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作品名:あぁ少年時代 作者:きたけん

第3回   3
スピードが乗り出した彼の自転車はコントロールを失った。
眼前には赤いレンガの壁と階段が迫り来る。

恐怖におののく間もなく自転車が激しく横転し
少年は飛ぶようにレンガの階段に顔から突っ込んだ。

次に気が付いた時は
レンガの階段の端をまるで
CMでグリコジャイアントコーンにかぶりつく綾瀬はるかのように
レンガをがっつりと大口に咥えこんでいた。

不思議だ。。
硬いはずのレンガがなぜかやわらかく感じた。

ふにゃっとした感触だけが伝わったのだ。
それは上下の前歯が全部内側に折れ曲がった為だった。


次第に口の中に血が噴出し
冷たいレンガの舌触りが事態を認識させる。

「ぬがぁぁぁぁぁっぁあっぁぁぁ」

なんとか自力で起き上がると声にならない叫びで泣き
口からとめどなく血液を流し続けた。
直ぐに顔元からシャツを血に染め足元まで滝のように血が流れおちる。
ゾンビ少年の誕生だ・・・・

はっきり言ってキモい。。
しばらく彼の事をゾンビ君と呼ぶことにしよう。。。


K山さんの奥さんが異変に気づき何事かと玄関から出てくる。
眼前にみえるのは午後の安らぎの一時に
ゾンビのような少年が血を吐きながら泣き叫ぶそのありえない姿。

さわやかな我が家に似つかわない光景を
すぐに認識できないのかすこし戸惑い気味だ。

「大丈夫?けんじ君」
「どぃばいたいょ〜」
ぶしゅー・・・(血)
喋るたびに歯が同時に何本も抜け落ち
もはや口の中が工事中の道路のようになっている。
まともに喋る事なんかできやしない。

そんな状況に軽くキモさを感じているのか
めいっぱいの作り笑顔で
「はやくお母さんのとこにいってお医者さんにみてもらってらっしゃい」
と促された。

そしてそそくさと階段の不浄な血を洗い流す為の放水の準備を始めた。

なんとなく空気をよんだゾンビ君は
「ごべぇんなざい」と謝り力を振り絞りつつ
ふらふらと亡者ように家路にむかった。

口の中の血は鉄のような匂いを鼻の奥まで充満させていた。
家につき玄関先で泣き叫び母を呼ぶ。
キッチンにいた母がおもむに扉を開けて出てくる。
すると一瞬押し黙って完全に引いてしまった。

・・・あれれぇ?ひいちゃってない?
僕だよ僕、あなたの息子さんですよぉ・・・
・・・ゾンビっぽいけどまだ生きてますよー・・・



無理もない・・・
瞬時に前歯をすべて無くし、
顔からシャツまで血まみれで帰ってきたのだから。 

しばし間が空いて冷静に
「どうしたの?」
ゾンビ君は自転車で転んでこうなったことを
何とか伝えようと痛みをこらえて喋った。

すると母親はそそくさと洗面所にいきなにやら取り出して戻ってきた。

ガスッ!!
ガスッ!!

いきなりゾンビ君の口になにかを押し込んだ。
「これでも噛んで寝てなさい!」
痛みを堪える間もなく
なにやら口に詰め物をしていく母。

なんかちょっと半切れで言われて腑に落ちない。
しかしなにやら血が止まりつつあるのに気づく。

「なんだこれ?」



・・・・・・・・・今思えば生理用ナプキンだ・・・・・・・・・・・


が、もちろんまだ生理の知識なぞないゾンビ君にとって
自分が咥えているものがなんだかは解らなかった。

しかし痛みと泣き疲れに耐えかね気を失うように
そのまま眠りについていくのであった。

ゲほッゲほッ

数時間後膨張したナプキンが
のどに詰まりそうになり
それを吐き出して目が覚めた。

嘘のように血がとまり痛みもおさまっていた。
医者に行くこともなく普通に過ごしていたら
歯も生え変わっていった。

恐怖を克服し無事に補助輪無しの
自転車にも乗れるようになった。


しかし時が経ち今もなお
あの時詰められたものがナプキンかどうかは
まだ母親には確認していない・・・・



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