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作品名:スーパーヒーローへの道 作者:ケンロウ

第20回   準々決勝
「アイス…」
 ぼそりと聞こえた声。
 いつのまにか一人の男がアイス専用観戦室で立っていた。
 アイスは特に驚く様子もない。イスに座ったまま答える。
「なんですか」
 そのやりとりで初めて第三者の男に気付いた側近の兵は声がした方に銃口を向ける。
 その男は全身白い武術着で顔は彫りが深く、穏やかそうに見える細い目は感情が欠けているかのように冷たい。恰幅は良く、背丈はアイスよりも恐らく頭一つ高いぐらいだろう。
 男は呻くような低いで話す。
「二郎と戦わせてくれるん…だろうな…」
背後の様子が映っている―――――リングを見渡せるほど大きなガラスを注視しアイスは兵に銃口を下げるよう左手で指示した。
「勿論ですよ。あなたの望みは叶えます。私たちも楽しみですしね」
「…そうか…なら、いい」
 言うと男は猫背ぎみで部屋を出て行った。
 それに合わせて側近の兵士が安堵のため息をもらした。強ばっていた表情もゆるむ。
「アイス様、もしかして彼ですか? ワン・リーって男は」
 兵士は静かに閉まったドアを見ながら返答を待たずに続ける。
「いいのですか? 野放しにして、彼は完全じゃない。いつ問題が起きてもおかしくないと私は思いますが」
 アイスはトランプのジョーカーのような不敵な笑みを作るとイスに深く座り直した。
「いいんですよ。あのままで、時間が不十分でしたがとりあえず今日持てばいい。後日もう一度行えば問題はありません。今は大会が無事に終了することだけを考えていればいいのです。そうでしょう?」
 視線がガラス越しに交差した。
 アイスの顔は笑っているが目は笑っていない。言い知れぬ不気味さをはらむ視線が兵士の心を射貫く。兵士は思わず喉を鳴らした。
「…はっ! その通りでございます。少々、言葉が過ぎました」
 敬礼をする側近の兵は見ず、しかし笑みは絶やさないまま持っていたグラスを傾け一口。
「ふう、実にうまい。毎年この味が出せるといいんですけどね」
 

 試合は進み、勝ち名乗りをあげる者、負けて涙を流す者、または激情のあまり吐いてしまう者とバトル会場は大盛り上がりを見せた。
 第八試合も終わり、準々決勝に進んだベスト8が決まった。
 その中にはもちろん草薙二郎もアンナ・ルーズも入っており、その他の面々も初戦とは違い気迫が段違いでアンナは気を引き締め、対し二郎はいつもの余裕の顔をしていた。
 相変わらずワン・リーの姿はないが、二郎は思う、奴はワンとは絶対に対決することになるだろうと…。
 ワンは補欠になってはいるが主催者側のアイスが絡んでいる以上、補欠で終わらすはずはない。
 ホテルで起きたように無理矢理誰かを引きずり下ろす真似ぐらいはしてくる、それが次の試合かは分からないが。
 アイスの意図とワンの容態も気に掛かるが今は勝ち進むのみと二郎は拳を握った。
 
 そして準々決勝の始まりである。

「次の試合、私と二郎の勝負だね」
 アンナは嬉しそうに言った。
「そうか…そう言えばそうだったな」
「もう、忘れてたの」
 アンナは頬をぷうっと膨らました。
「すまない。だがアンナが相手だろうと俺は手抜きはしない」
「私もだよ。本気をぶつけるからね」
 二郎は微笑する。
「望むところだ。ん?」
 二人が座っている後ろの観客席から大きな歓声が聞こえた。

『おっとモース・モース選手強い。タンド選手為す術なしか!』
 
「この試合早く終わりそうだな」
「うん」
 リング上では白髪だが歳は若そうに見えるモースが金髪タンドを攻め立てていた。

『モース選手ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。タンド選手たまらず膝から崩れ落ちる』

 審判がすかさず両者に割り込み手を振った。

『決まったー!! モース選手のKO勝ちです』

 よほど効いたのだろうタンドは担架で運ばれていった。
「じゃあ、行くかアンナ!」
「うん」
涼しい声でアイスが告げる。
『準々決勝第二試合、草薙二郎選手対アンナ・ルーズ選手リングに上がってください』


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