少し休んでいたからだろう、多少動けそうなくらいになっていた。心を静めて精神を集中する。己のエネルギーを体の四肢へと送る。これが最後の攻撃となるだろう。そのあとの体力はからっぽのすっからかんのすっぴんっぴんだ。 「この、一撃に賭ける!!」 恐らくジョンはまだ動かないはずだ。油断しているのか呆けているのか分からないがまた背中を見せているジェンに先制攻撃は出来るはずだ、それに全てを賭ける。至近距離での一撃、狙いは後頭部だ。渾身の一撃を不意打ちでモロに当てればさすがにダメージはあるはずだ。 「行くぞ!!」 徐々に足の回転を上げていく。先制攻撃が出来るので勢いもつけて破壊力も上乗せしてやる。スピードが上がるにつれ巨軀なジェンの体が迫ってくるようにも感じられる。ジェンまでもうすぐそこだ。心の中で叫ぶ「もらった」と。 そう、確実に先制攻撃できると思っていた。ジェンが気付くはずがないと高をくくっていた。が、そのまさかのまさか普通にジェンは俺に振り返った。 「なにっ!?」 ジェンは速攻で反撃してきた。岩のような拳が眼前へと降り注ぐ。死の瞬間とも思えた。走馬燈は見たくもないし見もしなかったがアンナの顔だけにはそこはかとなく興味があり拝見したかった。だがその希望も叶いそうにない。 「まだ、終わるには早いぞ草薙二郎!!」 「お前は…ワン・リー!!」 ワンの体が神速の如き速さで走ってきてジェンの拳を受け止める。 「柔よく剛を制す!!」 などと叫びながらジェンの力を利用して一本背負いをした。見事ジェンの巨体は投げられズスンと小さな揺れと共に通路に大の字になる。ワンはその場で膝をつくと口から血を撒き散らし、そして叫んだ。 「今だ、 二郎トドメを刺せー!!」 俺は頷くと寝ているジェンの真上に飛び上がった。最初狙っていた部位とは違うがこれはこれで効くだろうと思いながら俺も叫んだ。 「くらえ! 必殺、二郎スペシャルトルネードダブルキック!!」 重力という自然の力にきりもみ回転をプラスした大技がジェンの顔面に入った。 「ぐううわ」 ジェンが悶える。顔面を押さえながら足をバタバタしだした。効いている。これが最後の技だもう打つ手はない。「立たないでくれと」切に願った。しかし空しくもジェンは立った。仮面がまたしても割れてカツーンと落ちる。俺はその素顔に驚愕した。昨日見た人物だった。会場の乱闘で傷ついていた人、ホテルを案内してくれた人、滑舌の悪い人。つまりジョンだった。 「そんな馬鹿な。ジェンがジョンだったなんて」 「うがぅ?」 もはやこれまでと思われたが、ジョンの昨日からの度重なる乱闘と労働が彼の肉体を極度まで疲労させていて最後の一撃が鈍感なジョンがとうとう気を失う引き金になったのだ。うが? ともう一度発すると仰向けに力なく倒れ込んだ。完全なノックアウトであった。 「勝ったのか? アンナは…?」 俺の名前を呼ぶワンの声が気を失いながらもやけに耳に響いていた。
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