『なにをしている!』
気がついて目を開けるとリビングの方から大きな声が聞こえてきた。どうやら僕は母さんのベッドに上がったまま寝てしまったようだ。慌てて目を擦り、剣を片手に声のするリビングへと駆け出した。
『一体どうなってるんだ!?俺のいない間にお前は何をしていたんだ!』
男の人の非常に苛立った声。 その声に廊下の途中で僕の足は止まった。
聞き間違えるはずがない。
今の声に怒りが含まれているけど、この声は父さんだ。姿はまだ確認してないけどわかる。僕の大好きな父さんだから。いつもは優しい父さんの激しい怒りに僕はどうすればいいかわからず、その場に座り込んで目にだんだんと水を溜めていた。
『美波さんは悪くありません。僕が…僕が悪いんです。』 父さんに続いてせんせいのいつもと違う弱々しい声が聞こえた。
―いったい、ナニが起きているの?
恐怖で怯えた体を引きずるように這って進み、近くでリビングを覗くと、そこには信じられない光景が広がっていた。
僕のすぐ側にあるリビングの戸の脇には大きな荷物があり、その横にスーツ姿の父さんが突っ立っていた。そして、その向こうには上半身に何も身につけていないせんせいとリビングにあるソファにタオル一枚を体に羽織っただけで座っている母さんがいた。 父さんの怒っている姿が声が顔が怖くて、なにも反論せずに座って涙を流している母さんがあまりにもショックで、僕は隠れて覗いていたことも忘れ、とうとう声を荒げて泣き出してしまっていた。
それから父さんと母さんの仲が壊れたのは言うまでもなく、たった一枚の紙によって父さんと母さんは引き裂かれた。僕は父さんについていくことになり、母さんと会うことはできなくなってしまった。
子供の僕にはなにもできず、ただそうなっていく様子を見ていた。
―どうしてこうなっちゃったの?
僕はせんせいから母さんを守れなかったんだ。
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