が心配することじゃ無いよ」
 と笑って答えた。その証拠に、時々、友人を連れてくることもあったし、外泊することもあったのだ。和宏が、大学生活を満喫してくれていることに両親は、少なからず喜んでいた。ただ、佑美は、和宏の最初で最後の反抗について誰にも聞けずにいた。あのときの父の寂しさと怒りに満ちた表情。母の涙。佑美には解らないことだらけだった。 
 佑美も、無事、和宏のおかげで,K大に合格をした矢先に、父の転勤が決まった。
「お父さんを一人だけ行かせるわけに行かないし、佑美ちゃんは、折角大学に合格したし、どうしたらいいのかしら」
 母は、決断できずにいた。母の心配が、何処にあるのか佑美は、知るよしもなかった。 父もまた、決断できず、和宏も何も言えなかった。
「私、お兄ちゃんが居るから大丈夫よ。洗濯もお掃除も出来るし、料理は少し自信ないけど、最近は、何でもそろっているからやっていけると思うの。大学だって遠いところにあるわけじゃないし、それにお兄ちゃんと同じ大学なんだから何とでもなると思うわ。だから大丈夫だよ」
「でもね」
「お母さん達がいないからって、夜中遅く帰ったりとか、遊び回ったりしないよ。だって、お兄ちゃんが居るんだし、怒られるようなことはしないよ」
 三人は、何も言わなかった。父が、顔を上げ、
「和宏、頼んで良いかな。俺が、一人では何も出来ないから問題なんだが、やはり母さんには行ってもらいたいんだ。それで、和宏、お願いがあるんだ。金銭面の援助はするから、バイトを辞めてくれないか。今までみたいに遅くなると佑美が心配だし、なるべく夜は家にいてあげてほしいんだ。和宏の自由を奪うみたいで悪いんだが」
 和宏は、頷きながら、
「解ったよ、父さん。僕で役に立つのなら」
「すまないな」
 父と和宏の言葉の裏にある物は、佑美には、解らなかった。
「佑美ちゃん、困ったことがあったら、いつでも連絡してきたらいいからね」
 母は、出発の朝までそう言い続けた。
「お兄ちゃんが居るから大丈夫だよ」
 佑美は、笑顔で答えたが、
「そうね、和宏がいるものね」
 何となく寂しそうだった。母は、佑美を連れて行きたかったに違いない。
 春休みの間から、和宏と二人の生活が始まった。和宏は、父の言いつけ通りバイトを辞めた。だから、春休みは佑美と居ることが多かった。学校の準備もほとんど一緒に行い、佑美には、和宏が献身的に自分に仕えているように見えた。父の言いつけだからだろうか。和宏だってやりたいことがあるはずなのに、どうしてそこまでするのだろうかと佑美には、不思議だったし、腹立たしく思うこともあった。でも、もしかしたら和宏にとって私は、お荷物なのだろうかと考えることもある。ふと、あの時の話し合いを思い出す。誰も、どうしたらいいか言えなかった。私が、言ってしまったばかりにそう決まったのだ。佑美は、自分がお荷物なのだろうかと思う。自分が和宏の側に残らなかったら、和宏はもっと楽になれたのかもしれない。佑美は、思う。私がわがままだから。でも、佑美は、和宏が好きだから一緒にいたかったのだ。兄に恋をする時期ってあると思う。きっと、それが今なんだと思う。今だけは和宏を独り占めできる。そう思うと此処を離れることが出来なかった。そんな春休みを過ごし、入学式を迎えたのだ。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4604