右から聞こえた覇気のない声、その声がしたほうに草薙二郎が横目で見る。
「すまん、今は会話どころではないのだ。この門を開け…るん…んん!」
いかん、よけいな邪魔が入った。集中だ。集中。 やはり俺の力量不足なのか。しかしこの門の頑固さと言ったらもう世界一だな。ある意味、世界レベル同士の勝負かもしれんがスーパーヒーローになる草薙二郎がこんな序盤に挫折などありえん。
さすがにこの俺でも体力の限界が近づいていきたぞ。
もってあと1分ぐらいだろう。
「くそおおおおお!!」
最後の力を振り絞る。己のプライドと名誉にかけて。 全身赤く染まった草薙二郎に対して色白で涼しい顔した細身の男は言った。
「そこ、開きませんよ」 「えっ?」 「その門はモニュメント的な門でして、本当の入り口はあちらの扉でございます」 男が指さす先に目線を向けると門の横にこぢんまりとした扉があった。
「一見さんはよく間違えるんですよ。けど、あなたようにここまで本気で開けようとした人は初めて見ました」
「…………」
二人の間に数十秒間の真っ白い空気が流れた。 そして草薙二郎は心身ともに恐ろしい脱力感に襲われた。
「あの…」 草薙二郎は門を押す格好のまま固まっていたが、男の声に反応してゆっくり姿勢を戻した。
「これは、修行だ…」 「はい?」
「開くことはないと解っていても果敢に挑戦するのがスーパーヒーローたるゆえんであり、この草薙二郎だ。もう少ししたらあの扉から入ろうとしていたんだ。ホントだぞ!」
「はぁ」 不思議そうな顔する細身の男。 肩で息をして、喋るのもやっとの状態だったがなんとかセリフを噛まず、余裕しゃくしゃくと汗だくの前髪をかき上げた。
「とりあえず、こちらなんで軽く案内します」 「おお、有り難い!」
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