20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:赤いランプ 作者:riri

第3回   3
赤い薔薇は、食事と共にいつも添えてある。鈴音が両親との手紙のやり取りで、薔薇を毎日一輪置くようにと、書いたのだ。鈴音は、自分を花にたとえたなら、絶対的に薔薇だと言うだろう。きらびやかで、何処へ行っても目を引く赤は、鈴音の心を癒していたのかもしれない。それは、以前の自分に重なるものがある。しかし、今の鈴音は、到底、薔薇にはなれない。月とすっぽんのような同一人物の自分自身。日々、重くなる体を揺らしながら、毎日をどうやって過ごすか考えるのにも飽き、ただただ眠りの世界へと入ってしまうのであった。







 「鈴音は一体いつ出てくるのか」

 その言葉が、鈴音の父、清隆の口癖になっていた。以前は金持ちであったが、もうそうではない現状。清隆は以前、国内のみならず、海外にもファンを持つ大変有名なアーティストであった。しかし、アートの世界にも流行というものがある。一度、火がついたものは、辺り構わず、焼き散らかし、多大な大金を持ち去る。しかし、焼け野原となった地上では、飽きた人々が次の獲物に火をつける。すべてを焼いてしまった者がもう一度赤く染まるのは、難しい事なのだ。しかし、そんな状況になるとは思ってもみなかった清隆は、稼いだ金を洗い流すように使う毎日を送っていた。


 「明日には出てくるかしら?」

 清隆のすぐ隣で、鈴音の母、雅代も口癖を言っていた。清隆と雅代の馴初めは、清隆の個展のオープニングパーティであった。名の知れたアーティストが主催したパーティには沢山の著名人が駆けつけ、その中に、雅代もいた。その頃の雅代は、ファッション業界でデザイナーをしており、雅代がデザインした新作コレクションは売り切れ続出の勢いであった。有名なモデル、ダイデ・ウィストンが雅代の作品を好んでいると雑誌のインタビューで話したからだ。しかし、これも清隆と同様、すぐさま、飽きられ、ブランドごと消えると思わない雅代は、清隆に近づくと軽い会釈をし、自分でデザインした、奇抜なドレスで誘惑するのであった。




 そして、結婚後、数十年の間に、稼いだ金は底をつき、今の現状になると、二人は、過去の栄光などを捨て、現在、清隆は、近くの印刷会社で働き、雅代は、スーパーのパートをする毎日だ。毎夜、一杯のビールを二人で乾杯し、二人掛けソファでテレビを見る毎日も、悪くないなと思うのであった。



「まぁいいか」


 二人の口癖は毎夜行われ、鈴音の顔さえも朧げな今、ただ、早く出てこないかと待ちわびる日々に、転機が訪れようとは誰も思いもしなかった。みな、このまま終わると心の中で思っていたからだ。








← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 355