「いよいよですね」 「ふう…で、準備の方は?」 「完璧でございます」 「彼もですか?」 「はい」 「ふふ、そうですか。なら行きましょう」 二つの影は足早にバトル会場へと向かった。
先ほどとは違う二つの影があった。 こちらの足取りも速かった。 草薙二郎とアンナ・ルーズである。 医務室を出た二人はバトル会場へと戻っている最中であった。 「いよいよ決勝だね」 「ああ、だがいいのか? まだ休んでたほうが…」 「もう大丈夫だよ。それに二郎の決勝戦を見ないなんてもったいないし」 「…そうか」 二郎の目線は真っすぐと、この通路を抜けた先にあるリングだけを見ていた。 爛々とした瞳から発せられるアンナの視線も気に留めず、力強く歩いた。 傷は完全に癒えてはいないが十分に戦える状態にある。後は全力を出すのみ。 相手はサムエル・トロスかそれとも…。 「そういや、決勝の相手だれだっけ?」 アンナが独り言のように呟いた。 「サムエル・トロスという男だ。今のところはな」 「今のところ?」 「確証がないからはっきりとは言えないが、決勝はワンが出てくる可能性が高い」 「えっ、ワンさんがっ!?」 口に手を当てて驚くアンナ。 「うむ。しかしここであれこれ話しても仕方がない。いよいよ出口だぞ。とうっ!」 「あっ、待ってよ!」
『あー、あー』 ゴツゴツとマイクを指で小突く音。 『テステス、マイクの調子オッケーね。ダメ? いってんじゃん。えっ? 違うって何が? ああ、そう』 ゴホンと咳払いをするアイス・ミント。 『では、レディースエーンドジェントルメン!!』 アイスはリングの中央でマイクを手に声高らかに言葉を会場に響かせた。 『みなさん、いよいよ決勝戦でございます。強者が集った今大会、おおいに盛り上がり私アイス・ミントも感無量でございます。ですが…』 一旦、間を空けてから、 『ですが、次の決勝戦ではサムエル・トロス選手が負傷で試合放棄をしてしまいました。あ〜っと、けど心配はいりません。リザーバーではありますが彼と同等かそれ以上の実力を持っている人物を用意してあります。ではワン・リー選手入場してくださいっ!!』 観客の歓声が止まぬ内にリングの脇にいた男がひっそりとリングに上がった。 あまりに物静かなその男に歓声がしぼんでいく。 ガタイは良いがうつむき、腕もだらりとして戦う気があるのか不安に思えてくる。 次第に観客はざわつき、ちらほらと低い囁き声が聞こえてきた。 しかしアイスはそんなことに無視を決め込み、彼を待つ。 その直後、アイスの望んでいた者が現れた。 「やはり、ワン・リーが出たかっ!! アンナは離れていろ」 「うん」 アイスは心底、嬉しく思った。声を殺して笑う。 「さあ、来ましたね。草薙二郎」
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