「あんた達が運命の戦士だってのはおいといて、ちょっと昔の話をしなきゃならないんだよね。昔、人間はまだクロスという存在を知らずにのんびりすごしていた時代。もちろんその時代にもちゃんとサンタ・クロウスはあったわよ。その平穏は一気に混沌へと変わった時代があった。クロスが人間界に現れたのよ。人間は戦う力なんか無かったしどんどん人間の数は減っていった。それに危機を感じたキムロ様は私達に人間を守る力を授けてくれた。それが指輪の力のこと。けど私達の力だけじゃクロスを全滅させるのは出来なかった。人間の力が必要だったのよ」 そこでシェイ一息ついた。 「その人間は運命の戦士と呼ばれたわ。六人の人間が運命の戦士だったの。見つけるのは簡単だった。その人間には才能があった。私達と同じ程の力を使える才能が。もっとしっかり鍛えてれば私達より強くなったかもしれないわ。けどそこまで時間はなかった。そのせいで最後の戦いのときに運命の戦士は自分の命を犠牲にしてクロスの親玉を倒したのよ。私達は嘆き悲しんだ。一緒に戦ってきた友を亡くしたのだから。」 シェイ、セリスの目には涙がたまっている。 「その時と同じような事が今起こっているということか」 ファルがそこでわかったように言う。 「そうね。ファルの言うとおり。まだ確実なわけじゃないのだけど、かなり確立は高いわね。クロウスの存在。あなた達の能力の高さ。おそらくクロウスの存在は以前には無かったもの、今回の戦いは以前の戦いより過激なものになる。あなた達は戦わなければならないのよ。この世界を守るために。今回は誰も殺させはしない!!絶対に!!」 セリスの言葉には力がこめられていた。 「要するに私達は、今まで通り戦えばいいってことよね?」 リースが簡単にまとめてしまう。 「僕もその運命の戦士ってやつなの!?」 いまさらの反応を示すジェフだった。 しかもその質問に誰も答えようとはしない。 無視だ。 「だからあなた達に休んでる時間はないわね。明日またガンドが来る。いつくるかわからないけど、万全の態勢で迎えたい。今日はみんな同じ場所で寝ることにしましょう」 集まっていれば対処しやすいとのことだった。 たしかに今日のジェフのように遅れてきてもう済んだ後では意味が無い。 「じゃあファルの家で決定ね!!」 リースが一人で決めてしまう。 「リース!!なんで俺の家なんだよ」 「だって、ファルの家が一番大きいじゃない。それにいまさら二人増えたって何も変わらないわよ」 確かにあと二人増えても問題はないほどファルの家は大きかった。 「そうと決まれば帰って修行でもしますか!!」 シェイのその一言で三人は落ち込んだ。 もちろん三人とは、ファル・リース・ジェフの三人だ。
「ファルの家に入るのはこれで二回目か」 そう言ったのはリース。 「初めて入ったなぁ、ここ」 そう言うのはジェフ。 「慣れたもんだわね」 シェイ。 「やっぱりここが一番落ち着く」 セリス。 「初めて入った気分」 ファル。 みんな色んな気分でファルの家に入っていく。 ちょっと前の家とは想像もつかないほど騒々しくなっている。 「ファル〜〜お茶だして〜〜」 シェイはいつもこの調子だった。 しかし、今日は心強い味方がいた。 「ファル、私が用意するからいいわ」 リースだった。 いつもゆっくり出来ない状況なのでこれは大変ありがたかった。 「それにしても話し合うことってあまり無いのよね。全部相手の出方次第だし」 その通りだった。 話してても仕方なかった。 ちょっとでも修行して強くならなければ死んでしまう。 それはファル達も十分理解していた。 「修行始めようか」 三人は静かにうなずく。 三人の修行は夜遅くまで続いた。 「よし、今日はそこまで。あんた達ならあの男に勝てるはずさ。明日襲ってくるってわかってんだ。一泡吹かせてやりなさい!!負けそうになったら私達がちゃんと助けてあげるから」 シェイ、セリスにとってはガンドは雑魚だった。 まぁそれは本人が言っているだけなので、本当かどうかはまったくわからない。 ファル達はセリス達の強さは直接見ていないからわからない。 「リース、ジェフ。俺達は負けられない」 ファルは二人に語りかける。 「ここで死ぬわけにはいかないんだ。まだ死ぬわけには」 リース、セリスはこのファルの気持ちをわかっている。 しかし、あまり状況の知らないジェフ、シェイは何がなんだかわからない。 「ファル、あまり気負いしすぎるなよ」 セリスがファルに声をかける。 「ありがとう、セリス」 「よし、今日はもう寝よう」 シェイの一言でみんなは寝床に入った。 部屋は別々だった。 一人一部屋。ファルの家は部屋が余っていた。
「セリス・・・」 ファルはまだ寝ていなかった。 というよりも寝れてなかった。 妹のことを思い出してしまっていたのだ。 「お前の仇は絶対とってやるからな。それまで俺は絶対死なない!!そしてもう誰も死なせはしない」 まだまだ寝れそうにはなかった。 そんな時ドアが静かに開く。 「誰だ」 誰何する。 「私だ」 「セリスか」 こんな風に名乗るのはセリスしかいない。 「どうしたんだよ」 「寝れないのではないかと思ってな」 セリスはファルが心配で来てくれたのだった。 「その通りだったな」 「ああ」 「やはり妹のこと考えていたのだな?」 当てられても驚きはしない。 「そうだよ。あいつの仇をとるまでは俺は死なないから安心してくれ」 「そうじゃない、お前は仇をとるためならば死んでもいいと思ってるだろう!!私はそれでは納得はいかない!」 セリスはファルの横にいく。 「どこが納得いかないんだ?俺の今までの存在理由はそれだけだ。そしてこれからも」 セリスは大きいため息をはいた。 「お前の存在理由はもうそれだけではない。ファルにはこの世界を救うという使命があるんだよ。それに、私のためにも生きていてほしい」 最後の方の言葉はファルには聞こえなかったようだ。 「そうだな、いつの間にかこんなことになるなんて思ってなかったな」 「私もこんなことになるとは思わなかった」 「セリス、ありがとう」 「何よ急に」 「いいや、いいんだ」 「気になるじゃない」 「気にすんな」 「わかった。じゃあ私はもう行くね」 そうしてセリスは部屋を出ようと立ち上がる。 「ひゃ!!」 ファルがセリスを後ろから抱きしめたのだ。 「どうしたの、ファル」 「ごめん、今日一緒に寝よう。今日はセリスと一緒にいさせてくれ」 セリスはファルの気持ちは十分に理解していた。 ファルのいうセリスはスレイコールではなくて妹のセリスだ。 「わかった。お兄ちゃん」 そして二人は寄り添いながら本当の兄妹のように眠った。
翌日、ファルを起こしにきたリースの絶叫でみんなは起きることになる。
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