「またチョキだぁ!!」
怒号のような叫び声が草薙二郎の体をつついた。
「何!? またチョキだと」
デマか、しかし迷っている暇はない!
ええい!
聞こえた言葉に素直に従ってチョキに勝つグーを再び振りかざした。
すかさず中央に立つスーツ姿の右手を凝視した。
「はい、またチョキでした−。あいこはダメダメ帰った帰った」
勝った。本当に勝ってしまった。
だが、今の声はいったい誰が…?
後ろを振り返ると強烈な視線を感じた、その視線の主はこの部屋に入って来た時に見かけた坊主頭の男であった。
視線が合うなり、草薙二郎へ足早に近づいてきた。なんだ? あの声が奴だとしても意図がさっぱりだが今の奴に殺気は感じない、身構える必要はなさそうだ。
拳が当たる距離まで近づくと坊主頭の男は口を開いた。
「冷静になれ、あいつの気を感じろ」
「あいつ?」
「ああ、拡声器を持った司会の男だ。あいつは自分の気の形で次に出すジャンケンの種類を教えている」
「なんだって!?」
この坊主が言っていることはズバリ当たっていた。司会進行の男はオーラが見えるかどうか試していたのだ。
そして、なかなかジャンケンが再開されないのは大会に不満がある一部の受験者が部屋の出口でジョンともめていたからだ。
「もしやと思っていたんだが、二回目のジャンケンで確信した。次はパーだな、気が全体に広がっている」
「なるほど、確かに。だが、なぜ俺に教える?」
いかにも武人面した濃い顔の坊主は軽く笑みを見せた。
「お前があまりにも慌てふためいていたからな、それにお前は強そうだ。一度手合わせしたい、こんな所で消えるな。まぁ、ただそれだけだ。他意はない」
真っ直ぐ見据えてくるこの男の言葉に二郎は嬉しく、そして心が熱くなった。
「ああ、俺もだ! 助言ありがとう。俺の名前は草薙二郎、あんたは?」
「ワン・リーだ」
名前を告げると元いた場所に戻っていった。 草薙二郎は顎を右手で触りながら心の中で呟いた。 最初見た時からタダ者ではないと思っていたが、なかなかの豪傑ようだ。俺の次にスーパーヒーローの資質があるかもしれん。ワン・リーとか言っていたな、奴と戦う時が楽しみだ。
草薙二郎が思いに浸っていると男の声にしては高い声が拡声器を通して部屋に響いた。
「テステス。え〜さっき大会に不満があると抗議してきた輩が数名がおりましたが、前にも言いました通りルールに一切変更はございません。もう一度言います、ルールに変更はございません。なお、騒動を起こした者はジョンの実力行使により鎮圧せました。ここにいるみなさんはこのような愚かな行動はしないでください、絶対に!! いいですね!?」
荒っぽく喋る司会の横には、ぽたぽたと口から血を流してひざまずいているジョンの姿があった。
「それではいきますよ!! 最初はグー。じゃんけん、ポン!」
草薙二郎はキレのあるターンを決めると、天高くチョキを突き上げた。
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