20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:海の見える公園にて 作者:さらら

第10回   10
佑美は、圭一と会えたことに、幸せを感じていた。ただ、時々兄かなと見間違いするほどよく似ているところがあった。兄に似て居るからこんなに惹かれていくのだろうか。圭一と和宏は違う。そう、二人は別人だ。私は、今、圭一を好きなのだ。私を真っ直ぐ見てくれる圭一が。
 その夜、あまり機嫌が良い佑美に、和宏は不思議そうに見つめていた。この前帰りが遅くなった日から、佑美の態度がよそよそしいというか、ぎこちなく接するようになった。いつもと変わらないのだが、態度と言葉に何か僕に信号を送っているようだった。だが、何を言いたいのか僕には理解できなかった。あの日、佑美は、僕の教室に訪れたらしい。だが、雅之が、帰ることを薦めたと行った。何故そんなことをしたのか。そう、あの日、以前付き合っていた、それも大学一年の時だ、その別れた彼女が教室に訪れたのだ。僕としては、迷惑な話だった。雅之達は、それを勘違いして、よりを戻すつもりではないかと思っていたらしい。僕にはそんな気なんてないのに。さんざん付き合わされて、よりを戻したいなんて今更言われても迷惑な話だ。僕は、はっきりそう告げた。
「そうだよね」
 彼女はそう言いながら帰っていった。僕は、無駄な時間を過ごした気分だった。その後、雅之の部屋に行き、さんざん愚痴っていた。
「おまえ、どうして女の子と付き合わないんだ。その子に振られたからじゃないよな」
 確かにその子に振られたからじゃない。ただ、煩わしいと思うのだった。いちいち自分のことを説明して、理解してもらわなくてはならない。その点、佑美は違う。僕の全てを理解していてくれている。そう思ったとたん、僕は、雅之の前で大きなため息をついた。
「おいおい、どうしたんだ。惜しい事したとでも思っているのか?」
「いや違う。ただ、僕は、ずっと片思いなんだろうなと思って」
「誰に?」
「誰だろうな。ただ、このままで良いと思っているから。もう、望まないよ。それが約束だから」
 雅之は、ふとある女性の顔が浮かんだ。まさかな。そう思い苦笑いしながら首を振った。
和宏は、一生自分のこの気持ちを胸に秘めたまま生きていこうと思っていた。
「佑美、何か良いことあったの?」
「ううん、別にないよ。お兄ちゃん、私もう部屋に行くね。ちょっと、レポートを書かなきゃ行けないから」
 佑美は、そう言いながら部屋に上がった。部屋にはいると、ふうっとため息をついた。圭一のことが兄にばれたらどうなるだろう。私が、二番目に好きになった人。いつかきちんと和宏には紹介したい。でも、まだ時期じゃなかった。
 和宏は、一種の寂しさを感じた。段々、佑美が自分から離れていく。佑美が成長すれば仕方ないことなのだが、いつか僕の前から居なくなるのだろうと思うと寂しさが込み上げてきた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 4604