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作品名:ラーコイズブルー。 作者:刹音 玖虎

第1回   1
小さいころから、母に甘えるのが好きで、母を困らせるのが当たり前でした。
欲しいものは欲しい、だだをこねてデパートの床に寝そべってじたばたとしたこともあります。
そうすれば、母は渋々物を買い与えてくれ、父は小遣いをくれる事を知っていたからです。
思い返せば、母にしてきた事といえば苦労をかけることか迷惑をかけることしかしていませんでした。
母は、とても強い人でした。
きっと、この日本中に母子家庭なんていくつもあるだろうし、苦労をしているお母さんやその子供達はたくさんいると思います。
どうして、自分が。どうして、自分だけが。
親子で手を繋ぐ光景を見てはそう思い、父親とサッカーボールでパスをする光景を見てもそう思っていました。
父と母は飲み屋で知り合い、そのままゴールインしたそうです。
母は父が数少ない付き合った人で、なんの迷いもなく結婚を決め、普通に結婚したそうです。
結婚式のアルバムを開けば幸せそうに、けれど少し緊張した顔の母がいました。
「きっと、幸せやったんやろうなぁ…。」
と、写真を見るだけで分かります。
母と父は結婚をして、姉を出産し、僕を産みました。
小学生のころ「あなたが生まれたときの事をお母さんに聞いてみよう」と言う宿題が出て、「どんな風だった?」と質問をしたことがあります。
「二人目やったし、痛いのは分かってたけどあんたは逆子で頭がおっきくてなぁ。もう、死にそうやったけどなんとか産めたわぁ。」
と笑顔で話す母の顔を今でも思い出します。
小学校で九九を習い始めたとき、お風呂場で一の段から九の段が言えるまでずっと一緒に湯船に浸かってくれていた母。
書初めコンクールで姉が表彰され、それを見て落ち込む俺に「あんたなりに上手く書けたんやったらいいやん。」と褒めてくれた母。
図工の粘土コンクールで銅賞を獲って大喜びをしてくれた母。
一緒に泣いて、一緒に笑って、一緒に喜んだ母。
「男の人はみんなマザコンだ。」
と言う人がいますが、まったくその通りだと俺は思います。
俺は母が好きでした。
素直に「ありがとう。」や「ごめんなさい。」を言えなかった俺をそれでも優しく励ましてくれ、根気強く接してくれた母がとても大好きでした。
けれど、きっと母は心細かったんだと思います。
母も母子家庭で育ち、三姉妹の長女として幼いころから家事をし、酒を飲み続ける父に代わって妹達にご飯の支度をして、働きに出て。
あまり自分で物事を決めたことはなく、妹達の事を優先にしていた。
と聞きました。
自分の進路や、自分の将来像を思い浮かべてはいてもそれを自分で実行できない、ましてや妹の為に自分の未来を潰す。
とても我慢強い母だったんだと思います。


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