佑美と圭一は、図書館で過ごすことがおおかった。静かな時間を二人で暖めるかのように。時々、小声で話し、くすくすって笑って辺りをうかがいながらまた、勉強をする。佑美は、この時間がとても好きだった。 一時間ほど図書館で過ごすと、帰り支度をした。いつものように、 「自転車を取ってくるね」 と言い、圭一が行こうとすると、 「佑美ちゃん」 誰かが声を掛けてきた。佑美は、びくっとし、振り返ると雅之が立っていた。 「こんにちは」 佑美は、出来るだけ明るく答えた。 「今帰り?遅いね」 「ちょっと、図書館で調べ物をしていたので」 佑美は、まだ側に圭一が立っているのに気付いた。雅之は、圭一を見て、一瞬、驚いた表情をしたがすぐに何事もなかったように、 「お友達?」 「ええ、まあ」 雅之は、ぴんと来た。 「彼氏?」 佑美は、表情が強ばった。 「そうか、和宏は知ってるの?」 雅之は、にやにやしながら聞いた。 「知りません。あの、中井さん、兄には内緒にしていて下さい。ちゃんと、そのうち話しますから」 「解ったよ。そっか、和宏が泣くだろうな。君、何て名前?」 「東圭一です。佑美さんのお兄さんの友達の方ですか?」 「うん、そうなんだ。そっか、じゃあ、僕も佑美ちゃんに振られたのかな」 「中井さん、人聞きの悪いこと言わないで下さい」 「あ、ごめんごめん。でも、良かったね」 雅之は優しく佑美に笑いかけた。 「佑美ちゃん、僕自転車を取ってくるね」 「うん、待ってるね」 雅之に軽く会釈して駆けていった。雅之は、駆けていく圭一を見ながら、 「和宏にそっくりだね。びっくりしたよ。顔も似ているし仕草とかちょっとした雰囲気とか」 「ええ、私も初めてあったときびっくりしました。つい、見とれてしまって」 雅之は、くすっと笑い、 「それで彼と付き合ってるわけじゃないよね」 佑美は、笑いながら、 「半々かも。でも、今は、圭君と、兄は全く違います。もちろん初めからそうです。最初会ったとき、あまりに似ていて目が離せなくて、それに、話しかけられたとき、違和感なくて話せたのは兄に似ていたからだと思うので。似てるけど全然違います。考え方とか、うーん、後は何かな、でも違うんです」 佑美が嬉しそうに話すので、雅之は、ついつられて笑った。 「おかしいですか」 「ううん、幸せそうだなと思って。和宏が見たら泣きそうだな」 佑美は、はにかんだ。 「佑美ちゃん」 圭一が、自転車を取って来たらしく呼びながら手を振った。 「じゃあ、またね。僕は、佑美ちゃんの味方だよ。良い奴そうだし。でも、何かあったら言っておいで。僕がぶっ飛ばしに行くから」 「大丈夫です。そんなことには絶対ありません」 そんな佑美をみて、 「そうだろうね」 と雅之は、笑った。 「さっきの人は、佑美ちゃんのこと大事に思ってるんだろうね」 「どうして?」 「うん、佑美ちゃんをみる目が何だか凄く優しかったから」 圭一は、優しく佑美を見つめてそう答えた。 「兄のお友達はみんな優しいわ。あの人もそうだから」 「そうか」 まだ何か言いたげな雰囲気だったが、それ以上何も言わなかった。 「あのね圭君、私もう兄に見つかっても良いと思っているの。圭君のこと聞かれても胸を張って紹介できると思うの。だから、ずっと、一緒にいたいね」 圭一は、びっくりしていたが、嬉しくて、 「やった、僕、佑美ちゃんのこと幸せにするよ。僕も、ずっと一緒にいたい」 圭一の言葉は、佑美には、一番ほしい言葉だった。佑美にとって、今までは兄が一番の存在だった。それが、今は圭一のことしか考えられなくなった。私は、兄を卒業したんだ、佑美は、清々しい気分だった。
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