巨軀なドルナンドが吹っ飛びながらを旋転する。 「ぐは〜っ!!」 パタリ。 その場に力なく倒れた。 『決まったー! 強烈なフック、おっと審判が駆け寄ります!!』 「ふぐぅ、ママ痛いよう。ママン」 ドルナンドは脇腹を押さえながら足をバタつかせた。 その様子を見て、審判は両手を振る。 試合終了を告げる合図だ。 『なんと、この試合も一撃で終わってしまいました〜、草薙選手強い。優勝候補を下しての準々決勝進出です』 『うおおおおお!!』 いつもながら観客席はハイテンションである。 「勝者、草薙二郎!!」 審判が二郎を指さす。 二郎は何事もなかったかのようにリングから出た。 足取りは軽く、汗ひとつかいていない。圧勝だった。 アンナは喜んで笑みを浮かべながら二郎に近寄った。 「凄い、思ったとおり強いんだね! 二郎」 「いや、相手が弱すぎる」 二郎に笑みはない。 謙遜などは一切なく、二郎にしては当たり前の結果だった。 アイスが第五試合の開始を告げる。 「それより、長いトイレだったね」 「…うむ」 二人は歩き、観客席側の壁にもたれた。 二郎が口を開く。 「実はワン・リーを探していたんだ」 「えっワンさんを!?」 アンナは驚いて口を半開きにして次の言葉を待った。 「ああ、トイレは嘘だ。ワンに会ってなぜ補欠になったのか訊きたかった」 「それで、ワンさんには会えたの。二郎?」 アンナは二郎にはタメ口だがワン・リーに対しては「さん」を付ける。 まぁ、年齢で言えばアンナと近いのは二郎の方だし、ワンとは一回り違うかもしれないので二郎も気にはしなかった。むしろ二郎がワンを呼び捨てにしているのがアンナは不思議に思えた。 「会った。が、あれは俺の知っているワンではなかった」 「どういうこと?」 訝しげに二郎を見るアンナの瞳は弱々しく、不審の色で満ちていた。 「姿形や声は一緒でも、中身が違う。ワンの性格がまったく違っていたように思える」 アンナは二郎が言っている意味を考えてみるも理解できず、もう一度問う。 「ワンさんではない。それってどういう…?」 「俺にも分からない。だが、あいつはワンだがワンではない。あるいはワンではないがワンでもある…そんな感じがした」 「?」 アンナは首を傾げる。よけいに混乱してきた。 そんなアンナの様子を気にせずに二郎が右手の拳で左の手のひらをパンと叩いた。 「ワンに力尽くでも全てを吐かせてやる。リングの上でな!」
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