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作品名:スーパーヒーローへの道 作者:ケンロウ

第29回   決勝戦
 決勝のゴングが鳴った。
 
『いや〜。勝った方が文句なく優勝ですが、さて急遽ゲストに来た今大会の司会進行者でもあるアイス・ミントさんです』
『どうも』

 白いテントと長いテーブルにパイプ椅子が二つ、体育祭にあるような放送席だ。
 アイスは試合開始を宣言した後、トコトコと放送席に来て澄まし顔で観戦していた。

『アイスさんはどちらが勝つと思いますか?』
『そうですね。はっきり言って分かりません』

 実況者は苦笑した。

『はは、分かりませんか…』
『それほど両者の実力は拮抗していると私は感じています』
『なるほど。それは刮目せねばなりませんね』
『ええ、ぜひ』


 草薙二郎とワン・リーは先ほどの体勢から変わっていなかった。
 二郎の突き出した右手をワンの左手が払っている、その状態。
「何故だ!? 何故邪魔したワン!!」
「…………」
 ワンは何も喋らない。
 血走った眼に、剥き出しにした歯はギリギリと鳴っている。
「やはり何を言っても無駄なのか」
 突如、ワンの右腕が動く。
 豪腕が唸った。手打ちとは思えない速度と重そうな打撃。
 狙いは顔面だった。
「ちっ」
 体を左にひねって、鉄拳は二郎の頬をかすめていく。
(よし、体の状態は悪くない)
 冷静にそう分析してから思考を切り替える。
 先手を突かれたが、ここは後手には回らない。
 避けつつも体勢を戻し、攻めに転じた。腰の回転を加えて、容赦なく左ストレートを鼻筋に放つ。若干カウンター気味でもあった為、避けるのは不可能だった。
 ガコっと、鈍い音が鳴る。
 あっさり当たった。が、苦悶の表情をしたのは二郎だった。
「ぐっ!!」
 攻撃を読んでいたように、ワンは額で拳を受け止めていた。
 その頭で拳をはねのけて前へ出る。
 直後、遠雷が起こったと勘違いするほどの衝撃音が鳴った。
 ドゴン!!!
 豪快に吹き飛ぶ二郎。勢いよくゴロゴロと転がってリングの端まで体が流された。
「………」
 掌底二つ。
 ワン・リーの手の平からぶすぶすと煙りが上がっていた。凄まじい威力に観客はどよめいた。
 技の正体は双掌打だった。

『これは恐ろしい技をもらってしまいました! 草薙選手! アイスさんこれは!?』
『えーと。どうでしょうね、もしかすると…決まったかもしれません』
『そうですか〜。まだ立てない草薙選手!! あっと、審判が駆け寄る!!』 

 二郎の下へ急ぐ審判。
 しかし、その足を止めた。
 草薙二郎はぐぐっと体を起こした。
「くう、さすがワンだな…」
 立ち上がって構える。
 あの一撃で女医がくれたTシャツの下半分が破けていた。包帯も飛び、腹には真っ赤な二つの手形が付いていた。傷口から血が滲んでいる。
「君、大丈夫だね?」
「ああ、問題はない」
 平然と言っているがダメージはあった。その証拠に二郎の顔は汗が噴き出て、滴となって地面に落ちていた。
 ワンの強烈な技。だが、とっさに後ろに自ら飛びダメージを半減させた。
 もし、その行動をしなかったら間違いなくKOだっただろう。
 審判が怪訝そうな表情でリング中央に戻っていく。
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
「な、何だっ!?」と二郎。
 ずっと無言でいたワン・リーが天高く吠えたのだった。
「二郎! 二郎! 二郎! じろうおおおおおおおおお!!!! 」

『アイスさん。ワン選手いきなり吠えましたね』
『ああ、吠えたね』
  



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