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作品名:海の見える公園にて 作者:さらら

第12回   12
圭一は、週四回は、バイトをしていた。いつも、夜7時頃からバイトに入る。それまでが、二人の時間だった。佑美は、いつも一緒にいたかったが、圭一のことを考えてバイトのない日だけにしようと提案したが、
「僕は、毎日佑美ちゃんに会えないのは不安だから出来るだけ毎日会いたい」
 そう優しく言った。その優しさは、いつも見る公園からの夕日よりも暖かい物だった。
 佑美は、まだ、和宏に言い出せずにいた。いつものように圭一と図書館で待ち合わせし、勉強をしていると、携帯電話にメールが送られてきた。
『最近、佑美が教室に遊びに来ないねってみんなが言ってるから今日空いていたら遊びにおいでよ』
 佑美は、暫く携帯を眺め、小さくため息をついた。どうしよう、まさか気付かれたのかな?それでみんなの居る前で探りを入れるのかな?だが、和宏はそんなことを考える男ではないと、佑美は解っている。素直に受け止めたらいいのだろうが。
 佑美が、凄く困った顔をして携帯のメールを見ているので、
「どうしたの?」
 圭一が、心配そうに尋ねた。
「うん、あのねお兄ちゃんからメールなの。見る?」
「見て良いの?」
「うん、大したことじゃないから」
 そう言いながら、佑美は、圭一にメールを見せた。メールを読んだ圭一は、苦笑いを浮かべ、
「きっと、心配してるんじゃないかな。行っておいでよ。僕はもう少ししてから帰るし、また明日此処で会おうよ」
「でも・・・」
 圭一は、そっと佑美の手を握り、
「また、夜にでも連絡するよ」
 優しく耳元で囁いた。
「うん」
 佑美は、そっと立ち上がり、
「ごめんね」
 と言いながら、立ち去った。一人残された圭一は、かすかに残った佑美の手のぬくもりに浸っていた。佑美とずっと居たい。早く大人になりたい、佑美を守れる男になりたいと圭一は切に願った。
 佑美は、圭一の手のぬくもりを感じたまま、兄の居る教室に向かった。
「こんにちは」
 教室にはいると数人の学生が机に座ったり近くの学生と話していたりした。
「あ、佑美ちゃん」
 そう声を掛けたのは、雅之だった。
「来てくれたんだ。みんな喜ぶよ。さあ、座って」
 そう言いながらコーヒーを入れに行く雅之。佑美は、雅之の席の隣に腰掛けた。
「佑美ちゃん、久しぶりだね。全然来てくらないしどうしてるのかと思っていたんだ。横川さんに、聞いてもあんまりはっきりしないしね。たまには誘って下さいよって言ったらさっきメール送ってくれて。すぐ来てくれたんだ」
「お前が頼んだのか。佑美ちゃんだって色々忙しいんだから、お前達に付き合っていられないんだよ。解る?」
「中井さんは、佑美ちゃんと仲良いからいいけど、僕は、なかなか会えないし」
「お前の恋人みたいなこと言うなよ。佑美ちゃんはお前みたいなのは選ばないぞ。ねっ、佑美ちゃん」
 そう言いながら雅之は、ウインクした。佑美は、俯くだけだった。
「はい、佑美ちゃん。コーヒーが冷めるから早く飲んでね」
 かなり外は暑い時期なのに、涼しく冷房の効いた部屋で熱いコーヒーを飲むのはかなり贅沢な気がしたが、佑美はおいしくいただいた。
「あ、佑美来てくれたんだ。今からみんなでご飯でもってことになったから一緒にどうかなと思ってメールを送ったんだよ。何も用事ないよね」
 佑美は、うんと頷いた。頷いた後に、図書館に残っている圭一の顔が浮かんだ。ごめんね、佑美は、小さく呟いた。
 食事を済ませ、和宏と緩やかな坂を歩いて上がった。最近は、自転車では通わなくなりこの坂をいつも歩いて登っている。、いつもは圭一とこの坂を上がっていたので楽しくて仕方なかったのだが、今日は、なんだか、上り坂がこんなに歩きにくい物だったんだと、改めて気がついた。いつも楽しい坂道だった。ただ今日は、久しぶりに和宏と上がる坂道、また、いつもと雰囲気が違って感じられた。
 和宏は、少しずつ成長してきた佑美を眩しそうに見ていた。最近、ゆっくり話も出来なかったし、それは一つは、佑美がすぐに部屋に入り込んでしまうことだった。もっとゆっくり話したいと思ったのに、佑美も学校の勉強が忙しいようで一緒の時間を過ごすことが少なくなったのだ。その事が和宏にとって寂しくもあり何だか佑美が遠くに行ってしまったような気もした。何となく寂しさを感じていたため、他の学生に佑美の事を聞かれ、思わずメールを送ってしまっていたのだ。少し大人びてきたようにも見えるが、和宏は環境が変わった為だろうとしか思わなかった。まさか佑美に恋人が出来ているなんてつゆほども思わなかったに違いない。
佑美は、和宏に話そうかどうしようか悩んでいたが、やはり今夜は止めることにした。ただ、和宏が圭一の存在を知ったときは仕方ないと腹をくくっていた。佑美は、胸を張って圭一を紹介できるのだが、きっと、まだ言うべきでないような気がした。雅之に相談してみようかと思ったが、なかなか、それも気が進まなかった。凄く臆病になっている自分がおかしかった。
「どうしたの?」
 佑美が笑った風に見えたので和宏は不思議そうに聞いた。
「ううん、何でもないよ。夕ご飯、おいしかったね。たまには良いよね外で食べるのも。後片づけしなくて良いし、また、誘ってね」
「そうだね、佑美に、家のこと全て任せているから。たまには出掛けようね。そう言えば、二人で外でご飯を食べるって無かったよね。また、時間を作ろう」
「うん」
 もし外で食事が出来るときは、今度は、圭一を誘えたらと佑美は、密かに思った。私のことを理解してくれている和宏だ、きっと気に入ってくれるに違いない。
 


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