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作品名:赤いランプ 作者:riri

第1回   1
外の暑さはここ数年の異常気象のせいで、一つ足を踏み出せば、額に汗が滲み出て背の布には数粒の斑点が浮かぶ。木々が日を避ける様、庭師が計算し、手入れしている為、屋敷全体の敷地は、日陰が多く、快適に過ごせるようになっていたのは随分、昔の話。
 
 ここは元々老夫婦が長い間住んでいたが、部屋数もさることながら、敷地面積も広い為、体に負担をかけ、暮らしずらいという理由から、安値で屋敷を売りに出す事にした。3メートルはある門に小さく張り紙を貼っておいた。



 ―この屋敷、5000万円で、売るー




 ちょうど新居を探していた恵まれた才能によって名声を持つ若い夫婦がこの張り紙を見つけたのは、少しばかり年月が経ってしまっていたため、老夫婦はもうこの世にはいなかった。家主を失った屋敷は奇妙な噂が立ち、以前の姿とは比べ物にならない程、痛んでしまっていた。しかし、またこの若い夫婦変わり者で、この屋敷を心底気に入り、購入すると、町の大工を大勢呼び寄せ、わずか一ヶ月で見事、元の通り立派な屋敷に戻してしまった。しかし、それだけではなく、手伝いの女を数十人雇い、身の回りの世話をさせる程、有り余った金を存分に使っていた。  

 夫婦はやがて、一人の子をもうけ、鈴音と名付けると、大層可愛がり、年が経つにつれて美しくなる鈴音は、黒く真っ直ぐに揃えられているサイドの髪の毛を人差し指で揺らしながら一つのハネも許さない美意識を物心つく頃から持っており、一つのシワも許さないワンピースも、手足合わせて二十本の爪も当たり前に手入れが行き届いていた。

 しかし、ここ二、三年のうちに手伝いの女が夜しばしば屋敷を抜け出し、戻る事は無く、とうとう手伝いのものは誰一人いなくなってしまうと同時に、夫婦の名声も廃り、屋敷は買った当初と同じ様な風貌になっていった。植物は枯れ、雑草が生い茂っていった。庭師を雇う金などもう何処にもなかった。しかし、ひっきりなしに訪れるのは鈴音に好意を寄せる男達であった。

 

 






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