二人目の女神がファルの家に住んでから一週間が過ぎた。 「ねぇファル、面白いことおきないわね」 そんな物騒なことを言っているのはシェイことファーダムだった。 「シェイさん、何も起こらないほうがいいでしょ!!」 「そうは言っても何もなさ過ぎるわよ。近々何かあるわね」 そう、最近何も起こっていなかった。 逆にそれが恐ろしかった。一気に大きいのがくるのではないかと心配になるのだ。 「用心するに越したことはないですね」 「そうそう。学校でも気をつけるのよ」 この日は学校があったのでファルは学校へと向かった。 その間はシェイとセリスで留守番である。 「いってきます!!くれぐれも変なことしないように」 気のない返事を返すシェイを見て不安になるファル。 学校へ行く道も前と変わらぬ道。 いつもと同じ道。クロスに支配されたらこの場所も変わってしまうのだろうかという考え事をしながら歩いていた。 「ファル!おはよ!」 いきなり腕を組んできて挨拶してきたのは同じクラスのリースだった。 「リース、また腕を。また追っかけに追われてしまうだろ」 リースには大勢の追っかけがいた。 学校の優等生にして学校のアイドル。 「そのときはまた前みたいに逃げてくれるよね?」 「逃げなきゃひどい目にあうからな」 捕まったらなにをされるかわかったもんじゃない。 「今日はいないみたいよ。大丈夫」 いつもはいるのに今日はどうしたんだろうか。 そんな事は考えもせずファルは安心して学校に向かった。 「先生、おはようございます」 「ファル、リースおはよう」 教室の入る前にクラスの担任の先生に会った。 先生の名前は本名ではなくコルナと名乗っていた。 「さぁ授業が始まるわよ。教室に入りなさい」 「はい、先生」 いつものように朝礼をして、授業に入るかと思っていたら、 「ファル、リース。あなた達は今日から特別授業をしてもらうからついてきなさい」 クラスがざわついた。 それはそうだ。そんな話今まで一度もないのだ。 「そうそう、特別授業は私が担当しないといけないから代わりの先生が来るからその先生とも仲良くやるのよ」 元気よく返事をした生徒を見て先生は満足したのかファルとリースに目線を送る。 ついて来いという意味だ。 小さい教室に着いた。 教室に入るとシェイとセリスがいた。 「遅い!!」 シェイは少し怒っているようだった。 「遅いって言われても・・・」 リースは反抗する。 「まぁいいではないですか、ファーダムさん」 「スレイコールがそういうのなら良しとしよう」 「ファル様、リース席についてください。これから天蘇の説明をしますから」 そうだった。この前の戦いで散々な目にあったのだ。 次の日から教えてくれるとの事だったが出来なかったのだ。 「ファル、今日で天蘇を覚えてもらうからな」 「セリス、一日で出来るものなの?」 「ファル様、普通の生徒なら早い生徒で一ヶ月ぐらいでしょう」 「俺は普通の生徒と変わらないと思うけど」 そんなことはなかった。女神の指輪を使用出来るだけで全然普通ではないのだった。 「私と契約出来た時点で普通の人ではないのよ、ファル」 「そのぐらいでいいかしら。早速説明に入るわよ」 『天蘇というのは、人の中に眠る生命力みたいな物で、普通の人は目覚めさせることなく人生を終わってしまうのだけれど。昔の人はほとんどの人が目覚めていたとされている力で、昔の人はその目覚めた能力で世界を守っていたの。その代表例がスレイコール様とファーダム様ね。天蘇の目覚めさせ方だけど、まぁ簡単よ。痛いけど我慢してもらうしかないわ。あなた達に天蘇の塊をぶつける。目覚めさせるのは簡単なんだけどそれを我が物にするのが大変なのよね。そこで時間かかってたらだめですわよ!!』 「えっと、ヘレンさん。その天蘇の塊を受けなければならないんですよね?」 「そうよ。ファル様にはスレイコール様から。リースはファーダム様から受けるように、天蘇にも属性はあるのよ。その属性の天蘇を受けなくては天蘇が目覚めないのよ」 リースが少し考えるようにして言った。 「ということは私の天蘇は火ってことかしら」 「リース、あなたの天蘇は雷ね。ファーダム様は雷の天蘇も出せるから安心なさい」 ファーダムは火が主だが、長年の経験とかもあり雷の天蘇もだせるようになっていたのだ。 「じゃあ始めようか。セリス、頼む!」 「私も、シェイさん頼みます!」 天蘇の塊を受けたファルとリースは一時間ぐらい気絶していた。 ファルとリースが起きた後も授業は続いた。 天蘇を引き出す授業だった。 授業はヘレンから変わって、1対1での授業に入った。 ファルはセリスから、リースはシェイから。 「ファル、あなたは水のイメージをするの。身体の中に水が流れているイメージ」 「イメージ、身体の中に水が流れる・・・」 「リース、あなたは身体の中で稲妻が走るイメージね」 「身体の中に稲妻が走る・・・」 急に二人の身体が淡く光りだした。 「ファーダムさん、この子達・・・まさかね」 「スレイコール、見守る必要があるわね。そうだとしたら」 ヘレンは二人の会話を聞いていたがまったく理解できなかった。 「水の塊を手のひらにイメージしなさい!」 「あなたも雷の塊を手のひらに」 二人の手のひらに天蘇の塊が発生する。 「じゃあその塊を自分の好きな形に変えてみなさい」 ファルの天蘇の塊は槍に変化していく。 リースの天蘇の塊は斧へと変化した。 それを見ていたヘレンは驚きの表情を隠せなかった。 「あなた達いきなりそんな事できるなんて、ありえない」 「ヘレン、ファル達はとても大きな運命の中にいるのかもしれない」 「間違いなさそうね。この子達はこの世界の運命を背負っている」
『警告!ミルゲン区にいる住民に告ぐ! クロスと思われる生物の出現を確認した。 ミルゲン区の住民は外に出ないように!』
「セリス!!行くよ!」 「ファル!」 五人はクロスがいると思われる方向に向かった。 現場に向かう最中にジェフに連絡を入れておいた。 先生が特防に連絡を入れたところこの前と同じ公園に出現反応があったのことだった。 「あそこだ!!」 到着した五人を待っていたのは、6人の人間だった。 「リースさんじゃないですか」 「う、嘘・・・この人達私を追いかけてた人達よ」 「こいつらクロスだったのか!!」 「心外だなぁ、僕達をあんな下級魔と一緒にしないでくれ。僕達は下級魔を従う上級魔だよ。名をクロウス!」 ヘレンとリースは衝撃を受けた。 少女だった頃の記憶がよみがえった。 サンタとクロウス。互いに何をしているのかがわからなかった。 クロウスの6人が戦闘態勢に入った。 「ここは僕に任せてくれないか?昔の馴染みがいるものでね」 「失敗は許されないぞ」 「わかってるよ」 一人を残し5人は消えた。 「久しぶりだなぁ、ヘレン!!」
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