それからジャンケン大会を一時間ほど興じて、司会の男はため息混じりで言った。 「ふうむ、18名も残りましたか。まぁ今年は粒ぞろいで何よりです。去年は7名しか本戦に進めませんでしたからね。これ以上ジャンケンをしても結果は変わらないでしょう。オーケーです、ここにいる18名全員を本戦に出場決定とします」 この言葉にガッツポーズを取る者、胸を撫で下ろす者、まったく感情を表に出さず無表情で突っ立ている者、そして草薙二郎の顔にも喜怒哀楽は見られなかった。二郎としては自分が優勝して当たり前だと思っているのでこれは至極当然の結果なのだ。 司会の男が明日からの本戦のルールについて説明しだした。 「本戦は明日、トーナメント方式で戦ってもらいます。打撃あり、絞め技あり、投げありと何でもありです。カウントでの負けはありません。一方的な戦いになり、これ以上続行は無理だと審判が判断した場合は試合を止める場合もあります。もちろんギブアップもあります。反則技については金的と目潰し以外なんでもありです。なお、この試合で判定決着はありません。ここまでで疑問や質問がある方はいませんか?」 司会の男が18名全員を見渡す。 「…いらっしゃらないようですね。では、対戦相手の決め方ですが明日の本戦が始まる直前でクジを引いてもらいます。クジには番号が書いてあります。その番号がもし1番なら一回戦での勝負となります、その場合相手は2番の誰かということになるわけです。お解りいただけましたか? まぁ当日になってからもう一度説明させていただきますが。明日の朝九時にもう一度ここに集まってください。三十分以上遅刻しますと失格と見なしますので注意してください。では、みなさん今日はお疲れでしょう、今晩はこちらが指定するホテルに泊まっていただく事になります。案内はジョンにさせますので会場を出ますとジョンの案内に従ってください。最後になりますが質問などはありますか?」 その時、髪が天高く反り立つ赤い髪の男が手を挙げた。 「あのよぅ、今思ったんだけどよ。トーナメント18人じゃ2人余るじゃねえか、誰か2人はリザーバーにでもなるのかよ?」 司会の男は細い目の奥を光らせてニヤけたが、それも一瞬の事で、すぐに元の表情に戻っていた。 「なるほど、すいません。それについてはですね、こちらで人を補充します。いえ、なに大した実力のない者ばかりですから彼らと当たったらラッキーですよ。今年は本当に実力者ばかりですからね、私からのプレゼントと思ってください。他に質問のある方は?」 「俺も1つだけある」 低い声で質問したのはワン・リーだった。 「どうぞ」 「貴様の名前をまだ聞いていない」 「これは失礼。私としたことが…私は特務機関特務部隊総隊長でこの大会の司会進行役のアイス・ミントと申します。以後お見知りおきを…」 アイスは深々と頭を下げた。そしてゆっくり頭を上げると、細い目をさらに細くしながらワンに言った。 「他には?」 「特にない」 このやりとりの後の数秒間はなんとも言えない緊張感が場を包んでいたが、アイスは左手を挙げて高らかと声を張り上げ、この場の空気を正常化した。 「では、みなさん。ジョンが案内しますのでジョンの後について行ってください」 ジョンは重い腰を上げると千鳥足で案内しだした。
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