「それはどういう事だ!?」と二郎が言った。 「まぁ、教えてやらんでもない。今日本戦に残った人数は18人だ。アイス様は全員本戦参加だと言ったがアレは嘘だ」 「ウソだと?」 「ああ、補充とか言っていたが、もし我が部隊の人間を大会に参加させると例え手加減しても死人が出る可能性があるからな。だからお前ともう一人を痛めつけ明日の大会は辞退という筋書きだ」 「……ふん、なるほど。どういう理屈でこのスーパーヒーローの草薙二郎が選ばれたかは知らんがちょうど俺は寝付きが悪くてな、お前を倒すと今夜はよく眠れそうだ」 草薙二郎は拳を握り、左手を突き出し、右手を頬近くまで持ってきた。 「こい」 「ほざけ!」 仮面の男は立っていた場所に黒タイツの残像を残しつつ草薙二郎に猛然とダッシュした。常人の目では追いきれない速さである。草薙二郎もこのスピードには驚いた。 「何っ、速い!!」 一瞬にして間合いを詰めると仮面の野太い腕が二郎のみぞおちにクリーンヒットした。破壊力満点のパンチで二郎の体は地面から50センチほど宙に浮き胃の物を吐き出しそうになった。内蔵が絞り出されるような声がでる。 「ぐぼぅ」 仮面の男は二郎が浮いている間に体を一回転させると次は右の回し蹴りを二郎にお見舞いする。モロに右足は二郎の顔面に入った。今度は声を上げる暇もない。二郎は勢いよく後方に転がり壁に激突した。壁に激突した振動で天井からはパラパラとほこりが落ちてくる。仮面の男は右足を上げた状態のまま、 「ふふ、ちとやり過ぎたか。あいつの挑発につい力が入ってしまった」 草薙二郎の体はダランとしたまま、壁に背を持たれるようにしてはピクリとも動かない。 「もう終わったのか? 大層なのは口だけだったようだな」 仮面の男は右足を下ろし、草薙二郎を観察した。相手が動かないといっても仮面の男は油断はしない。訓練で体にそう叩き込まれている。眼光鋭く獲物に近づく。 相変わらず微動だにしない二郎まで1メートルと迫ると、しゃがんで表情を覗き込んだ。壁に激突した時に頭部打ったのか額からは血が一筋流れていた。右頬も真っ赤だ。 「ははは、まったく情けない男だ。これでよく本戦に進めたもんだな。たった二発で失神とは警戒していた自分が馬鹿に思えてくる」 仮面の男は肩を上下に揺らして高らかに笑った。 「ああ、お前は本当に馬鹿だ」 「なにっ!」 草薙二郎の思わぬ声に緊張感なく揺らしていた肩がビクッと震え、細くしていた目もギョッと大きく見開いた。急いでしゃがんでいた状態からバク転を決めながら距離を取る仮面の男は四メトールほど下がるとキレイに着地を決め構えをとった。 「お前、失神していたんじゃないのか!?」 草薙二郎はオイルが切れたロボットのように体をガクガクさせながらゆっくりと立った。息づかいも荒く、受けたダメージは相当のようである。 草薙二郎は右手で額を擦ると、 「ふう、効いた、効いた。記憶が若干飛んだ気がするな…油断しちまった…しかし俺には勝てんぞ。なんたって俺は世界のスーパーヒーローになる男だからな…」 二郎のダメージは誰が見ても深刻であり、立っているのもやっとで後ろの壁がなかったら倒れてもおかしくはないほどである。それは戦闘のプロには一目瞭然で、声がした時は動揺したが二郎の有様を見ると普段の獲物を刈る鋭い目に戻った。 「まだ、そんなセリフを吐けるとはな。今のお前は立っているのもやっと、息も絶え絶え話にもならんとはまさにこの事だな」 「うるさい。つべこべ言わず、かかってこい。世界レベルの実力を知る羽目になるがな…」 「こいつは正真正銘のアホだな」と呟くと仮面の男は両手を広げ肩をすくめた。 「さっきのは、まだ本気ではなかったんだぞ。次は本気で行く」 「奇遇だな、俺もだ」 やれやれと首を振ると、地面を蹴りドンと大きい音を鳴らすと仮面の男はまたしても黒い残像を残して二郎に突撃していった。 「勘違い野郎、コレで終わりだ!!」
|
|